第二章 第十三話     24/115
 





「あー、パフェ食いてぇ」
「我慢して下さい、銀さん。今家計は火の車何ですから」
「今って・・・うちが火の車じゃなかった時なんてあったかぁ?」
「自覚してんなら仕事しろこの天パァァァ!」

昼間の万事屋にはソファで横になっている銀時と、掃除をしている新八がいた。
銀時はやる気がなさそうな顔で新八の小言を聞き流している、普段通りの状況だ。

「まったく。節約というのを覚えて下さい。神楽ちゃんも余計な物買わないと良いけど・・・」
「あの酢昆布娘は酢昆布にしか興味ねぇよ。ツナも一緒だし、大丈夫だろ」

今、綱吉と神楽は友達の捜索ついでに買い物に出ている。だから万事屋には二人と定春だけだ。
新八は掃除の手を止めて、銀時と向かいのソファに座る。

「もう綱吉君が来て一週間ですね・・・友達、もうそろそろ見つかるといいんですけど・・・」
「まぁ、江戸は広いからなぁ。よく考えたらこの世界に来ているって確証もない。来ていない可能性もなきにしもあらず、か」
「それだと綱吉君だけが来た理由が分かりませんよ」

新八は腕を組んで考えた。しかし考えるための情報がほとんど無い事に気付き、すぐに諦める。

「あっ、捜索願を出してみませんか?」

新八は良いことを思いついたという風に、ジャンプを読み始めた銀時に言う。

「一応あの人ら警察で、こっちは善良な市民何ですから。捜索願を出せば捜して・・・」
「身元を明かせない奴を捜してくれってか?そんなのあのチンピラ警察がやるわけがないだろうが。ツナが怪しまれるのが落ちだ」
「・・・そうでした。んー、どうしたら良いんだろう・・・」

綱吉からは友達の名前、容姿、大まかな性格しか聞いていない。出来る範囲で捜しているが、やはり限界はあるのだ。早く見付けてあげたいと思うが、何かいい手はないものだろうか?

先日、綱吉が元の世界ではマフィアのボス候補だと聞いた新八だが、態度を変えたりすることはなかった。一番の理由は信じられないと言うことだったが、すぐにその考えは消えた。綱吉の様子を見たら嘘ではないとすぐに分かったからだ。
しかし新八の中の綱吉はすでに『優しい男の子』だと確定しているし、この世界でただの子供に変わりはない。態度を変える理由にはならなかった。
神楽は綱吉を尊敬するような様子を見せたが、すぐにそれはなくなった。彼女も新八と同じ考えだったのだろう。
二人のその様子に綱吉は喜んでいた。新八や神楽にとっては当たり前のことなのに、嬉しそうにお礼を言っていた。
そんな彼のために何かしてあげたいが・・・。

「難しいですね・・・」

真選組には顔見知りがいるが、彼らも仕事なのだ。特に銀時と犬猿の仲の土方などは絶対やってくれないだろう。何か事件に巻き込まれているのならともかく、私事で動いてくれるとは思えない。
警察に動いてもらえたら心強いが、綱吉が疑われるのは避けたい。

「んー・・・」

新八が頭を捻っているのを銀時は横目で見ている。
すると。


ピンポーン


万事屋のインターホンが鳴った。
珍しい、来客だ。依頼人だろうか。新八は考えるのを止めて玄関に向かう。

銀時はジャンプを読むのを再開した。しかし、玄関から聞こえてきた聞き覚えのある声と、その言葉の内容に顔を上げる。



「ここに『沢田綱吉』って茶髪のガキいませんかィ?」





新八が玄関のドアを開けると、そこにいたのは黒い隊服に身を包んだ沖田だった。

「どうも」
「沖田さん!?」

つい先ほど真選組の話をしていたところなので、新八は驚いた。噂をすれば影というやつだ。

「どうしたんですか?珍しいですね」
「いやぁ、ちょいと仕事のようなものでね。あれ、てか、うちの奴二人来てないですかィ?」
「え?今日来たのは沖田さんだけですけど・・・」
「あいつら何やってんでィ・・・。勝手に先行ってコレかい」
「沖田さん?」
「まあいいや。眼鏡、ちと聞くが・・・」


「ここに『沢田綱吉』って茶髪のガキいませんかィ?」


新八は沖田を見たまま固まってしまった。予想外過ぎる言葉だったからだ。
どうして沖田が綱吉の事を知っているのか分からなかった。しかも『茶髪のガキ』と言ったという事は、少なからず容姿も知っていると言うことだ。なぜ異世界から来た彼のことを知っている?

その様子を見て、沖田は新八の横を通り万事屋に入ろうとする。

「あっ、待って下さい!勝手に・・・」
「だってあんた固まっちゃったし。俺待たされンの嫌いなんでさぁ」
「いや、だからって許可無く家に入らないで下さいよ!」
「そうだぜ。警察呼ぶぜ」

奥から銀時が首を掻きながら面倒くさそうに出てきた。

「俺が警察何で問題ありやせん」
「警察が不法侵入は問題あんだろ」
「不法?玄関から家主に招かれてんで不法じゃありやせんよ」
「誰も招いてねぇよ」
「あっ、そういえばここに手土産のケーキが」
「新八ィ、お客様だ。茶ァ入れろ」
「変わり身早すぎだぁぁぁ!」

ケーキの箱を素早く受け取った銀時は奥へと戻っていき、沖田もそれに続く。
どうやら追い返すのは難しいようだ。新八も玄関のドアを閉めて彼らに続いた。







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