第二章 第十七話     28/115
 





異世界に来てから捜し続けて一週間。ようやく再会できた。
本当にこちらの世界に来ている確証もなく、手掛かりがない状況での捜索。
無事を祈り、再会が出来たら話したいことがたくさんあった。



こんな状況でなかったら。



「何でここにいるのぉぉぉ!?」

再会は素直に嬉しい。本当に嬉しい。無事だったと分かりほっとする。
だが、どうしてここにいる。ここはデパートの六階で、彼らが買うと思われる物もないし、自分も迷子だったミキがいなければここは来ないような場所だ。

「何で?どうして?何その格好?」
「ツナ、こいつらが捜してた友達アルか?」

いきなりの再会で綱吉はちょっとしたパニックになっている。神楽は興味深そうに彼らを見ているが、二人はそんなのお構いなしだ。

「十代目!よくご無事で!」
「ツナ!元気そうで良かったぜ!」

三人は再会を喜ぶ。しかし、そのような事をしている余裕はない。ここはもはやただの買い物をするデパートではなくなっている。

「お前ら、感動の再会は後にしろアル。周りの状況考えるネ」

神楽が冷静に指摘する。周りは天井が落ちてきているし、間違ってもゆっくりと語らう場所ではない。
彼らはあっ、と思い出し、恥ずかしそうに顔を掻いた。

「そうだった・・・逃げないと」

綱吉は再びミキの母親に呼びかける。真選組の姿をしている二人が来たためか、別々に避難することを了承してくれた。
最後にミキに呼びかけ、後ろ髪を引かれながらも彼女は別の避難通路に向かう。それを見送ってから綱吉は皆を確認する。

「非常階段はどこだろう?」
「十代目、あちらに職員用階段があります」

二人はそこから上がってきたのだ。どこが崩れているのか分からない以上、またそれを使う方が良いだろう。

神楽は女の子と手を繋いで、五人は階段に向かう。
爆発は一度だったようで揺れはすでに収まっているが、いつまた起こるか分からない。早く外へと避難した方が良いのには変わらない。

「七階にも人いたのかな」
「上は改装中だったようですし、営業中に作業はしていないと思いますが・・・」
「どうしたンだ、獄寺」
「これがテロだった場合の可能性を考えてンだよ」
「テロ!?」

綱吉は獄寺を見る。彼は難しそうな顔で続きを言おうか迷っていたが、前を見ながら自分の考えを言う。

「もしこれが攘夷浪士による爆弾だったら、設置した犯人がいる。時限爆弾だろうが、ちゃんと爆発したのを確認するはずだ」
「それじゃ、デパートの近くにいるってこと?」
「可能性は高いです。最上階の七階に仕掛けたのは遠くからでも見えるためと考えても、それほど遠くに居るとは思えません。少なくともデパートが見える範囲にいるはずです」
「・・・でもよぉ、獄寺。俺ら今デパートの中にいるンだぜ?外にいる犯人捕まえるのは無理じゃねぇか?」
「それは・・・」

獄寺は今気が付いたというような顔をして押し黙る。反論出来る良い案が思い浮かばないのだ。沈黙が落ちる。
その沈黙を破ったのは以外にも神楽だった。

「ツナ、『獄寺君』は頭がいいンじゃないアルか?こいつただの馬鹿ね」
「黙りやがれチャイナ娘!俺は客観的な見方を言ったまでだよ!」

獄寺は神楽を指さして顔を真っ赤にさせながら叫ぶ。神楽は興味なさそうに歩きながら手を繋いでいるのと反対の手で鼻をほじる。

「第一、 本当に外にいるアルか?このデパート内にいるンじゃないアルか?」
「はあ?何でだよ」
「犯人は現場に戻るアル」
「テレビの見過ぎだ!爆弾仕掛けて危険だって分かっている所に何で戻るンだよ!まだそこにいたらそいつはただの馬鹿だ!」

綱吉は二人のやり取りを聞いて仲良いなぁ、と思いながら階段の入り口を開ける。どこかが崩れ落ちたという感じはないので、まだこの階段は大丈夫そうだ。
すぐに階段を下りようとしたら、上から声がかかった。

「貴様何者だ!何故我らの他にも子供がここにいる!」

その声で振り返ると、七階から下りてくる階段上に男が立っていた。
刀を腰に差し、顔には覆面を被っていて見えない。そして右手に持っている機械。それが何なのかを考えるには、この状況を顧みるだけで十分だった。

「爆弾・・・」
「おい・・・ただの馬鹿がいるアルヨ?」
「何でいんだよ・・・」

姿を見ずともその内容で彼が何なのか察しが付いたのだろう、そんな会話が後ろでなされた。






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