第二章 第八話     19/115
 


「本当にこれが全部何です!許して下さい!」

ヒロシは工場の中で先ほどの不良二人に両腕を掴まれ、体格の良いスキンヘッドの男を中心とした集団の前に立たされていた。

「あぁん?俺は五万持って来いって言ったよなぁ?これ二万じゃねぇか。お前は算数もできないのかぁ?」
「五万何て大金持っていません!これが俺の全財産何です!」
「それじゃぁ母ちゃんの財布からでも取ってこいやぁ!それくらい頭使えェ!」
「そんな・・・」
「はいはい、そこまでよ」

場違いとも言える調子の第三者の声がし、不良グループとヒロシは工場の入り口を見た。
閉めたはずの入り口の戸は大きく開かれ、そこにはすでに木刀を腰から抜いて手に持っている銀時と、ヒロシやガラの悪い不良グループの大勢に一斉に見られ、内心では今すぐこの戸を閉めて逃げてしまいたいとすら思っている綱吉が立っていた。

「いい大人がこんな子供相手に大人数でカツアゲとは、恥ずかしくないのかねぇ」
「誰だ、てめぇ」

大将格のスキンヘッドの男は侵入者の二人を睨むが、怯える綱吉とは違い、銀時は飄々とした様子で物ともしない。

「通りすがりの万事屋だよ」
「じゃぁ、その万事屋さんはこんな廃工場に何の用だい?」
「お前は馬鹿か。少年漫画をもっと読め。あれには大人でも持つことが出来る夢と希望とロマンが詰まってるから。そしてその少年漫画ではこの状況で割って入ったら、やることは一つだ」
「なるほどなぁ。それじゃぁ、こちらも少年漫画の悪者のように、やることは一つだなぁ。だが・・・」

スキンヘッドの男は大きなイスに座り、偉そうに足を組んでにやりと笑った。

「少年漫画と違い、負けるのは正義の味方気取りのお前らだけどな」

スキンヘッドの男がそう言うと、ヒロシの脇に控えていた二人を始めとした不良グループが襲いかかってきた。

工場に入る前にしていた打ち合わせ通りに銀時はそれを迎え撃つために前へと出て、綱吉は抑えていた二人がいなくなったことで自由になったヒロシを安全な場所に移動させようと、大きく迂回して彼の元に向かった。

「大丈夫ですか?」
「き、君たちは・・・」
「万事屋です。ヒロシさんのお母さんに頼まれて、調査をしていました」
「母さんに・・・」

綱吉は座り込んでいるヒロシを立たせようと手を取るが、ヒロシは震えたままで立ち上がろうとしない。

「ヒロシさん、立って下さい!ひとまずここから出ないと!」
「こ、腰が抜けて・・・」

綱吉は焦った。自分の力ではヒロシを抱えて外まで運ぶことは難しい。
銀時が凄まじい速さで不良グループを倒していっているが、いつ彼らがこちらに気付いて襲いかかってくるか分からない。
ここから出ることは出来なくても、せめてどこかに身を潜めなくてはいけない。

「どこか・・・隠れる場所は・・・」

工場内を見渡すと、ここが廃棄されてそのままだったのだろう、鉄パイプや機材の山で陰が出来ているスペースがあった。あそこなら身を隠すくらいは出来そうだ。

「ヒロシさん、せめてあそこの物陰に隠れましょう」

綱吉は立てないヒロシを引きずるように運び、不良達から見えないようにとヒロシを奥にして隠れた。そして物陰から顔を出し、銀時の戦いの様子を見る。

「オラァァァァァ!」

銀時は予想していたより遙かに強かった。ヒロシを安全な場所に移動させたら自分も死ぬ気丸を飲んで戦いに加わろうと考えていたのだが、その必要はなさそうだ。始めは少なくとも二十は居たのではないかと思われた不良グループも、焦り始めているスキンヘッドの男を入れても、もう半分もいない。
戦争に参加していたことは新八から聞いていたが、これほどとは思わなかった。自分の世界でも仲間、敵を含めて多くの強者を見てきたが、それに劣るようには感じない。
これならば怯えているヒロシの側にいた方が良いだろうと綱吉は思った。

しかし、戦いの輪から離れて様子を見ていたスキンヘッドの男が懐から何かを取り出しているのが目に入った。
それは元の世界で何度か見たことのある、黒光りする銃。

そしてその銃口は、戦いの中心にいる銀髪の侍に、真っ直ぐと向けられていた。







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