第二章 第六話     15/115
 


一方その頃。

「見つからねぇじゃねぇかこのサド野郎!」
「なんでェ、今日は北を捜すように言ったのは土方さんですぜィ。俺の責任じゃねぇよ」
「はは、そんな怒るなって獄寺。沖田さんも、獄寺には悪気はないんだぜ?ちょっとイライラしているけど、いい奴何だぜ?」

獄寺、山本、沖田は隊服で街中を捜索していた。

獄寺と山本は『実家が武家だったが落ちぶれて、同じく武家だった永倉を頼って江戸まで来た』という事にしている。お家事情の事を深く聞こうとする奴はあまりいないだろうし、知らないことがあっても上京したばかりでよく分かっていないことにしろという土方の指示だ。
隊長格には装置のことを説明しているので所属はどの隊でも良いのだが、沖田の一番隊に決まった。捜索中に浪士の襲撃を受けても、沖田ならば二人を守る余裕があるだろうという判断だ。

「まぁ、もうじき山崎が情報を持ってくるころでェ」
「あぁ、あの地味な奴か。あいつなんかで大丈夫か?」
「一応監察としては優秀らしいですぜ。いつもどこからそんな情報持ってくるんだって感じだし、今回も何かしらあるんじゃないですかィ?」
「すごいのな!」

沖田はそう言って駄菓子屋に入っていく。

「あっ、おい!どうした?」
「おばちゃん、いつもの三つね」
「あらあら、総悟ちゃん、お友達かい?」
「んや、部下」

沖田はそう言って駄菓子屋の女主人に小銭を渡し、小さなガムを三つ受け取った。

「俺はお前の部下じゃねぇ!」
「でも獄寺、俺ら一応今一番隊隊員何だろ?それじゃ、隊長の沖田さんの部下って事何じゃ?」
「そうだぜィ、獄寺。お前は形だけだろうが俺の部下だぜ。ていうわけで自販機までダッシュして飲み物買ってこい」
「ふざけんな!俺は生涯十代目だけにしか仕えねぇ!」
「十代目ねぇ。そんな凄い奴何かねィ」
「十代目は素晴らしいお方だ!」「ツナは凄い奴だぜ!」

獄寺と山本は同時に言う。その言葉に揺らぎはなく、本当にそう思っているのが沖田にも分かった。

「なら・・・」

沖田は駄菓子屋から出て獄寺と山本の両名にガムを一つずつ投げ、二人はそれを危なげなく受け取る。

「信じるこった。そんな凄い奴なら、今も無事何じゃないですかィ?特に獄寺は落ち着きなせェ。じゃねぇと再会したときに『十代目』に笑われるぜ?」

沖田はそう言って背を向けて歩き出し、その背中を二人は見ている。

「・・・気を遣ってくれたんだよな?」
「・・・けっ、格好つけやがって・・・絶対ェ礼は言わねぇぞ!」

獄寺は沖田の背中に叫ぶが、沖田は手を挙げただけだ。しかし、山本にはそれが獄寺のお礼を受け取っているように見えて、思わず笑ってしまった。

「てめ、何笑っていやがる!」
「いんや、何でもないぜ?」

山本は距離が空いてしまった沖田を追いかけた。
自分も礼を言おう。今度は獄寺と違って正面から。
獄寺と似て不器用な彼は、どんな顔で礼を受け止めてくれるだろう?






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