復活×馬鹿騒ぎ

「自由の国。それは禁酒法を撤回してから言うべきだと思っていたが、国は巨大だな」

スーツを着こなした金髪のイタリア人は一人、その国にやって来た。

「思想、階級、人種……様々なモノが入り混じる、混沌の国」

アメリカにやってきたその男は、イタリアのマフィアのボスだ。
最初は自警団として始まった、一つの小さな組織だった。それからイタリアでも屈指のマフィアになるまでの道は、語ると長くなる。
男は後悔していなかった。組織を結成しなければ負わなかった傷は数多くあっただろう。知らずに済んだ闇も数え切れぬ程にあっただろう。失うモノも多くあった。
しかし、護れたモノがあった。
後悔はしていない。少なくとも、今、後悔している事は――。

「此処、どこだろう」

道案内を出来る者を連れて来なかった事だ。

「まぁ、歩いていれば良いか」

後の世で伝説とさえ言われるボンゴレT世・ジョット。
彼は初めて訪れた土地で普通に道に迷っていた。



*****



「アイザック!財布の中にお金がもう入ってないよ!」
「何だって、ミリア!それは大変だ!」
「財布の中に何もないと軽いね!」
「おうとも!そう言えば、財布の中に蛇の抜け殻を入れておけば金運が上がるって言うな!」
「蛇だね!毒蛇だね!」
「毒蛇ってのは何処にいるんだ?普通はニューヨークじゃ手に入るもんじゃないよな?」
「闇市だね!裏道だね!」
「裏道……裏道に毒蛇がいるのか?それは大変だ!フィーロ達にも教えてやらないと
!」
「噛まれちゃう前に、教えてあげないと!」

アイザックとミリアのアメリカ人のカップルは、変わらない。
彼等には二人の世界がある。きっとどんな世界なのか、彼等にしか分からないだろう。しかし、ここで凄いのは彼等の世界が彼等で完結していない事だ。彼等と、彼等の周りにいる人間や元人間。それらを巻き込んで彼等の世界は回りに回って良い方向へと動いている。だからだろう。彼等を知る者は、彼等が変な奴等だと思いながらも酒を飲み合うのだ。

「おい、其処の変人共」

もっとも、彼等をよく知らない者からはただの目立つ変人なのだが。

「うっせえ声でうっせえ意味分からねぇ事ほざきやがって。良い気分が台無しじゃなねぇか」

もしも此処に青い作業着を着たペンチを持つ青年の舎弟がいたら、デジャヴを覚えていただろう。1932年の夏、あの人に同じ様な絡み方をした男がいたなぁ、と。もっともその男を解体した作業着の青年は、そんな男がいた事を全く覚えていないだろうが。

「賠償金として金を出しやが……」
「賠償金!賠償金でお金持ちだな!」
「蛇を探さなくて済むね!一石二鳥だね!」
「おうよ!パーティーにはご馳走だよな!」
「一つの石でみんなハッピー!」
「んじゃ、フィーロの所で買って、そのままパーティーだ!」
「酒池肉林だね!」

彼等の世界は独特である。彼等は真剣でも、初めて見る者によっては呆気にとられたり、呆れ顔をしたり、馬鹿にされていると思ったり……まぁ、このカツアゲをしようとした男は三つ目の感想を抱いた。

「てめぇら、いい加減にし……」

このままカツアゲに合わず、無事にこの局面を乗り切る強運。それが彼等を彼等のままでいさせる理由の一つである。
そして、故意でも、無意識でも。アイザックとミリアを助ける者は不思議と多くいるのだ。

「すまないが、道を尋ねたい」

哀れなカツアゲ男の肩を叩いたのは、道に迷っている金髪のイタリア人だった。




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