灰色アサリ 夕日の病室で     1/3
 


*短編から移動

*超シリアス注意!!
 死ネタではないつもり…。










「俺、コムイさんに感謝してるんです」

天井も、床も、家具のほとんども白で統一されている部屋。色を持っているのは、窓辺に飾られている赤い花と、そこから見える景色だけ。
其処は病室だ。

「生んでくれた母さんよりも、生きているうちはずっと背中を追い掛けていた父さんよりも、感謝してるかも」

ベッドで長い間眠っていた青年は、今は目覚めて、横になりながら話す。

「うん。コムイさんは父さんみたいな感じだったかもしれない。……歳を考えると、兄さんかな?ははっ、じゃぁ俺はリナリーと兄妹か!」

青年はそう言って笑う。楽しそうに。嬉しそうに。
顔色は悪いけれど。幸せそうに。

「俺、一人っ子だから、兄妹って新鮮ですね」

部屋には青年と、白い帽子を被った男――コムイしかいない。
コムイが来るまでいた医者や看護士は、人払いのために下がらせた。部屋の中にも外にも誰もいない。
青年がこの会話をしている相手はコムイだけで、青年の言葉を聞いている相手はコムイだけだ。

「リーバー班長にも、ジュリーさんにも、婦長にも感謝してるけど、やっぱり一番はコムイさんですね」
「それは……」

コムイは漸く口を開く。やっと、口を開くことが出来た。

「光栄……かな。ツナ君」

青年は−−ツナは笑う。名を呼ばれたのが嬉しそうに。コムイが口を開いてくれたのが嬉しそうに。

「そうですよ。だから、もっと嬉しそうにしてください」

そう言ってツナは起き上がろうとする。コムイはそのまま彼に横になっている様に言うが、ツナは大丈夫ですよ、と言い、身を起こす。
起き上がったツナに、コムイは身体を冷やさない様にとカーディガンを掛ける。それにツナは礼を言う。

「……」
「……」

二人の間に沈黙が落ちる。ツナもコムイも、一言も発しない。外では小鳥が鳴いていた。恐らく森に住む野鳥だろう。
戦争中でも、それは平和そうに鳴いていた。

「ツナ「コムイさん」」

ツナはコムイの言葉を遮って口を開く。

「俺が不幸だと思いますか?」

はっきりと。滑舌良く。それ以外には聞き違えないように。
ツナはコムイに訊いた。

「ッ……!!」

コムイは言葉を詰まらせた。顔を下に向ける。ツナの顔を見ることが出来なかった。
答えることも出来なかった。

「もし、そう思っているなら、コムイさん」

コムイが顔を上げなくとも、答えなくともツナは淡々と言う。

「巫山戯ないで下さい」

それには僅かながらに怒気も含まれていた。

「本当に、冗談じゃない。もう一度言います。巫山戯ないで下さい。俺の不幸幸福を何勝手に決めてるんですか」

コムイは、ゆっくりと顔を上げた。

「コムイさん」

ツナはコムイを見ていた。琥珀の瞳で。真っ直ぐと。
悲しげに微笑みながら。

「俺はずっと死にたかったんです」

ツナの微笑みは消えなかった。

「街がAKUMAに滅ぼされた時も。教団に一人で連れられたときも。師匠の元で訓練しているときも。AKUMAと戦っている時も。リナリーと話している時は…そんなことは考えてなかったかもしれないけど…」

ツナは思い出しながらの様に言う。

「生き残るために戦っているのに、心の中ではずっと死にたかった」

ツナは言う。コムイを真っ直ぐと見ながら。コムイも目を反らさなかった。



「死にたかった」



過去形だ。



「だけど」



ツナは笑みを深くした。幸せそうに。



「今は生きたい」



――現在形だ。



コムイは膝の上に置いている拳をぎゅっと握りしめる。血が滲むが、構わなかった。

「ツナ君……ごめん…!」
「何で謝るんですか。俺が生きたいと思える様になった切っ掛けを作ったのは、間違いなくコムイさんです。俺がお礼を言いたいのに」

コムイさん。
そう言ってツナは血が滲んでいるコムイの手を取る。

「ありがとうございます」

優しくコムイの手を握る。彼の手は冷たくなっていた。

「生きたいと思える俺は、幸せです」

涙だけは見せまいと。自分には、『室長』には泣く資格などないと。
コムイは小さな手を握り替えした。










ツナの身体は限界だと言われた日の。



夕刻の事だった。



空は、何処までも澄み渡っていた。










**********

疲れていて書いた設定その二。

やっば。予想よりもシリアスになった。夜のテンションやばい。

設定的には寄生型エクソシストのツナです。
もし長編になったらずっと後半に位置するだろう場面。

他にもノアだったり科学班だったり医療班だったりを妄想しているけど、一番妄想しているのはエクソシストのツナかな。原作に絡めやすいからね。

いつか長編に仲間入りするかも…。そうなったら一番のシリアス長編になるぞ…。

感想だったり質問だったり連載するなら出して欲しい設定だったりを送ったらいいんじゃないかな!(←願望。切実な願望)



前へ 次へ

戻る

 
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -