マネージャーのあの子【嶋野瑞樹視点】
女子バスケ部に珍しくマネージャーが入部したという。
その子は中学まではバスケをしていたらしいが、高校ではマネージャーに転向したのだという。チームメイトが噂をする彼女は…小さかった。１５０あるか？ と思ったけど、本人曰く１５２あるそうだ。それでもバスケをするには低すぎた。
もしかしたら、背が低いからバスケを諦めたのだろうか。数ヶ月前の自分を思い出してなんとなく親近感が湧いた。
俺は中学でバスケをはじめた。ただ単純にカッコいいかな、モテるかなと思ってはじめたが、俺には悩みがあった。
悲しいかな、背が全く伸びなかったのだ。事実俺は高１の半ばまで１６２ｃｍで止まっていた。ここで俺の成長は打ち止めか…と凹んだことは腐るほどあった。ただでさえ周りにはバスケ部員らしく長身の野郎ばかりで、そいつらから身長の低さをからかわれることもあった。
当然ながらレギュラー入りなんて夢のまた夢。女の子に見向きもされず、バスケ部を退部するか否か悩んでいた俺の成長期は急に訪れた。
一気にブーストかけたのかってくらいぐわっと伸びはじめ、しばらくはその痛みで睡眠不足に襲われた。体が悲鳴を上げて病院に行くも、成長痛だと言われてオシマイだ。為す術もない。
高校２年に進級する頃には成長痛も落ち着きを取り戻し、俺の身長は１８０を超えた。伸び方が尋常じゃなく、その成長度合いに自分でも驚いたが、今までチビだと馬鹿にしてきた奴らと同じ目線になれてスカッとした。
その頃から周りの女子の俺を見る目が変わったのも気づいていたが、低身長時代のことがあったのでなんだかなぁと複雑な心境でいた。向けられる好意を見て見ぬ振りして、俺は以前と変わらずバスケに没頭する日々を送っていた。
そんな日々を送っていた俺の目に、未練を抱えた悲しそうな表情を浮かべた彼女が映ったのだ。部員全員が帰宅した、誰もいない体育館で彼女は慣れた手さばきでバスケットボールをドリブルすると、整ったフォームでジャンプシュートしていた。きれいな曲線を描いたそれはゴールネットにスパッと入る。
あぁ、この子は本当はバスケがしたいんだな、ってひと目でわかった。
この子の女子部での評判は上々だった。やっぱりバスケ経験者なので、部員が何を望んでいるのかがわかるのだろう。テキパキちょこまかと働いている姿は一生懸命で、ハムスターが必死に回し車に乗ってるみたいと、男子部員が笑っていたが……彼女のやっていることはなかなかできないことだと思う。俺はすごいなって感心していた。
彼女はどんな風にプレイするんだろう。バスケが嫌いになったんじゃない。本当はやりたいけど、身長の低さで何もかも諦めたんじゃないのか、それとも怪我が原因か。
彼女を、菜乃ちゃんをもっと知りたくなった。以前の俺と似ている部分がある彼女に興味が湧いて話しかけたのがきっかけだ。
彼女はよく周りを見ている。
うちの男子部のマネージャーは美人なのだが、とにかくトロい。本人は真剣なのだろうが仕事が遅いのだ。それを見兼ねた菜乃ちゃんが自分の仕事を終わらせて手伝ってあげてるのを知っている。
その厚意に甘えた男子部員からクレームを言われたり、男子部内で起きたトラブルの仲裁に入ってあげてる姿も多々みかけた。気を回し過ぎて貧乏くじを引きやすい子なのかな。
見兼ねて俺がヘルプに入るが、いつも彼女はなにか言いたそうな顔をして俺を見上げる。なにか言いたいのかな、と彼女が言い出すのを待つけど、彼女は言いたいことを飲み込んでしまうのだ。
彼女は俺のことパリピとかイケメン怖いとか言って警戒しているみたいだけど、俺そんな大層なものじゃないんだけどな。
髪の色素が薄いけど、これ生まれつきだし、バスケの邪魔にならないようにヘアスタイルを整えてるけど、別に意識してとかそういうつもりもなくて……物凄い誤解を抱かれている気がしてならない。
菜乃ちゃんのつむじは今日もかわいいなと見下ろしていると、「私のこと見下さないでください」と不機嫌そうに睨んでくるし……ハムスターと言うよりも、急に機嫌が悪くなる猫に見えるのは俺だけだろうか。
俺は菜乃ちゃんの素がもっと見たい。
１ｏｎ１で活き活きする菜乃ちゃんも、女子部員の前で無防備に笑う可愛い笑顔も、俺の前では警戒した猫みたいな反応になる姿も全部全部気になって仕方ない。
菜乃ちゃんに関わることすべてが気になって目が離せないんだ。
とりあえず、菜乃ちゃんは男の前で無防備に薄着にならないほうがいいと思う。
菜乃ちゃんが自覚してるかわからないけど胸が大きいからどうしても男の目が行きやすいというか…目のやり場に困る。
本人を前にして「胸が大きいから」とは言えず、言葉を濁してパーカーを着ていてほしいとお願いしたら、滅茶苦茶不審そうな目で見られたけど、俺は菜乃ちゃんの為を思って言ってるんだからね？
ダボダボパーカー姿も可愛いから、ずっと着ていてほしい。
俺の小さくなった服をあげたら着てくれるだろうか？ 彼シャツみたいでいいよね。菜乃ちゃんが俺の服着てる姿想像したら…めちゃくちゃ可愛かった。
