雲が似合う男

この人の目の前に立つと、背筋が自然と伸びる。緊張して、唾を飲み込む。
初めて会った四年前。稽古でも戦闘準備をしたこの人の前に立ちたくはなかった。この人を推薦したと言う兄上を恨みさえした。俺には師匠はヴァン師匠だけで良いのに。
今にして思えば、四年前のこの人は戦闘準備すらしていない状態だったのだろう。本来自分が得意とする武器すら持たずに、一般的な木刀を手に持っているだけだった。

「ほら、どうしたんだい?早くかかってきなよ」

自分は実力を付けていっていると、自惚れでもなく分かる。それでもこの人に勝てるイメージを抱けたことはない。
一度、ガイとナタリアとパーティーを組んでこの人と模擬戦を行う訓練をした。前衛二人に、後衛一人。ナタリアはその時には慣れないながらもヒールを習得していた。それでも結果は思い出したくもない。
この人が木刀ではなく真剣、或いは愛用武器を持っていたら、何て可能性も考えたくない。その日から三人とも、暫くこの人を見るたびに震えが止まらなかった。

「来ないなら、時間の無駄だ」

この人の夜の様に真っ黒な鋭い眼は、何年経っても怖い。

「咬み殺すよ」

キムラスカ軍の大佐――クラール・アメティスティーノ。この人は、四年前からルークの二人目の武術指南役である。




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