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2.バラの花束贈っていいのは二次元の住人だけだからさ



「稲沢さん! 誕生日おめでとう!」

 ばさぁと真っ赤な薔薇の花が眼前に出現したことに女子生徒B子は目を真ん丸にして固まっていた。
 Aの奴、年の数の薔薇をプレゼントするんだ! と意気込んでいたけど、マジだったんだ……

 教室のど真ん中で行われたそれにクラスメイトからの視線が容赦なく突き刺さる。
 B子は青ざめて震えている。それは恐怖か、それとも嫌悪なのか。その目から涙がこぼれ落ちそうになっているではないか。

「こらぁ向井、卒業式でもなんでもないのに学校に花を持ってくるんじゃない」

 HRにやってきた担任は、教室で起きているちょっとした騒動に渋い表情を浮かべてAを注意していた。面倒臭そうなのがおもいっきり顔に滲み出ている。

「先生、これは僕の愛の証なんです!」
「学校の勉強に薔薇はいらんだろう。放課後に返してあげるから取りに来なさい」

 バッとAの手から花束を奪い、先生はそれを教卓の上に雑に置いた。

「乱暴に扱わないでください! 花はとてもデリケートなんですよ!!」
「席につきなさい」

 放課後に花を返却してもらったけど、結局B子が花を受けとることはなかった。
 Aは薔薇をドライフラワーにしてポプリにして渡そうとしていたが、さすがにそれは止めた。

 あのな、注意しなかった俺が悪かったけど、バラの花束贈っていいのは二次元の住人だけだからさ。
 日本人顔のお前がやると浮くし、正直気持ち悪いんだ。



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