第二章 第十五話     26/115
 





話は少しさかのぼる。


「お兄ちゃん、お母さん本当にここにいる?」
「いる・・・と思うよ?ね、神楽ちゃん?」
「ツナ、そこはビシッと俺が見付けてやる!と言うところネ。そんなんじゃ新八みたくなるアルヨ?」
「それ新八君に失礼だよ!?」
「真実ネ。あの眼鏡は彼女居ない歴=年齢のアイドルオタクアル。女の子と知り合っても文通止まりのヘタレネ」

綱吉と神楽は小さな女の子と一緒に六階の子供服売り場に来ていた。
一階で買い物をしていた二人は、泣いている一人の女の子を見掛けた。話を聞いてみると、どうやら母親とはぐれたらしい。母親が服を選んでいる時にお菓子が欲しくなり、一階まで来てクッキーを手に取ったところで、戻り方が分からなくなったのに気付き泣いていたという。
典型的な迷子だ。だが、そんな迷子を放っておけない二人は女の子の手を取り、母親がいると思われる六階に来た。

「母親も捜しているはずアル。きっとすぐ見つかるネ」
「うん!ありがとう、お姉ちゃん!」

神楽は女の子と手を繋いで歩く。それを後ろから見ている綱吉には、二人がまるで仲の良い姉妹のように見えた。

「神楽ちゃん、妹か弟いるの?」
「いないアルヨ?どうして?」
「なんかお姉さんみたいだから。慣れているのかと思った」
「本当!?」

神楽は「お姉さんみたい」と言われたのが嬉しかったのだろう、笑顔になり、女の子にも聞いている。

「私、お姉ちゃんみたいアルカ?」
「うん!お姉ちゃんもお兄ちゃんも、優しくてミキ好き!クッキーもくれたもん!」

女の子の手を繋いでいる反対の手には、欲しがっていたクッキーが握られている。泣いている彼女に二人が買ってあげたものだ。

「いやぁ、クッキーをあげたとたん泣きやむとは思わなかった・・・」
「子供はそんなものアルヨ、ツナ。早く母親を見付けるアル」

神楽はそう言うが、その必要はなさそうだ。前方からこちらに走って来る女性がいる。

「ミキ!」「ママ!」

どことなく女の子と似ている女性。それに二人の反応からして母親なのは間違いない。すぐに見つかって良かった。

神楽が走り出そうとする女の子の手を離そうとする。
しかしその時それは起こった。



ズドーーーーーン!!!



腹に響く爆発音。そしてそれにより起こる激しい揺れ。女の子も母親もその揺れに立っていられず、その場に倒れてしまう。
神楽も綱吉も突然のことに対処出来ず、倒れた女の子の手を再び取って引き寄せた。
爆発音がしたのは上からだったので、どうやら上で爆発が起こったようだ。そう綱吉が思ったら、それを肯定するように天井が軋む音がした。

「危ない!!」

綱吉は神楽と女の子を後ろに引きずるように移動させた。
咄嗟のことだったが、それは正しかったようだ。後ろに下がったとたん、綱吉達がいた場所に天井が崩れてきた。

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

女の子は悲鳴を上げる。神楽が安心させるように女の子の手を強く握り、彼女はそんな神楽に抱きついた。

「ミキ!ミキ!」
「お母さん大丈夫です!」

天井が落下してきて通ることが出来なくなったが、様子はどうにか分かる。向こうからは先ほどの母親の声がする。どうやらあちらも無事のようだ。
綱吉は声を張り上げた。

「ミキちゃんは無事です!怪我していません!でも、もうここは通れそうにないので俺たちはこっちの非常階段から避難します!お母さんもそっちで避難して下さい!」
「で、でも!」
「お母さん!」

母親からは躊躇いの気配を感じる。当然だろう。大切な愛娘をこんな子供に任せるのは不安極まりない。しかし、何が起こっているのか分からない以上、早く外に避難した方が良い。

綱吉が更に声を上げようとしたとき、まったく予想していなかった声が後ろから聞こえた。


「十代目!」「ツナ!」


綱吉はゆっくりと後ろを振り返る。
そして驚きで目を見開く。一週間、ずっと捜していた二人がそこにいた。



「獄寺君!山本!」





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