白色アサリ 彼女は年頃の女の子     3/5
 




「天秤座で今、オレンジジュースをコップに注いでいる茶髪のそこの貴方!」

結野アナのブラック星座占い。
結野アナウンサーによって行われている、毎朝恒例の星座占いだ。
彼女独特のキャラクターが目立つこの星座占い。賛否両論だが、他ではまず見られない占い結果、その高い的中率により、他の一般的な星座占いとはまた違うファンがいる。忙しくても彼女の天気予報と星座占いは毎朝チェックする人は決して少なくない。
沢田診療所の自称助手見習い、正確にはただのお手伝いである三浦ハルもその一人である。

「はひっ!」

ハルの誕生日は五月三日であり、牡牛座だ。
自分の星座である牡牛座は勿論気になる。一位だったら嬉しいし、最下位だったらラッキーカラーの服を探す事もある。
しかし、彼女には自分の星座よりも気になる星座がある。

「つ、ツナさん!」

自分の手伝っている診療所の医者である沢田綱吉。彼は十月十四日生まれの天秤座である。
ハルは自分の星座である牡牛座と、綱吉の星座である天秤座を毎朝確認していた。
出来るだけラッキーカラーを彼の為に用意する。天秤座が最下位の場合は、ラッキーカラー探しは朝の最重要事項である。
その理由は一つ。自分と綱吉の平穏な一日の為だ。

結野アナは、たまにこの様なピンポイントの人物を指摘する。今まで知り合いでその指摘をされた人はいないが、噂は入ってくる。その人は銃を向けられたり車が爆発したり、相当酷い目に合ったという。
昨日もこのピンポイント指摘をしていた。僧の格好で腰に刀を差している黒髪長髪の蟹座、だったと思う。ラッキーカラーは赤。全身血だらけになって死体の様になりましょう。どこがラッキーカラーだ、と自分には関係ないながらにツッコミをした。

本日最下位の天秤座である綱吉の最近のマイブームはオレンジジュース。今、まさにそれを注いでいる可能性は高い。
マズイ。大変危険だ。これは聞き逃す訳にはいかない。

「今日の行動が、近いうちに貴方を面倒事に巻き込むでしょう!特に水難の相が出ているので、川や湖、海等に行くと悪化しまーす!」

これはいけない。普通に過ごしていても面倒事はやって来るのに、悪化するとは。今日は彼に外出の道順を変えてもらうように言おう。

「ラッキーカラーは白!真っ赤な血がよく映えますよ!」

「どこがラッキーカラーですか!?」

デンジャラスです……。
呟いて、朝御飯のパンの最後の一口を口に入れて外出の用意をする。
ああ、今日も平和な日常であります様に。





診療所に行ったら、綱吉が血だらけの男を治療していた。

「あ、ハル。お早う、今日は早いね」

綱吉はベッドで寝ている男から向き直り、バッグを落としたまま固まっているハルを見る。彼はどうやら包帯を代えていたらしい。

「つ、ツナさん……その方は?」
「ん?拾った」
「何時、何処で?」
「昨日……もう今日だったか。急患で連絡が来て、その帰りに。川で」

あ、急患の人は別に大したことなかったよ、と綱吉はハルの心配とはずれた事を言う。

「刀傷、だと思うんだけどね。最近噂になってる辻斬りにヤられたのかな。この人が其処らのザコに負けるとは思わないんだけど」

星座占いの結果とは、何時から何時までの事か。今日の占いだとしても、見る前の真夜中の事は入ってしまうのだろうか。是非とも結野アナに問いたい。

「ツナさん」
「ん?どうした?」

ハルは綱吉の肩を掴んだ。

「今日は、ずっと、白衣を着ていて下さい!」
「え、何で」
「うわぁぁぁぁぁん!ツナさんのバカ!お人好し!」

そんな所も大好きですけどね!
そんな大胆な事を言う勇気などあるはずがなく、ハルは病室を飛び出した。綱吉がハルの為に置いてくれている仕事着に着替えなければ、手伝う事も出来ない。
ハルは愛に正直なのだ。

「さて……」

綱吉は助けた男を呆れた様に見た。

「どうしたものかね、桂さん」





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見付けたのは偶然。
治療したのは必然。



20130127



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