それは、綱吉が万事屋に来て一週間ほど経った日の事だった。
「綱吉君の日用品を買いに行きましょう」
朝食を食べている最中の新八の言葉に、皆が顔を向ける。
「日用品…ですか?」
「うん。今までは獄寺君と山本君の捜索でドタバタしてたから後にしてたけど、自分の歯ブラシとか食器や箸とか、ないと不便でしょう」
「あー、そういやそうだな」
新八の考えに銀時も同意する。
今の綱吉は所謂お客様用のお椀や箸を使っている。因みに、それを綱吉以前に使ったのは銀時のストーカーらしい。何でも、屋根を突き破って銀時の寝室に侵入したとか。過激な侵入な仕方だ。
「何時帰れるか分からないんだし、買っといた方が良いか」
「この間猫探しで入ったお金がまだ余ってるし、金銭面でも余裕ありますからね」
「でも、良いんでしょうか…俺、居候みたいなものなのに」
綱吉は申し訳なさそうに言う。
出会って、まだ一週間ばかりの人に日用品を買ってもらうと言う行為が、申し訳ない気がしたのだ。
「別に人一人の日用品なんて何万もするわけじゃねぇだろうが」
「銀ちゃん!私も新しいお椀欲しいアル!この倍はあるお椀にご飯いっぱい盛るネ!そしていっぱいのご飯ですよを乗せるアル!」
「コイツを見ろ。自分の本能に忠実に生きてるだろうが。少しは見習え」
「銀ちゃん!私も新しいお椀!」
「御代わり三杯目を盛りながら言うな山盛りにするな炊飯器ごと食おうとするな昼飯分が無くなるだろうが!」
銀時はだんだんと声を大きくしながら言い、最後に炊飯器を抱えている神楽の頭を叩いた。
「神楽の戯言は置いといて…そんな訳で、日用品は必要だし、そんな気になるならヅラからたかるって手もあるし、問題ねぇ」
ヅラと言うのがこの世界に来た初日に会った桂だと言うことに気付くのに綱吉は数秒掛かった。
此処まで言ってくれているのだから、これ以上拒否するのは逆に失礼だろう。
「えっと…それじゃ、お言葉に甘えて、お願いします」
神楽は炊飯器を抱えながらも「二倍お椀…」と言い続けた。
「ツナ!お椀はコレで決まりネ!」
デパートの食器売り場に来て僅か二分。神楽は一つのお椀を持って言った。
神楽が持つその水色のお椀には、オレンジ色で『27』と書かれている。
「もうこれはツナのためにあるとしか思えないお椀ネ!」
「ホントだな…神楽、よくこんなの見つけたな」
「女の勘ネ!」
万事屋の食器棚に、新しいお椀が加わった日だった。
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