その子は中学まではバスケをしていたらしいが、高校ではマネージャーに転向したのだという。チームメイトが噂をする彼女は…小さかった。１５０あるか？ と思ったけど、本人曰く１５２あるそうだ。それでもバスケをするには低すぎた。
もしかしたら、背が低いからバスケを諦めたのだろうか。数ヶ月前の自分を思い出してなんとなく親近感が湧いた。
俺は中学でバスケをはじめた。ただ単純にカッコいいかな、モテるかなと思ってはじめたが、俺には悩みがあった。
悲しいかな、背が全く伸びなかったのだ。事実俺は高１の半ばまで１６２ｃｍで止まっていた。ここで俺の成長は打ち止めか…と凹んだことは腐るほどあった。ただでさえ周りにはバスケ部員らしく長身の野郎ばかりで、そいつらから身長の低さをからかわれることもあった。
当然ながらレギュラー入りなんて夢のまた夢。女の子に見向きもされず、バスケ部を退部するか否か悩んでいた俺の成長期は急に訪れた。
一気にブーストかけたのかってくらいぐわっと伸びはじめ、しばらくはその痛みで睡眠不足に襲われた。体が悲鳴を上げて病院に行くも、成長痛だと言われてオシマイだ。為す術もない。
高校２年に進級する頃には成長痛も落ち着きを取り戻し、俺の身長は１８０を超えた。伸び方が尋常じゃなく、その成長度合いに自分でも驚いたが、今までチビだと馬鹿にしてきた奴らと同じ目線になれてスカッとした。
その頃から周りの女子の俺を見る目が変わったのも気づいていたが、低身長時代のことがあったのでなんだかなぁと複雑な心境でいた。向けられる好意を見て見ぬ振りして、俺は以前と変わらずバスケに没頭する日々を送っていた。
そんな日々を送っていた俺の目に、未練を抱えた悲しそうな表情を浮かべた彼女が映ったのだ。部員全員が帰宅した、誰もいない体育館で彼女は慣れた手さばきでバスケットボールをドリブルすると、整ったフォームでジャンプシュートしていた。きれいな曲線を描いたそれはゴールネットにスパッと入る。
あぁ、この子は本当はバスケがしたいんだな、ってひと目でわかった。
この子の女子部での評判は上々だった。やっぱりバスケ経験者なので、部員が何を望んでいるのかがわかるのだろう。テキパキちょこまかと働いている姿は一生懸命で、ハムスターが必死に回し車に乗ってるみたいと、男子部員が笑っていたが……彼女のやっていることはなかなかできないことだと思う。俺はすごいなって感心していた。
彼女はどんな風にプレイするんだろう。バスケが嫌いになったんじゃない。本当はやりたいけど、身長の低さで何もかも諦めたんじゃないのか、それとも怪我が原因か。
彼女を、菜乃ちゃんをもっと知りたくなった。以前の俺と似ている部分がある彼女に興味が湧いて話しかけたのがきっかけだ。
彼女はよく周りを見ている。
うちの男子部のマネージャーは美人なのだが、とにかくトロい。本人は真剣なのだろうが仕事が遅いのだ。それを見兼ねた菜乃ちゃんが自分の仕事を終わらせて手伝ってあげてるのを知っている。
その厚意に甘えた男子部員からクレームを言われたり、男子部内で起きたトラブルの仲裁に入ってあげてる姿も多々みかけた。気を回し過ぎて貧乏くじを引きやすい子なのかな。
見兼ねて俺がヘルプに入るが、いつも彼女はなにか言いたそうな顔をして俺を見上げる。なにか言いたいのかな、と彼女が言い出すのを待つけど、彼女は言いたいことを飲み込んでしまうのだ。
彼女は俺のことパリピとかイケメン怖いとか言って警戒しているみたいだけど、俺そんな大層なものじゃないんだけどな。
髪の色素が薄いけど、これ生まれつきだし、バスケの邪魔にならないようにヘアスタイルを整えてるけど、別に意識してとかそういうつもりもなくて……物凄い誤解を抱かれている気がしてならない。
菜乃ちゃんのつむじは今日もかわいいなと見下ろしていると、「私のこと見下さないでください」と不機嫌そうに睨んでくるし……ハムスターと言うよりも、急に機嫌が悪くなる猫に見えるのは俺だけだろうか。
俺は菜乃ちゃんの素がもっと見たい。
１ｏｎ１で活き活きする菜乃ちゃんも、女子部員の前で無防備に笑う可愛い笑顔も、俺の前では警戒した猫みたいな反応になる姿も全部全部気になって仕方ない。
菜乃ちゃんに関わることすべてが気になって目が離せないんだ。
とりあえず、菜乃ちゃんは男の前で無防備に薄着にならないほうがいいと思う。
菜乃ちゃんが自覚してるかわからないけど胸が大きいからどうしても男の目が行きやすいというか…目のやり場に困る。
本人を前にして「胸が大きいから」とは言えず、言葉を濁してパーカーを着ていてほしいとお願いしたら、滅茶苦茶不審そうな目で見られたけど、俺は菜乃ちゃんの為を思って言ってるんだからね？
ダボダボパーカー姿も可愛いから、ずっと着ていてほしい。
俺の小さくなった服をあげたら着てくれるだろうか？ 彼シャツみたいでいいよね。菜乃ちゃんが俺の服着てる姿想像したら…めちゃくちゃ可愛かった。
