第六章 第六話     113/115
 




「なぁ、ツナ。ジョットってどんな力持ってたんだ?」

銀時は布団を畳みながら尋ねた。綱吉は予想外の問に目を瞬かせる。

「……急ですね」
「いや、何となく」

綱吉は自分の布団を押し入れに入れ、そうですね、と一つ呟いた。
どうしてですか、と訊かれたらどうしたものか。銀時はそんな懸念を一瞬だけ抱いた。しかし、綱吉は「俺も正直、よく知らないですけど」と前置きをして、家庭教師達から聞いた事のある情報を口にした。

超直感を持っている。死ぬ気の炎を灯す。零地点突破の、最初の習得者。

「……アイツって凄い奴だったの?」
「えっと、ボンゴレのボスでも、歴代最強って言われているらしいです」
「ゲームだったらラスボスレベルかよ」

記憶の中のアイツって、全然強そうに見えないんだけど。予想はしていたけど、人は見掛けによらない、をそのまま体現している奴だったんだな。

「プリーモならラスボスってよりもチートキャラって感じですけどね」
「あー、分かるわ。いるよな、其処にいるだけでフラグの最強キャラって」

銀時は納得した様子でうんうんと頷く。

「でも、改めて考えてみると俺もプリーモの事は殆ど知らないんですよね」
「そんなもんだろ、ご先祖様の事なんて。何代前の爺ちゃんだってレベルだし」
「伝承みたいのなら聞くんですけど……そう言えば――」

――初代ファミリーの守護者の魂が、ボンゴレリングに意識が眠っているって聞きました。

「……そうか」

銀時は布団を仕舞い終わって、欠伸を一つ。まだ少しばかり眠い。
今日の朝飯はどうしようか、と考えながら部屋の襖に手を掛ける。

「銀さん」

名前を呼ぶ声は、迷っている様だった。

「どうした、ツナ」

何時もと変わらない調子で訊く。

「あの、その…………おはようございます」
「……おう、おはよう」

俺の小心者ォォォォォ!
綱吉が心の中で叫んでいたのを、銀時が知る術はなかった。





あの変な夢の原因は、どころかほぼ間違いなく綱吉のご先祖様だろう。綱吉のご先祖様であり、松陽の所の居候であったジョット。もうただの夢であるという選択肢はない。傍迷惑な奴だ。

ジョットが元の世界に戻ってから、此方の世界では二十年経った。彼方の世界では一世紀は経っているらしい。
綱吉がこの世界に来て二ヶ月程。どうして今になって、と思わないでもない。しかし、今になって夢に出てくるのだから仕方がない。

そう、仕方がない。
どうせ夜になったらジョットはまた夢に出てくるのだろう。ここまで来てもう出ないなんて事を、アイツはしない。
だから、仕方がないのだ。
あの変な指輪の中に眠っているのが原因かもしれない。ただ、指輪の記憶だっていうのが原因かもしれない。どうせ考えても彼方の世界の不思議知識がない自分には、根拠のない予想しか浮かばない。

顔を洗う為に洗面台に向かい、鏡に映る自分の顔を見る。少々顔色が優れない様にも見えた。蛇口を捻り、両手で冷たい水を受け止めて顔にかける。
その冷たさに少しばかり目が覚めた気がした。

「……アイツ、成仏出来てないのかねェ」

やはり、まだ寝惚けているみたいだ。
もう一度、考えを打ち消す様に冷たい水で顔を洗った。




前へ 次へ

戻る

 
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -