第一章 第八話     9/115
 

「はぁ!?異世界だぁ!?信じられるか!!」
「ははっ、すげぇのな!」
「まったく違う反応をありがとよ」

場所は変わって局長室。
部屋には近藤、土方、沖田、その向かいに獄寺と山本が座る。
山崎が人数分のお茶を持ってきたが、山本は飲んでも獄寺は手をつける様子はない。どうやら先ほどの質問の内容で警戒度が上がったらしい。

あの後はちょっとした騒動だった。
獄寺は「てめぇらどこのファミリーだ!」と騒ぎどこからかダイナマイトを取り出すし、山本は「おっさん達、ツナの知り合いか?」とマグロがどうしたという発言をするし、近藤は当たりだということがわかり困ったように苦笑しているし、沖田はバズーカで俺を狙うし・・・これはいつものことか。

ひとまず騒動を聞きつけた隊士達は部屋に帰し、まだ気絶していた永倉他数名の隊士をたたき起こして後で侵入者については話すと言って自室待機を命じ、獄寺と山本には説明をするからと部屋を移した。

今はその説明の途中だ。

「信じられねぇなら外を見ろ。ターミナルが見えるだろう。お前らの世界にあんなのがあるか?」
「・・・マジかよ」
「すげぇな、獄寺。俺ら未来の次は異世界だってよ!」

どうやら信じてもらえたようである。難関を一つクリアしたが、まだ一つだ。
土方はため息を吐いた。何故自分がこんなことしなければいけないのだ・・・。仕事をするよりよほど疲れる。
説明を始めてから今まで何も言わなかった沖田が口を開いた。

「しかし、幕府もとんでもねぇのを持っていたものでさぁ。異世界たぁ、一体何に使う気だったのだか」
「知るか。そのまま蔵に眠っときゃぁ良かったのに」
「まぁトシ、ひとまずは二人見つかったんだからよかったじゃないか」

近藤はそう言って笑う。しかし、そんな近藤を獄寺は睨んだ。

「てめぇら、どうして『ボンゴレ』を知っていやがる」
「知らねぇよ」「・・・は?」

質問をした獄寺も、聞いていた山本もぽかんとした顔をする。まぁ、そうだろうな。

「俺らはお前らを捜せって言われた上司に、その質問しろって言われただけだ。普通と反応が違うようなら、そいつが当たりだってな。ボンゴレはあさりのことか?」
「違う!いや、間違ってはないけど!ボンゴレは俺らが所属するマフィアの名だ!」
「・・・何?」

土方を始めとした真選組の三人は目を鋭くさせた。
こんな子供がマフィアのわけがないと言いたいが、この子供達は異世界の住人だ。こちらの常識がどれほどまで通じるかわからない。もしかしたら本当に・・・。
三人がそう考えたとき、山本が朗らかな笑顔で言った。

「そうそう!ツナがボスなのな!他にも俺らの学校の風紀委員長に、ボクシング部の先輩だろ、あとツナの家に居候しているランボっていう子供に、隣町の女の子と、俺らが『守護者』で、あと小僧が・・・」
「山本!!だからこっちの情報をあっさりばらすな!」
「・・・・・・・あぁ、なるほど」

土方は脱力した。つまり、そういうことか。おかしいと思った。こんなただのガキがマフィアのわけがないではないか。
近藤が土方の肩にポンッと手を置いた。

「トシ、俺らもやったなぁ、侍ごっこ」
「総悟が十割の確率で正義の味方のやつか」
「覚えてまさぁ、土方さんを木刀でぼこぼこにして火で炙りましたねィ」
「何の話だァァァァァ!」

土方達が信じていないのだとわかると、獄寺は顔を赤くしながら立ち上がった。

「てめぇら、俺らは本物の!」
「以外と本格的なのな!隣町の閉鎖しているテーマパークで他校試合やったこともあるし!」
「そうか!人気があるのだな!」

山本と近藤が笑いながら子供の時にどんな遊びをしたかという話をし始めてしまい、獄寺は遊びを否定するも信じてもらえない。

土方はともかく、と話を再開させた。

「なんでそのボンゴレを知っているかは本人に聞け」
「・・・いつそいつに会うんだ。今日か?」
「いやぁ、山崎に確認させたらとっつぁんはもう出張に行っちまったみたいでなぁ。すまんが最低でも一ヶ月は先のことになる。それまで君たちはこの真選組を寝床にしてくれ」

二人を真選組に置くことは土方も考えていた。二人は異世界から来てまだ何もわからない子供だし、近くに置いた方が何かと都合がいいだろう。どこかに行ってしまわないように監視もしやすい。

「それしかねぇか。隊長格にはともかく、隊士にはどう説明する?」
「そうだなぁ・・・」
「新入隊士ってことにしたらいいじゃないですかィ」

沖田が欠伸をしながら言い、その発言により部屋の全員が沖田を見た。

「どうせ一ヶ月は確実にいるなら、変な噂が立つようなことはしないで純粋に新入隊士ってことにしやしょうや。とっつぁんの質問の内容から察するに、異世界の住人さんはこのガキ共の知り合いの可能性が高いし、巡回の時に隊士として一緒に連れて行けば他の連中も捜せますぜ?」
「なるほど。それはいい案だな!」
「だがお前らはそれでいいのか?」

土方は二人を見て言うが、山本はすぐに笑顔で肯定した。

「おう!何もしないでいるよりもそっちのほうがいいのな!」
「なっ、山本!何言ってやがる!こいつらが信用できるかまだわかんねぇ・・・」
「獄寺」

山本は獄寺の言葉を遮って、少し困った顔で言う。

「もう気づいてるだろ?お前が気づかないわけないものな」
「・・・・・あぁ」
「一緒にいたツナがここにいない」
「俺とお前が異世界に来ていて、十代目はこの世界に来ていない可能性は・・・低い」
「ツナが心配でイライラしてんのもわかるけどさ、大勢で捜した方が早いだろう?一緒に探してくれるって言ってくれているんだから、そうしようぜ?」
「・・・・・・」

会話の内容から察するに、どうやら一緒にいた一人がここにいないらしい。それも二人の様子を見ると、特に獄寺にとっては大切な人のようだ。

「えっと、その、一緒にいた『ツナ』という子も来ているかもしれないのだね?二人の友達かい?」
「はい。一緒に帰っている途中だったんス。俺らが来ているんで、たぶんツナも」
「なるほど。なら、その子を重点的に探そう」
「本当か!」
「ああ、もちろんだ。他の人物を探す手掛かりがないのもあるが、何よりも君たちの大切な友人だ。早く見つけてあげたいしな!」

近藤の言葉に山本はうれしくて笑顔になり、勢いよく頭を下げた。

「ありがとうございます!」
「・・・・・見つけたら・・・・」
「獄寺?どうした?」
「見つけたら!・・・・・その時、礼は言う。俺も・・・お前らと一緒に探すからな」
「あぁ!頑張って見つけようではないか、獄寺君!」
「あっ、触んなゴリラ!」

素直にならない獄寺の頭を、近藤はまるでよくできた子供を褒めるように撫でているが嫌がられている。
山本はそれを見て笑っているし、沖田は眠そうにまた欠伸をしている。
そして、土方は考えていた。

(とっつぁんはなにを隠している?)

ボンゴレは子供達の遊びの組織の名だった(土方はそう思っている)。どうしてそのような物を知っている?その理由を自分たちに教えない理由は?

しかし今考えても材料が少なすぎるという結論に達し、土方は疲れたため息をついて二人をどの隊に入れるかを考え始めた。



部屋は夕日でオレンジ色に染まり始めていた。







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