第二章 第七話     18/115
 

「それじゃぁ、依頼内容は息子さんが何をやっているかの調査ですね」
「はい・・・。出来れば息子には内密にお願いします」

時間はお昼少し前。万事屋には依頼人が来ていた。

今日もこちらの世界に来ているはずの二人を捜索するため、神楽と一緒に街へと繰り出そうとした綱吉。しかし玄関のドアを開けたら、依頼人がそこに立っていたのだ。
二人は捜索に行って良いと銀時は言ってくれたが、これは万事屋の大切な仕事。生活が係っているのだし、世話になっているのだから何か手伝いたいと綱吉は申し出た。

そして依頼人が帰った後、四人はどのようにして調べるのか話し合いをしている。

「二日前の夕方、塾に行っているはずの息子さんを商店街で目撃。家に帰った後に聞いてみてが、商店街には行っていないと言われる・・・これ、奥さんの見間違いの可能性はないんですか?」
「その可能性もあるけど、息子さんの帰りが遅いときもあるらしいから、やっぱり何か隠しているのかもしれないね」
「ただ勉強が嫌なだけじゃないアルか?このくらいの年頃のガキにはよくあることネ」
「いや、この写真の人、神楽ちゃんよりも年上だと思うんだけど」
「黙るネ眼鏡。精神年齢は女の子の方が上アル。少なくともアイドルの追っ掛けやっている奴よりは上アル」
「僕のことかァァァ!!」

神楽がうるさいと言って新八を殴っている横で、綱吉は依頼人から渡された息子の写真を手に取った。

「でも、見た感じでは塾をサボりそうには見えませんよね。真面目そうな子ですよ」
「そういうガキが本当は勉強嫌だと思ってるもんだよ。どうせコンビニとかカラオケで時間潰してんだろ」

銀時はそう言いやる気がなさそうに耳をほじっている。
新八はそれを見て、仕事ですよと諌めるが、どうやら新八も少なからずその意見には同意しているようだ。

「ともかく、息子さんがどこに行っているのかを突き止めましょう。あと、塾で変わった様子がなかったか調べた方がいいですね」
「二手に分かれるんですか?」
「うん。効率がいいからね」

最初の猫探しを除けば、初めての万事屋の手伝い。
足手まといにならないようにしなければと、綱吉は気を引き締めた。





「アレが息子さんの次郎だな」
「銀さん違います。ヒロシ君です。依頼人によるとあの子長男です。どうしてその間違え方をするんですか」

綱吉は銀時と一緒に依頼人の息子、ヒロシの尾行をしていた。
最初は神楽が悪ふざけで出してきた変装グッズを付けていたのだが、逆に目立つし顔も割れていないことに気づいた二人。荷物は少ない方が動きやすいだろうと思い、綱吉は出来るだけ持ち物を減らした。

「あっ、塾とは違う道に入りましたよ」
「これで母親の見間違いの線は消えたな」

尾行を初めて五分。後ろから付いてきている二人に気づいた様子はないヒロシは、脇道に入った。

「どこに行く気でしょう」
「どうせどこかでサボってんだろ。その場所が分かったら帰るぞ」
「え?話は聞かないんですか?」
「そんなの赤の他人の俺らがすることじゃねぇだろ。あの母親が話をする気になってんだ。いらねぇよ」
「そういうものですか?」
「親子間で解決出来るならその方が良い。手助けは助けを求められたらその時考えろ」
「・・・銀さん」
「何だ?」
「子育てのでも経験あるんですか?」
「現在大きなガキが三人います」

三人?二人は神楽と新八の事だろうが、もう一人は定春の事だろうかと綱吉は思った。銀時はそんな様子の綱吉の頭をポンポンと撫で、何も言わずに足を進める。

残り一人は自分のことだと綱吉が気づいたのは、もう少し後になっての事だった。





「あれ?コンビニを通り過ぎましたね」
「商店街の近くのコンビニって言ったらあそこぐらいだぞ?どこで時間を潰す気だ?」
「お母さんに見つからないように、場所を変えたんでしょうか?」

ヒロシはコンビニには見向きもせずに重い足取りで歩いていく。そしてそのままコンビニの隣にある脇道に入った。

「何か人気がない所に進んで行っていませんか?」
「何だぁ?誰かと逢い引きでもしてんのか?」
「そんな楽しそうな様子じゃありませんよ」

ヒロシの後ろ姿は決して明るい物ではなく、とてもじゃないが恋人に会いに行くようには見えない。
綱吉はポケットに入れている手袋と死ぬ気丸を握りしめた。こちらの世界に来てからまだ必要になってはいない力。常にバックに入れていたので一緒にこの世界に持ってきてしまったが、自分を守る唯一の力だ。
何も起きなければ良いと思うが、そうもいかない気がする。

「・・・嫌な予感がします」

空は薄暗くなり、人気が無くなっていく道を二人は進んだ。





ヒロシは廃工場の前で立ち止まり、周りを見渡している。

「・・・サボるために時間を潰しに来たって感じじゃねぇな」
「人気がほとんどありません。こんな場所に何の用が・・・」

二人が離れた場所から見ていると、廃工場の中からいかにも不良ですという姿の男が二人出てきた。
ヒロシは怯えたように持っているバックから封筒を取り出し、その二人に渡している。

「・・・銀さん。これってカツアゲですよね?」
「あの馬鹿息子、どっかの不良グループに目ェ付けられてやがったな。不良グループと逢い引き何ぞ、明らかに自分のキャラと合ってねぇぞ。もっと地味な友達を選べ」
「絶対望んで会ってませんよ!そしてその言い方は可哀想です!」

封筒を受け取った二人は中からお金を取り出すが、金額が気に入らなかったのだろうか、何か怒鳴っている。そしてそのままヒロシは腕を掴まれ、引きずられるように廃工場の中に連れ込まれて行ってしまった。

「塾に行かずにカツアゲに合っていたとわな。不運なこって」
「そんなこと言っている場合ですか銀さん!助けに行かないと!」

綱吉と銀時は廃工場に乗り込んだ。







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