第二章 第十一話     22/115
 



「・・・お前に会う前、ヅラが言ってやがった」

いきなり関係のない話をする銀時に、綱吉は反応できなかった。
ヅラというのは、確か桂のことだ。どうしてその人の話が急に出てくるのだろうか。
綱吉が何も言わなくとも、銀時はそのまま話を続ける。

「もし異世界から転送されてくるのが危険なモノだったらどうするってな」
「・・・」
「えぇと、悪意を持った生物や、大量破壊兵器だったか?」

綱吉ははっとした。自分は悪意を持っている気はないが、この世界の人々にそんなのは分からない。それにあのような力を見せたのだ。破壊兵器と思われたのかも知れない。
もしそうなら、綱吉は悲しかった。まだほんの数日しか過ごしていないが、一緒にいた人たちに恐がられるのは嫌だった。しかし、それは綱吉の都合だ。もし自分が彼らと同じ立場だったら恐がるかもしれない。自分の都合を押しつけたくはなかった。
万事屋からは出ていったほうがいいのかもしれない。そう思った。しかし、銀時の言葉がその思考を遮った。

「だけどこっちに来たのはただのガキだ」
「・・・え?」

銀時は振り返らない。変わることのない声色で話し続ける。

「ダチの心配をして、誰かを助けたいと思って、心配して、悲しくなって、笑っている、ただのガキだ」
「銀さん・・・」
「マフィアの次期ボスだぁ、その力があるだぁ、そんなの関係ねぇよ」

銀時は振り返らない。それでも綱吉は、彼が笑っているように感じた。

「お前は優しいただのガキだよ」

銀時は何でも無いことのように言う。綱吉はまだ何も言うことができない。

「大体なぁ、お前がマフィアって・・・しかもボス?似合わなすぎだろう。どこぞのサド王子の方がしっくりくるぜ?」

銀時は綱吉を背負ったまま歩く。銀時にとってはただの子供の綱吉を。

受け入れるのが当たり前かのように彼は言う。
そんなの隠していたのかと呆れるように彼は言う。
それが何よりも嬉しかった。泣きたいぐらい嬉しかった。

「・・・銀さん」
「何だ、ツナ」


「ありがとうございます」


優しい彼に、最大限の感謝を込めて。




月は彼らの歩く道を照らしている。







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