第二章 第三話     12/115
 


「今日はスーパーが特売だって」

朝食が食べ終わり、あやめを追い出してお妙が家に帰った後に銀時は言った。

「あぁ、そう言えばそうでした。お金があるうちに食料買っておいた方がいいですね。僕が行きますよ。銀さんじゃお菓子ばかり買うから」
「あっ、俺も行くよ。二人の方がたくさん買えるでしょ?」
「ありがとう!それじゃ、早めに行こうか。良いのが売り切れちゃう前に」

新八と綱吉はそう言って買い物へ行った。着く頃に開店するくらいの時間なので、大量に買ってくることができるだろう。
二人が帰ってくるまでに朝食の食器を洗ってしまおうと思い、銀時は立ち上がった。

「銀ちゃん」

神楽が声を掛けてきた。銀時はテーブルの食器をまとめながら返事をする。

「何だぁ、神楽。お前も食器洗うの手伝え」
「銀ちゃん」

再度名を呼ばれて銀時は顔を上げる。神楽は膝を抱えて長いすの上に座り、顔を伏せているのでその表情を伺うことは出来ない。どうやら様子がおかしいようだ。

「どうした、神楽」
「私、今日早く起きたネ」

神楽は顔を上げないまま話し出した。

「本当は別に早く起きる気はなかったアル。姉御が卵焼き作っても銀ちゃんに全部食べさせようと作戦を立てていたから、姉御が起こしてくれるまで寝ているつもりだったネ」
「おい、それはどういうことだ」
「でも、ツナが起きて洗面台に行ったので目が覚めたから、顔洗ってるときに後ろから驚かしてやろうと思って起きたアル」
「神楽ちゃぁん、銀さんの言葉を無視しないでぇ」

神楽は構わずに続ける。

「でも、ツナ鏡の前で顔を洗わないで百面相し始めたネ。落ち込んでいたアル。だから顔を洗うのを待たないで驚かそう思ったアル。元気になるかなって。そしたらツナ言ったネ」


『まぁ、未来と違って見つかったら殺されると決まっている訳じゃないんだし、大丈夫、大丈夫・・・』


「・・・・・」

銀時は何も言わなかった。

神楽は綱吉の独り言を聞いていたのだ。それを聞いて反射的に声を掛けてしまったが、明らかにその時の独り言は誰かに聞かれてほしくない物。咄嗟にそれを聞いていないふりをして、嘘の起床理由を言った。
しかし、本当はその独り言の意味を聞きたかった。

「銀ちゃん」
「何だ」
「ツナはいい奴ネ。まだ知り合って少しだけど、分かるネ」
「そうだな」
「銀ちゃん」
「・・・何だ」
「ツナの世界は、ツナの未来は危険アルか?殺されちゃうアルか?」

神楽の知るツナは弱い。初めて会ったときには神楽から逃げたが、足は遅かったし、体力もなさそうだからあのまま止まらなくても本当はすぐに追いつけただろう。
神楽の知るツナはお人好しだ。この世界に来たばかりでよく分からないのもあるかもしれないが、万事屋なんていう怪しい連中と一緒にいて、その手伝いまでもしている。すぐに人を信じる。
神楽の知るツナは優しい。あのときは思いもしなかったが、異世界から来た直後に猫を連れて行くのを手伝ってくれた。自分は何も分からないで不安だったろうに。

「ツナは、本当に元の世界に帰った方が良いアルか?」
「あいつがそれを望むなら、な」

銀時はまだ顔を上げないままの神楽の頭に手を置いた。

「あいつが、ツナが帰りたかったら、その方が良いんだろう」
「でも・・・」

神楽はようやく顔を上げ、銀時を見た。
銀時は優しく笑っていた。

「今は、ツナの友達の・・・えっと、地獄寺君と山口君だったか?そいつらを捜そうや」
「銀ちゃん・・・たぶん名前間違ってるアル」
「あれ?そうだっけ?」

神楽はプッ、と笑った。

今のツナは友達を捜している。友達ということは、ツナの仲間なのは間違いない。きっといい奴だろう。会ってみたい。
独り言については、やはり機会があったらツナに聞こうと思う。グルグル考えるよりも、本人に聞いた方が早い。
もしもツナが危険な世界に戻りたくないというなら、それでいいと思う。こっちの世界にいるのも良いのではないか?ここは銀時も新八もいる、いい街だ。
この世界で、自分は誰よりもツナの味方でいようと思った。






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