無色アサリ 昔話しちゃった     3/5
 


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池袋にある、ロシア人が営業するとある寿司屋。というか露西亜寿司。
其処で二人の男が寿司をたべていた。

一人はサングラスを外して机に置いている、金髪のバーテン服の男。もう一人は茶髪で、スーツ姿だが、上着を脱いでネクタイを取り、第一ボタンも開けて随分リラックスしている男。

茶髪の男が板前のロシア人に話し掛ける。

「貴方は俺の親友です」

その言葉にすかさずツッコンだのは、金髪のバーテン服の男だった。

「何言ってんだ沢田」
「平和島。俺はこんなうまい寿司を食ったのは中学の時の親友の店以来だよ」
「アンタ露西亜寿司来たの初めてだろうが」
「うん」
「ならなんで親友なんて言葉が出てくる」
「俺を嬉しい気持ちにさせてくれる人は友達。とても嬉しい気持ちにさせてくれる人は親友と呼んでもいいと思うんだがどうだろう」
「知るか。少なくとも初対面で親友って言われたら困るだろうが」
「そうか。今度から心のなかで思うことにする」
「…アンタ相変わらずだな」

バーテン服の男――平和島静雄は呆れた様に言い、イカを口に運ぶ。
そして美味しそうに次々と寿司を食べていく茶髪の男――沢田綱吉はそれに笑顔で返す。

「日本の寿司を食べるのは二年ぶりだ。やっぱり本場はいいなぁ」
「何だ、何処か行ってたのか?」
「え?あ、その……暫くイタリアに行ってたんだ」
「イタリア!?あんたただの教師だろ!?何でまたイタリアに?」
「大人には色々あんだよ」
「俺だってもうガキじゃねぇよ」
「そうなんだよなぁ。もう酒飲めんだよなぁ」

染々と綱吉は言う。その仕草を見て、静雄は顔をひきつらせる。

「年寄りみたいな事言うなよ」
「三十路過ぎると時間の流れが速くて。まだ若い気でいるんだけど…」
「……見た目はまだまだ若ェよ」
「あははは。よく言われる」

綱吉は板前に寿司をさらに追加するように注文する。
まだ食うか。これで追加は二回目だ。静雄はよく食うなぁとそれを眺めていた。

「高校の時のみんなは元気か?」
「門田は池袋でたまに見掛けるな」
「門田!懐かしいなぁ。よくお前の喧嘩に混ざってたな。今度探してみようかな」
「あと、新羅は闇医者になってる」
「岸谷は闇医者か…予想は出来てたけど、やっぱそっち方面なのか…大丈夫そうか?」
「セルティがいるし、無茶はしないだろ」
「セルティ?女の子か?」
「良い奴だぞ。いつも黒いバイクに乗ってる」

静雄はそう言い、お茶を啜る。
綱吉は懐かしき元教え子の話が楽しいのか、積極的に話を聞いている。

そして、かつての教師として、自然な流れで、他意などなく、静雄の地雷を踏んだ。



「折原は?」



ピシッ



静雄の持っている茶碗に、ヒビが入る。勿論、自然に入ったのではない。静雄が力を込めたのだ。

「オーウ、静雄、イケないヨ」

そんな静雄に最初に声を掛けたのは、露西亜寿司の店員、サイモンだった。

「それ店の茶碗。壊すダメ。イライラするもダメ。カルシウム取るとイイよ。魚食べる。寿司食べる。店長ォ、静雄に寿司追加ネ」
「勝手に注文してんじゃねぇよ、サイモン」

静雄の額に青筋が浮かぶ。これはいけない。店内で暴れられたら大変だ。

「いいよ。俺が食うし」
「…アンタ、そんなに大食だったか?」
「美味いモンは結構入るんだ」

そう言って綱吉はひょいと口に寿司を運ぶ。

「それにしても……」

綱吉は口に入れた寿司を飲み込んでから話す。

「相も変わらず仲が悪いままなんだな、お前等」
「一生変わらねぇよ」
「だろうな」

綱吉はお茶を啜る。

「で?折原は今何やってんだ?」
「あ?何かあのノミ虫は情報屋やってる」
「情報屋…ね。なるほど…」

綱吉は何か深く考え込んでいる様で、此処に来て随分と久しぶりに箸が止まった。

「……沢田?」
「いや…折原らしい、仕事だな」

そう言って綱吉はふっ、と小さく笑った。

「いやぁ、お前の折原への呼び方も変わらず『ノミ虫』か。酷いままだな」
「アイツはノミ虫で十分だ。間違っても会おうとか思うなよ」
「んー…会いたいけど俺折原に嫌われてるんだよね」
「……そうなのか?」
「嫌われてるっていうか…苦手意識持たれてたっぽい。今だから言えるけどな」
「……アンタ、よく見てたんだな」
「担任でしたから」

そう言って、綱吉は笑う。

「そうだ、もう二十歳過ぎてんだから、酒飲もう」
「いきなりだな」
「再会祝いだよ。此処は俺の奢りだ」

酒を注文し、綱吉は言う。



「可愛い元教え子に、格好いいとこ見せないとな」



自分で言うな、と思ったが、沢田らしい言い方だ、とも思った。
平和島静雄は、楽しそうに目を細めた。







**********

DRRRとの混合の続編です。

情報屋の彼を出そうか迷いましたが、たぶん長くなるので彼は名前だけに。

静ちゃんは書きやすいなぁ。彼は好きです。情報屋も好きですが。

希望が多かった続編です。びくびくとしています。
期待に応えられたかな?

希望があったらまた続くかも?……とか言ってみたりね!



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