第二章 第二十一話     32/115
 


「じゃぁ、その炎を使わなければ良いネ」
「結論早ッ!」

説明が終わった途端、神楽は当然のように言う。何をそんな簡単なことを言っているのだという体で、その答えに何の疑問も持っていないようだ。

「神楽の言うことも間違いじゃないだろ。少なくとも、俺らの世界にはその『死ぬ気の炎』が無いンだから、医者に相談とかも出来ねぇしな」
「まあ、そうですねィ。使わなければ普段は問題ないンだろィ?」

沖田の問いに三人は頷く。一週間この世界にいて、不調を感じたのは死ぬ気の炎を使ったときだけだ。つまり、使わなければ問題ない。

「それじゃ、それで解決じゃねぇか」
「・・・え?それでいいの?」
「今のところ、そうするしか・・・」
「はは!あっさり決まったのな!」

綱吉と獄寺は不安そうだが、彼らの言う通りなのだ。今は死ぬ気の炎を使わないという事しか、今出来る対処法はない。

そして、本当の問題はこれからだ。

「どうやって帰ろう」

元の世界に戻る方法が全く分からない。
『異世界転送装置』で来たのは間違いないだろうが、その装置は今だ、天人の手の内だ。何処にあるか、いつ取り戻せるかは分からない。

何か手掛かりはないかと考えていると、獄寺が口を開く。

「十代目。確実にとは言えませんが、帰る手掛かりになるかもしれないことが・・・」
「それは俺から話そう」

獄寺の言葉を遮り、土方が名乗り出た。真選組の彼らは何の話なのか分かっているのか、何も言わずに彼に任せている。

そして、彼が語る内容に綱吉は驚かされた。

「ボンゴレを知っている人がいる・・・」

真選組の上官である松平片栗粉。彼はボンゴレを知っている。
それがどのような内容で、どの程度かは分からないが、異世界の情報である『ボンゴレ』について知っていると言うことは、普通なら有り得ない事である。

「松平のとっつぁんは今出張中でな。すぐにとはいかないが、早くても一ヶ月ほどで会うことが出来る」
「それまでは、大人しくしてろってことだ」

ボンゴレについて知っている松平に会えば、何か分かるかもしれない。
この世界に来て、初めて帰るための一つの可能性が生まれた。





「それじゃ、またね」
「十代目、明日必ず伺います!」
「万事屋ってどんな所なのか気になるのな」
「てめぇら、今度勝手な真似してみろ。土方さんの犬の餌スペシャルバージョン食わすぞ」
「それはどういう意味だ総悟」

日が沈み、辺りが暗くなった頃。皆は真選組屯所の入り口にいた。綱吉達が万事屋に帰るのだ。

話が大方終了した後、話題は綱吉達が何処で過ごすのかという事に移った。
真選組に全員がいるという案が出たが、綱吉が新入隊士でまた入るというのは少し強引過ぎる。少し前に獄寺と山本が入隊したばかりなのだ。
そこで神楽が言った。

「このままじゃ駄目アルか?」

今までは、それぞれの無事が分からなかった事が問題だった。それが判明し、所在も分かる今、神楽が言うようにこのまま綱吉が万事屋にいても問題ない。
真選組は、居場所が分かっているなら今のところは問題ないと言って了承した。獄寺は最後まで反対したが、二手に分かれてそれぞれ違う立場で帰る方法を探した方が良いと綱吉が説得した。
だが、本当は綱吉がまだ万事屋にいたかったからだ。結局は万事屋が好きなのだ。出来る限り、この世界にいる内は彼らといたい。

元の世界に戻ったら、もう会えないのだろうから。

「帰るぞ」

銀時がそう言って背を向ける。その背中に綱吉は付いていく。





獄寺と山本は見つかった。元の世界について知っていそうな人がいる事も分かった。





ようやくこの世界での時間が始まった気がした。







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