無色アサリ 有名になっちゃてた     4/5
 


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一本隣の道で、自販機が宙を舞うのが見えた。
ああ、懐かしい。彼奴等が高校生時代の時も、よく自販機やら標識やらが飛んでいた。
とすると、あそこにいるのは知り合いの二人組――組とは言えないか。ワンセットにされたら嫌そうにするだろう。兎も角二人に違いない。

「ホント…懐かしいなぁ」

約五年ぶりだろうか。

沢田綱吉は懐から水風船を取り出した。





「彼奴等…またやってるのか…」

門田京平はワゴンに背中を預けながら呟いた。
車の中では狩沢とウォーカーが某青い店の戦利品を広げており、渡草は車の整備中だ。手持ちぶさで缶コーヒーを啜っていたのだが、視線の先に飛んでいる自販機が見えた。

「はぁ……」

止めに行くかどうか。答えは否、だ。自分には二人の内の一人――平和島静雄を止めることは出来ない。周りの人間には悪い気もするが、精々逃げてくれ。
そう思って缶コーヒーをまた啜る。そうしていると、声を掛けられた。

「あれ?門田?」

声の方を見れば、其処には茶髪の男。門田は目を見開いて驚いた。
大体五年ぶりくらいになるだろうか。高校時代の、ある意味有名人。何て言ったって静雄の喧嘩を止められる人物だからだ。全く見た目が変わっていないので、すぐに分かった。

「沢田か?久しぶりだな」
「本当だよ。偶然だねぇ。池袋にいるのは聞いていたから、いつか会いたいと思っていたんだぁ」

沢田はにこにこと笑顔で近付いてくる。

「元気か?」
「ぼちぼちだな」

外で話しているのが聞こえたのだろう。狩沢とウォーカーが車の中から顔を出す。

「どうしたんすかぁ、門田さん。知り合いッスか?」

ウォーカーは訪ねる。沢田は彼等に人が良い笑顔を向け、軽く会釈する。

「高校時代の先生だ」
「どうも、沢田綱吉です」
「沢田――」
「――綱吉」

狩沢とウォーカーは目を見開いた。それは俺と同じ反応だったが、どうして驚くのだろうか。彼等は初対面のはずなのに。

「《あの》沢田綱吉ッスか!?」
「どの沢田綱吉だ?」

ウォーカーが声を上げる。狩沢に至っては、沢田に握手まで求めている。

「門田さん知らないんすか!?沢田綱吉って言ったら、一昔前の有名人ですよ!」

ウォーカーは嬉々としてして語り出す。

「十数年前の池袋。そこに現れた男達。彼等は荒れていた街の不良達を片っ端から片付け、更正させていった。その現れた男達の中には恐怖の風紀委員長や、今は有名な野球選手となった人物や、世界的ピアニストとなった者もいるという。その中心人物となっていた者の名が沢田綱吉。彼等は嵐の様に現れ、風の様に去っていった」

ウォーカーは詩人の様にすらすらと言葉を紡いでいった。そこには彼には一般人相手には珍しい、尊敬の念さえ感じられる。

「詳しいな」
「知り合いの年上に、当時不良に絡まれていた人がいて。グッズを取り戻して貰ったらしいんです。格好良かったみたいで、その人は今も沢田綱吉のファンっすよ?」

他にもオタクを助けてくれた話もあるし、伝説です。
ウォーカーは腕を組み、何度も頷く。

「教師になったって噂も、イタリアに渡ったって噂もあったんですけど、門田さんの先生だったんすね」
「俺のってより、静雄のだな」
「いやぁ、イタリアにも行っていたんだよ?」

狩沢と握手をしている沢田が口を開く。

「この間こっちに戻ってきてね、来良学園の教師として」
「そうなのか?」
「うん。この間久しぶりに平和島にも会っちゃってさぁ。懐かしかった」

狩沢は、今度はサインを貰おうとしているのか、何かないかとバックを漁っている。

「……で、沢田」
「ん?」
「その水風船はなんだ?」

まぁ、訊かなくとも分かっているが。思い出されるのは、高校時代。

「平和島と折原の喧嘩を止めに」
「……彼奴等、もうお前の生徒じゃないんだから、ほっといても良いんじゃないか?」
「それもそうだけど、久しぶりに折原にも会いたいし。周りにも迷惑だろ?」

それじゃ、またな。
沢田は手を振り、去っていった。狩沢はまだ何かないか探している。

「ホント…見た目だけじゃなくて中身も変わってないな」

門田はお人好しの後ろ姿を見送った。







**********

続き希望が多かった無色アサリでした。

本当は臨也との再開場面もある予定だったのですが、長くなるのでカット!いつか書けたらいいですね。

伝説の彼等は登場するかな?マフィアになっていない彼等は、どんな感じなんでしょう。

以上、門田ぁぁぁぁぁ!(原作十巻の彼へ)




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