第二章 第二話     11/115
 

「何これ」

銀時は申し訳なさそうな綱吉に起こされて、用意された朝ご飯を見た。
そこには二つの卵料理と暗黒物質があった。。

「卵駆けご飯アル」
「目玉焼きです・・・黄身は潰れてしまいましたけど」
「卵焼きですぅ。今日は特にうまく焼けたの」

新八の姉であるお妙がにこやかに話す。

「新ちゃんに万事屋に居候が増えたって聞いて、これは腕によりを掛けてお持て成ししようと思って早めに来たんです。そしたら二人がもう起きていて、朝ご飯作るのを手伝ってくれたんですよ」
「・・・・・ツナ、神楽」
「すみません銀さん」「ごめんアル銀ちゃん」

俺たちじゃ、この人を止められませんでした。

チャイムの主は神楽の言っていた姉御改めお妙と新八だった。
お妙は朝ご飯を作りに来たと言ってくれたが、神楽が異常なほど震えて全身で拒絶する様子だったし、綱吉も嫌な予感がしたので手伝いを申し出た。
そして、それは正解だったのだろう。

(火に掛けていないのに卵が黒く!?)

お妙の料理は綱吉の知り合いの料理を思い出させた。アレはやばい。どうにかしなければ万事屋は全滅だ。
そして綱吉は必死でどうにかしようとした。

「綱吉君が目玉焼きを作りたいと言ったので替わったんですけど、それで卵がなくなってしまって・・・」
「・・・すみません」
「あら、そんな謝らないで綱吉君。残りの卵の数を確認しなかった私も悪いのだから。神楽ちゃんも卵駆けご飯が食べたいと言ったので、卵焼きは一つしか作れなかったんです。綱吉君は目玉焼きと卵焼きの両方食べるのは無理らしいので・・・」

お妙は卵焼きという名の暗黒物質が乗った皿を手に持った。

「大人の銀さんがどうぞ食べてください」
「・・・本当に、本当にすみません銀さん」

俺が助けられたのは自分と神楽ちゃんまででした。

「ふっ、ツナ、お前はよくやったよ」
「銀さん・・・」
「お前がいなかったらここには可哀想な卵が三つ並んでいただろう。お前は神楽も守ったんだ。胸を張れ」
「銀ちゃん・・・」
「俺は運がなかった・・・それだけさ」

銀時は遠くを見ていた。その横顔には哀愁が漂う。

「銀さん、何言っているんですか?さあ、どうぞ食べてください」

お妙はさらに卵焼きを勧める。そして銀時が諦めたようにそれを見たその時!



「銀さぁぁぁぁぁぁん!!」
「どこから出てきたこのストーカー女っ!」



天井から突如女性が出てきて、それに向かってお妙が手に持っていた卵焼きを投げつけた。
女性は卵焼きが直撃した顔を押さえながら天井から落ちてきた。落ちたときに頭を打ったはずだが、それ以上に顔が痛いのだろう。必死に顔を押さえ、床で苦しさのあまり転がっている。

「えっ、天井から女の人が!ていうか顔から変な音がしているんですけど!何か溶けるような!大丈夫なんですか!?」
「あぁ、さっちゃんなら大丈夫アル」
「さっちゃん?」
「この女性だよ、綱吉君。猿飛あやめさん。元お庭番衆の忍者で今は銀さんのストーカー」
「えっ、ストーカーって・・・。警察に行った方がいいんじゃ・・・」
「残念ながらその警察の局長もストーカーアル」
「ええっ!?」
「武装警察真選組何ていってるけどチンピラ警察ネ。ツナも気を付けるヨロシ」
「はぁ・・・」

綱吉は力無い返事をした。世界が違えば警察のあり方も違うのだろうか?

あやめは早くも卵焼き爆弾の被弾から回復したようで、立ち上がりお妙に抗議の声を上げている。

「いきなり何をするのよお妙さん!そんなに私に銀さんを取られるのが恐い!?」
「こんな天パ何ぞ誰がいるか!食事中に天井から現れるなんぞストーカーはTPOをわきまえない奴ばかりね!」
「まぁ!貴方の所のゴリラストーカーと一緒にしないで!私は・・・」

お妙とあやめが激しい言い争いを始めてしまった。

「新八君、ゴリラストーカーってもしかして」
「うん。さっき言った真選組の局長。姉上のストーカー」
「・・・大変なんだね」

綱吉はポンッと新八の肩を叩いた。
料理が殺人的な姉に、それに付きまとうストーカー。明らかに平穏とは言えない環境だ。

「あらっ、貴方は・・・」

あやめが初めて綱吉に気が付いたようで、ジロジロと観察した。

「どなたかしら?銀さんと一緒にご飯を食べるなんて、羨ましいことこの上ないわね」
「はっ、初めまして。沢田綱吉です。その、友達を捜していて、今は万事屋に居候させていただいています」
「何ですって!」

あやめは突然目の色を変えて綱吉を見る。

「私の銀さんと一つ屋根の下暮らす者がまた一人・・・そんなの万死に値すぐはっ!」
「何が『私の』銀さんだ。勝手にお前の物にするな」
「ああ!銀さん!いいわ!もっと、もっと私を蔑めばいいじゃない!罵声を浴びせればいいじゃない!その度私はもっと、もっと・・・興奮するじゃない!!」

あやめは自分の世界に入ってしまったようで、一人何かを言いながら床でクネクネと動いている。

「綱吉君、あんな大人になっちゃだめよ」
「・・・はい」

唯一にして最大の問題だった卵焼きが消えた今、食卓は平和になった。

三人は手を合わせ、全員で「いただきます」を言った。




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