第二章 第二十話     31/115
 


瞼の裏に夕日が映る。綱吉はその光で目を覚ました。
目に入った天井は木製のもので、ゆっくりと周りを見てみても知らない部屋だ。自分は布団で寝ていて、隣では男が口から涎を垂らしながら居眠りをしている。
男の格好は獄寺と山本の着ていた服と同じだ。覆面男は二人を見て真選組と言っていたし、彼も真選組なのだろうか。

一人で考えていても仕方がない。綱吉は起き上がる。男を起こして話を聞こうと思い、軽く体を揺する。

「あの、起きて下さい」
「んー、副長・・・あと少し寝させて下さい・・・」

男はなかなか目を開けない。それでも諦めずに揺らし続ければ、うっすらと目を開けた。

「・・・あれ?」
「こ、こんにちは?ここは何処でしょう?」

男はまだ寝惚けているようで、目を何度かぱちくりさせている。しかし、すぐに意識がはっきりしたようで、口の涎を拭き取る。

「あっ、起きたンだ」
「今起きたのはあなたです」
「・・・内緒にしてね?」
「はぁ・・・」
「本当にお願いね?ばれたら副長に何されるか・・・」

男の言葉は最後の方は小さくなっていったので聞き取れなかったが、本当に秘密にしたがっているのは分かった。

「あの、分かりましたから。それで、ここ何処ですか?」
「あぁ、ごめん。ここは真選組の屯所だよ?」
「ここ真選組何ですか!?」
「うん。他の部屋でみんな待ってるから、行こうか」

男は立ち上がって、部屋の外に向かう。綱吉も戸惑いながらも付いていく。

「いやぁ、目を覚ましてくれて良かった。旦那の言った通りだったね」
「旦那?」
「万事屋の旦那だよ。旦那も待ってるよ」

男はそう言って目が覚めた部屋よりも三つほど隣の部屋で止まる。

「副長、綱吉君が目をさ・・・」
「十代目!」「ツナ!」

男が部屋に向かって声を掛けた瞬間、中から障子を蹴破って神楽が飛び出してきて、すぐに後ろから獄寺も出てきた。

「十代目!大丈夫ですか!?気分は悪くありませんか?」
「ツナ、もう起きてもいいアルか?ふらつくなら、まだ寝ててもいいアルヨ?」

二人が同時に言うので聞き取れなかった綱吉は、何となく心配してくれているのだというのは分かったので、大丈夫とだけ答える。
二人は良かったと肩をなで下ろすが、すぐにそれぞれ睨み合ってしまった。

「お前、真似するンじゃないアル!」
「てめぇが同じような事言ってンだろうが!」

彼らは部屋の入り口で言い争いを始めてしまい、中に入ることが出来ない。

「ツナ、こっちだ」
「早く入っちまえ」

すぐ横の障子がすっと開く。開けてくれたのは山本だ。隣には銀時が座っており、新八もいた。

綱吉は中に入ろうかと思ったが、しかしそのままではまずい事があり、入る前に神楽の足下を指差す。

「神楽ちゃん、退いてあげた方が良いよ」

神楽が踏んでいる障子の更に下で男が潰れていた。





「それじゃ、この世界に来てから一週間、俺は万事屋に、二人は真選組にいたってこと?」
「そう言うことですね」
「意外と近くにいたのな」

部屋には綱吉、獄寺、山本、万事屋の三人、沖田、土方、近藤がいた。綱吉を案内してきた山崎は神楽に気絶させられてしまったので、別室で寝かしている。彼は綱吉を捜すためにほとんど寝ていなっかた事もあり、完全に気絶していた。
それでも九人という大人数が一つの部屋に集結しているのだから凄いものだ。

「二人とも無事で良かった・・・」
「それはこっちのセリフだぜ、ツナ。俺らは二人だったけど、ツナだけはぐれちまったからな」
「そうです。何で野球馬鹿じゃなくて十代目がお一人に・・・」
「いや、山本が一人でも心配だから。でも、確かに何で俺だけ離れてこっちの世界に来たンだろう?」

三人は首を捻って考えるが、答えが出ることはない。合流が出来ても、情報が少ないことに変わりはないのだ。

「それに、十代目が突然気を失ったこともあります」
「あっ、二人は大丈夫だった?」
「それが、俺らは眩暈がしたけど、それだけなのな」

あの犯人が投げた爆弾による爆発を、三人は死ぬ気の炎で防いだのだ。
咄嗟の事だったが、獄寺が神楽達を爆発から守り、機動力が高い綱吉と山本が離れた所にいた犯人達を助けた。
爆発はうまく防げたが、その後が問題だった。超死ぬ気モードを解いた綱吉が倒れたのだ。
二人も軽い眩暈に襲われたが、それは爆発のショックだろうと簡単に考えた。しかし、外で待っていた銀時が言うには、以前も同じ事があったらしい。
これは偶然で片付けられない。

「死ぬ気の炎が関係していると見て、間違いないかと」
「じゃあ、何でツナは気絶までしたンだ?」
「それは・・・分かんねぇが・・・」
「お前ら、自分達だけで話を進めんなアル。私達にも分かるように説明するネ」

神楽が苛立ちを隠すことなく言う。神楽だけではなく、話が分からないのは三人以外全員同じのようだ。
綱吉は申し訳なさそうに謝り、彼らにも説明した。







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