第二章 第十八話     29/115
 

「先輩!武器持てるだけ持ちました!」

大量の銃を肩から下げ、両手に爆弾を持った二人の男が覆面男の後から下りてくる。彼らは六階の階段の扉を開けたまま立ち止まっている綱吉を見て、顔を青くする。

「なっ、まだ人が!?」

どうやら彼らはすでに全員避難したと思って下りてきたようだが、母親の説得や再会の衝撃で避難が遅れた綱吉達がまだいた。

「せ、先輩!どうしましょう!?」
「あ、慌てるな!ただの子供・・・」

先輩と呼ばれる覆面男は二人を落ち着かせようとするが、扉の奥から神楽とミキ、そして山本と獄寺が出てきたら顔を青くした。

「し、真選組!?どうしてもうここに!我らの情報が漏れていたのか!?」

二人がここに来たのはまったくの偶然なのだが、それをわざわざ教える気もなく、さてどうしようかと考えていれば、彼らは勝手に話している。

「でも先輩!このデパートの上層部には話が付いているはずじゃ?」
「当たり前だ!でないと武器の保管など出来んわ!」

こちらが何も言わずとも彼らはあっさりと秘密を暴露している。しかもその事実に彼らは気付いていないようだ。
慌てふためいている様子や、言動の迂闊さから考えても、彼らの組織での地位は高が知れているだろう。しかし、それでもこの事件の犯人には変わりがない。このまま見逃す理由もない。

「おい、こら」
「な、何だ、幕府の狗め!」

覆面男は強気な口調で獄寺を睨むが、それが精一杯の強がりなのはばればれだ。

「てめぇらが爆発の犯人だろ。何でここにいる。普通爆発前にどこかに逃げているだろうが」
「当たり前だ!もし爆発させるのなら遠くにいるわ!」

覆面男は苛立ちを隠すことなく、逆ギレとも言える反応を示す。

「くそ、計画前に爆発させてしまうとは・・・上から何を言われるか・・・」

覆面男は声を震わせている。それが焦りから来る物なのか、それとも上からの制裁を恐れてなのかは分からないが、どうやらこの爆発は故意的なものではないらしい。
恐らく彼らは武器の見張りでもしていたのだろう。そして誤ってその武器の一つの爆弾を爆発させてしまい、逃げる時に少しでも武器を持っていこうと掻き集め、さあ逃げようと下りたら真選組の格好をした二人と遭遇。
何と間抜けな話だ。せめて避難の混乱と共に逃げたら逃げおおせることも出来たかもしれないが、時間が経った今、外は消防や真選組、野次馬で囲まれている。間抜けな彼らが逃げ切れるとは思えない。

「何てはた迷惑な連中ネ。間違って爆発させるなら仲間と一緒にいるときにでもさせるアル」
「そんな奴は爆弾持たねぇよ」
「ヅラはみんなで隠れている時に爆弾のタイマー入れたアル」
「そいつは馬鹿だ」
「大正解ネ」

彼らは本当に気が合うなぁ、と綱吉は一人で思っていた。

爆発は少なくとも今は起こす気はなかったようだし、犯人がまだここにいる以上は二度目の爆発はなさそうだ。そう思うと少し安心する。
しかし目の前にいる犯人を放っておくことも出来ない。獄寺は面倒くさそうに前に出た。

「おいこらテロリスト共。外はどうせ囲まれてんだ。大人しく投降しろ」
「くっ、くそ・・・」

爆発が故意ではないにせよ、彼らが武器を集めて騒動を起こそうとしていたのは明らかだ。捕まえて尋問すれば、覆面男の言う『上』や他の仲間の居場所も分かるだろう。気が小さそうな奴らならすぐ投降するだろうと考えた。

七階は火事になっているだろうし、早めに避難したい。このままだと危険なのは自分達も彼らも同じだ。

「こ、このような場所で・・・」
「うっ・・・うっ・・・」

覆面男は後ろに一歩下がって悔しそうにするが、それ以上に後ろに控えている男の様子がおかしい。
予想外の事態に体は震え、今にも恐怖が爆発しそうだ。

「くっ・・・うっ・・・」

震えは大きくなっていき、覆面男も彼の異常に気付いて怪訝そうに注視する。

「おい、どうし・・・」
「うわぁぁぁぁぁ!!」

男は錯乱して持っていた爆弾を投げる。この近距離では彼らも無事では済まないだろうに、そのことに頭が回らないほど混乱していたのだろう。

「ばっ、馬鹿者ォォォォォ!」

覆面男ともう一人の男は頭を押さえてその場で伏せ、神楽は後ろにミキを庇う。しかし、投げられた爆弾は三つ。それで爆発を防げる訳がない。爆弾は十歩も離れていないのだ。




三人は一瞬だけ目を合わせた。

それだけで十分だった。


「うわぁぁぁぁぁ!!」


覆面男が声を限りに叫ぶ。




爆発が起きた。







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