よく知らない物よりも
警察である真選組の屯所に遊びに行くという非常識に慣れてきた今日この頃。
今日は銀時と新八は依頼があるので欠席だが、それでも綱吉、神楽はいつも通り真選組を訪れていた。
沖田の自室で、山崎が持ってきてくれた人数分のお茶とお菓子を食べながらの近況報告と言う名の談笑。戦いも危険性もないそれは心休まるものだ。
「このリングがねィ……」
雑談の内容はいつも違う。最近の出来事だったり、綱吉達の世界の話だったり、守護者の話だったり。
今日はどういう流れでそうなったかは分からないが、綱吉達が填めているボンゴレリングの話になった。
沖田は綱吉からちょいと指輪を見せて欲しいと言われ、断る理由もないので渡した。勿論、填めない様に言うのを忘れない。
「間違っても填めないで下さいよ」
「填めねぇよ。流石に俺みたいな美少年が目や耳から血を流すのは絵的によろしくねぇだろィ」
「自分で美少年って言ってンじゃねェ」
「いっそ填めて地獄に堕ちるアル」
沖田は綱吉のボンゴレリングを見て、山本や獄寺が持っているボンゴレリングと見比べている。
「何かこれだけ山本や獄寺と形が違くねェか?」
「十代目は特別なんだ!」
獄寺が何故か誇らしげに答えるが、訊いた沖田はノーリアクションで再び大空のボンゴレリングを見る。
「これ、壊れたらどうなんでィ」
「壊さないで下さい!」
「壊すな!」
「沖田さん、それは勘弁なのな」
「ツナの物を壊したら私がお前を壊すアル」
一斉に言われても、それは流石沖田。顔色一つ変えず懐を探り出した。
「今トンカチ持ってるぜィ」
「何でトンカチなんて持ってるんですか!」
「バズーカも常備してるぜィ」
綱吉は大慌てで沖田の手からボンゴレリングを取り戻す。興味本位で壊されたら堪った物ではない。
「どうにかしてそれを土方さんに填めさせられねぇかな」
「ボンゴレリングを暗殺に使わないで下さい!」
「てめぇ、ボンゴレの至宝を何だと思ってるんだ!」
沖田のボンゴレリングへの扱いに、そろそろ獄寺が本気でキレそうである。
この談笑は、時として喧嘩に発展するのが玉に瑕である。特に獄寺と神楽は気が短い方なので喧嘩腰になることが多い。その場合綱吉が本格的な喧嘩になる前に止めるのが常なのだ。
「最近じゃ土方さん、バズーカくらいじゃ驚かないからな。変化球で攻めてみるんでさァ」
「だったら彼奴のマヨネーズでも隠してろ!」
「それはもうやったぜィ」
沖田は自分のお茶を啜り、つまらなそうに溜め息をついた。
「何でィ。お前の案はその程度なのかィ?」
「んだと!なら屯所にある自販機の煙草を、全部なくしてみるのはどうだ!」
「それくらいならコンビニに山崎をパシらせれば良いだけでさァ」
「座布団の下にブーブークッション置くアル」
「ガキの悪戯かよ」
それからは、どうやったら土方に一泡吹かせられるかに話が変わっていた。乗り気ではない綱吉と山本は苦笑するしかない。
「何かさ」
「どうしたの、山本」
山本は三人から目を離さずに言う。聞いているのは綱吉だけだった。
「一応このリング凄い奴だけど」
「うん」
「よく知らないこれよりも、やっぱみんなでこうやって悪巧みする方が楽しいのな」
綱吉も山本の隣で三人を見た。どうやら土方にどうやってマヨネーズと見せかけてカラシを食べさせるかの作戦を立てているらしい。
「……うん。そうだね」
綱吉は小さく頷いた。綱吉の言葉に、山本は笑顔を深くする。
「おい。そっちの二人も何か案出しやがれ」
「ツナ。此奴よりも凄い案出すネ」
綱吉と山本も、その輪に加わった。
今日は真選組に遊びに行った。
今度行く時は大量のカラシを持っていく事になった。今の内に言っておこう。土方さん、ごめんなさい。
友達と悪戯を考えるのは初めてなので、少し緊張している。土方さんに悪い様な、成功して欲しい様な。どちらにせよ怒られて謝ることになるんだろうけど。
ちょっとだけ、次に行く時が楽しみ。
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『ツナ達が真選組にボンゴレリングの説明をする』
『山本と獄寺くんを出して下さい!』
以上二つのリクエストでした。
どんなに凄いものでも、沖田達にとってはボンゴレリングはただの指輪。
これが銀時や高杉ならまた違うんでしょうが。ジョットのだったからね。
リクエストありがとうございます!
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