第六章 序章     107/115
 




――――それは遠い記憶。



『銀時も小太郎もいい奴だな』

『……けっ』

『そんな顔するな。晋助もいい奴だ』

『知るか!よく本人にそんな恥ずかしい台詞が言えるな!』

『お前も言える様になるかもしれないぞ?』

『絶対なんねぇよ!』

『分からないぞ?大人になったら、銀時と小太郎にお前等は一番の友だと言うかもしれない』

『じじいになってもアイツ等に言うことはねぇ!』

『……お前達が、ずっと一緒にいたら楽しいだろうに』

『……ずっと一緒だとか、無理に決まってんだろ』

『夢がないなぁ』

『アンタには常識がないよな』

『俺は近代稀に見る常識人だぞ』

『どの口が言うんだか』

『お前達は、大人になっても関係が続くよ』

『……何だよ。まるで見てきたかのような言い方だな』

『勘さ』

『……』

『でも、変わっていく。流れ行く、時の中で。関係ってのはそんなものだ』

『そりゃ、そうだろ……』

『それでも、変わらないものもあると信じたいんだ』

『変わらないもの……』

『変化も、不変も望むのは贅沢なのかな』

『知らねぇよ』

『俺は、意志は受け継がれると信じている』

『アンタ、何言ってんだよ……』

『信じたい。信じたいんだ』

『ジョット……?』

『晋助。俺は問おう』

『何をだよ』

『今じゃないさ。未来で。お前に問おう』

『だから、何を。どうやって』

『分かるさ。未来で』

『意味……分かんねぇぞ』

『今はそれで良い。約束だ。何時か訪れる未来で、お前に問う。お前は、それに答えてくれ』

『答える…それだけでいいのか?』

『ああ。俺はそれを望む』

『……分かった。約束だ』

『約束だ』




交わした約束。アイツとした、ただ一度だけの指切り。
それが、アイツと交わした最後の言葉だった。



次の日、アイツは別れも告げずに旅立った。





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