第二章 第十九話     30/115
 



「おい、まだあいつらは出てこねぇのか」

炎上しているデパートの周りには消防の他にも真選組もいた。
多くの野次馬をデパートに近づけないようにし、避難してきた何人かの客や従業員からは話を聞いている。その中の一人にはまだデパート内に娘がいると言う母親がいた。
詳しく話を聞くと、その娘は子供二人と真選組隊士二名と避難するという手筈だったらしいが、外で待っていても一向に出てこない。
先ほど一度目よりも大きな爆発が起きたときには、何の装備もなしに再び中に戻ろうとしたので、隊士が三人がかりで阻止した。

土方は苛立ちから顔を苦くしている。
中にいる真選組隊士の特徴を聞いたところ、そいつらが獄寺と山本なのは間違いない。何故万事屋に向かったはずの彼らがデパートにいるのかは分からないが、二人がデパートにいることから、残る二人が誰なのかは想像できた。

『茶髪の子供とチャイナ服の女の子』

こいつらは『沢田綱吉』と万事屋のチャイナ娘だろう。
沢田綱吉がどれほどの奴なのかは分からないが、チャイナ娘は沖田と喧嘩出来るほどの腕前だし、獄寺と山本も弱くない。子供一人連れて避難するくらいは問題ないと思っていたのだが・・・。

「何をやってやがる・・・。大体総悟はどこ行った・・・」

一緒に万事屋に行っているはずだ。しかし、獄寺と山本はここにいる。またどこかで道草でも食っているのだろうか。

「呼びましたか、土方さん」

抜刀したい。今すぐ後ろの男に向けて抜刀したい。今さらのこのこと来たこの男に向けて抜刀したい。

「てめぇ・・・どこほっつき歩いてやがった!」

勢いよく振り返れば予想通り、沖田が立っていた。しかし、予想外にも立っていたのは沖田だけではなかった。

「ちょっと、多串君。まだあいつら出てきてないの?」
「うわぁ・・・神楽ちゃんと綱吉君大丈夫かな・・・」
「何で万事屋と眼鏡がいやがる」

銀時と新八は心配そうに炎上しているデパートを見上げている。どうして沖田はこいつらと一緒にいて、獄寺達と一緒にいないのか。是非ともその職務怠慢を問い質したい。

「説明は後にしやそうぜ土方さん」

沖田は土方が言いたいことを察してか、デパートを見ながら言う。確かに今それを問うている場合ではないが、どうせ後で問おうと思っても彼は逃げる気がする。

「あいつら、まだ中ですかィ?」
「ああ。三度目の爆発はまだねぇが、それもいつ起きるか分からん。早いところ出てこないと・・・」

土方は時計を見る。爆発が起きてから時間が経っているし、とっくに出てきていてもおかしくない。やはり中であの母親と別れた後、何かあったと考えるのが自然だ。
デパート周辺を探らせている隊士からは怪しい者を発見したという報告はまだない。これは出遅れたと考えた方が良い。

土方が思考を繰り返していると、万事屋の二人が声を上げた。

「おい、あれ・・・」
「神楽ちゃん!綱吉君!」

出入り口に見える人影。それは待っていた者達だった。しかし、人数が増えている。
山本は二人の男を背中に抱え、神楽も男一人を背負い、片方の手では女の子の手を引いている。そして獄寺の背には・・・。

「ツナ!」「綱吉君!」

意識のない綱吉が背負われていた。





『んー、難しいな』

『へたくそ』

『どうしてコマはすぐ倒れるのだ』

『だから、もっと手を・・・』

『おお、回った!やはり子供の方が遊びは得意だな!』

『子供って言うな!』

『私から見ればまだ子供さ。お前も、あそこで寝ているあいつも』

『ぎ―――ィィィィィ!松陽先生が木の上では寝るなって言ってただろうが!』

『あははははは。お前も木登り早いな』

『本当ですね』

『おっ、松陽。今日の菓子は饅頭か』

『ええ。美味しい饅頭を貰ったので』

『ぎ―――!――す−!饅頭だ!』

『甘味!糖分!』

『あっ、こら待ちやがれ!』

『ぎ―――は甘味関係になると動きが変わるな』

『好きな物のために頑張るのは良いことです』

『そうだな』

『俺一番大きい奴ね』

『こら、ちゃんとジャンケンで決める』

『やだよ。あんた絶対勝つじゃん』

『ふふ。俺は勘が良いからな』

『何度も聞いた。超直感だろ?』

『そうだ』

『嘘くせぇ』

『そう言うのは俺にジャンケンで勝ってから言え』

『・・・あんたやっぱり大人げねぇよ』


彼らに笑顔が広がる。







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