第一章 第六話     7/115
 


「来るやつは複数。ただもんじゃねぇ。少なくとも一般人とはいえねぇやつだ。歳、年齢、性別、人数は不明。ただし・・・」
「ただし?」
「怪しいと思ったやつに今から言う質問をしろ。それで普通とは違う反応をしたやつが当たりだ」

松平はそう言ってその質問を口にした。





「まぁ、謎だらけだがなんとかなるさ」
「謎しかねぇよ」

土方が運転し、助手席に近藤が座る形でパトカーは屯所に向かい走っている。

「近藤さん。今回のとっつぁんはおかしい」
「・・・だよなぁ。俺にもわかるおかしさだ」
「複数来るとはわかっている。一般人じゃないともわかっている。ここまではその前回使われたっていう記録からの結果だとして、それをほかのやつに知らせるなっていうのはおかしいぜ。極めつけはしろっていう質問の内容だ。・・・何か隠してるとしか思えねぇ」
「とっつぁんにもなにか考えがあるんだろうが・・・わからんなぁ。質問内容も、その異世界の人物に何の関係があるのか推測するには、ちとむずい」
「・・・どう捜せってんだ」
「ほかの幕臣にばれんようにって事だから大人数で捜索もできん。内容も内容だしな・・・隊士の何人が信じるか。俺もあんま信じてないしなぁ」
「・・・めんどくせぇ」

土方は心底嫌そうな顔をする。
このまま聞かなかったふりをしようかという考えが一瞬頭を過ぎったが、あの破壊神のことだ。捜索をしていなかったということがばれたら切腹間違いない。いや、頭を銃でぶち抜かれて終わる可能性のほうが高いか?
結論。どちらも勘弁したい。

「ひとまず隊長格には知らせて様子見だ。下手に隊士に言っても絶対信じねぇだろ」

俺も信じてねぇ、という言葉も土方は吐いて屯所に到着した。





屯所に着いたら何だかいやに騒がしい。
何人かの怒鳴り声が聞こえる。一人は二番隊隊長の永倉だろうが、言い争っているほうの声に聞き覚えがない。
声からしてガキだが、補導してきたやつとでも言い争っているのか?

そんなことを考えながら近藤と一緒に車を下りる。
真選組には短気のやつが多いので、屯所に補導したガキと言い争いになることも珍しくない。だが、今回はそれが激しいのだろうか。いやに大きな声だ。

「永倉、またやってるなぁ」
「あいつの短気はもう直んねぇだろうな」
「たしか出てくるときは総悟と二人でババ抜きしていたぞ」
「・・・二人でババ抜きって、おもしろいのか?」

帰ってきた二人に気が付いた隊士が一人駆けてくる。その顔にははっきりと焦りが出ている。

「局長ォォォォォ!副長ォォォォォ!!大変です!」
「どうした。この喧嘩か?いやに元気なガキ補導したなぁ」
「いえ、これは補導したのではなく!」

隊士が今でも信じられないという声で言った。

「変な子どもが二人突然現れたんです!!!」





報告に来た隊士曰く。

総悟と永倉が二人でババ抜きをやっていた。
残った手札は二人合わせて三枚。つまりあと一回、ババでない方の札を引いたら勝ちというものだ。しかしどちらもババばかりを引き、絶妙な心理戦で決着が着かない。そんな長いババ抜きをおもしろがってギャラリーも増え始めた頃、それは起こった。

「おわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

総悟と永倉の間に子どもが二人落ちてきたという。

「・・・んなばかな」

土方はそう切り捨てた。
土方と近藤は呼びに来た隊士と一緒にその騒動に向かって駆け足で向かいながら状況を聞いている。
しかし内容は突拍子もない事だった。

「本当です!自分もその場にいました!突然空気中から子どもが二人現れて隊長達の間に落ちて、その二人もなんか状況がわかってないらしくて、隊士が一回身柄を拘束しようとしたら子どもの一人に殴り飛ばされて気絶するし永倉隊長それ見てキレるし子ども達は変なこと言うし!」
「落ち着け。変なこと?」
「ここは江戸だっていうと『江戸はもう滅んだ』って言っているんです!真選組も知らないらしいし、なんか話しが噛み合わなくて・・・」
「・・・・・何だと?」

土方は近藤と目を合わせた。
二人の頭に過ぎるは松平との会話。まだ確証はないがもしや・・・。


ズドォォォォォン!!


しかし二人の思考は一つの爆発音により中断された。

「なっ!まさかあの子ども達が!!」
「いや、この音は総悟のバズーカの音だ」
「あの馬鹿・・・今月に入って三度目だぞ・・・」

急ぐぞ。そう言って土方は速度を速めた。




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