太陽のデイジー番外編 | ナノ
Day‘s Eye 花嫁になったデイジー
蜜月初夜【前】


 名実ともに夫婦と認められた私とテオはその日の夜のうちに新しい住処へと移ることになった。育った家から出ていくのがなんだか寂しかったが、両親はいつでも帰ってきていいと言ってくれたので私は安心して出かけられた。
 家族たちに見送られて私はテオと2人で新居へと向かう。

 丘の上の新しい家まで少し距離はあるが、足元を灯りで照らせば問題なく歩ける。そのはずなのに移動の際はテオが私を抱き上げていた。俺は夜目がきくからと言って。
 テオは私がすぐに死ぬような弱い生き物だと勘違いしているんじゃなかろうか。仮に夜道でずっこけても、そう簡単に死にはしないのに大げさである。
 幼少期にいじめてきた分、足りなかった優しさを今与えられている気がしないこともない。

 扉を開けると、新居には当然ながら誰もいない。真っ暗な室内に最低限の灯りの火を灯して寝る準備をする。ここに来るまでお互い言葉少なめだった。私もだけど、テオも緊張しているのだと思う。初めての2人きりの夜だもの。
 先にお風呂を使わせてもらった私は、身だしなみを整えたあとに夫婦の寝室へと足を踏み入れた。手に握った小さな小瓶を枕下に忍ばせるとため息を吐く。柄にもなくガチガチに緊張していた。
 今までにも何度か睦み合うことはあったけど、私達は最後まではいたしていない。今晩ちゃんと完遂できるだろうかとか不安もある。

 静かな部屋に自分の呼吸音と落ち着かなく高鳴る心臓の音が耳に刺さる。今か今かと待っていたくせに、いざガチャリ、とドアノブが回された音が聞こえると私は大げさにビビってしまった。
 そりゃそうか、ここはテオが建てた家で、この寝室はテオの寝室でもある。ノックとか呼びかけとかせずに遠慮なく入ってくるよね。

 空はとっくに真っ暗に代わり、空には月と星が輝くだけ。ほのかな月明かりが差し込む寝室はランプの灯りだけが頼りだ。近づけばお互いの表情が分かるだろうが、この距離だと少しわからない。
 私はベッドに座ったまま、テオを静かに見上げていた。テオは後ろ手に扉を閉じると、こちらに近づいてくる。

 普段テオと会うときは日中の明るい時間だったから、夜に家で2人きりになるのは新鮮だった。いつもとは違うテオの雰囲気を感じ取って、私は少しばかり恐怖を抱いていた。
 ギシ、と隣にテオが座ったことでベッドが重さで揺れる。私は思った。今までにここまで緊張したことはあったか? 狼家族と遭遇した時や、戦闘に入った時とは違う緊張感だ。

 …ここで何をすればいいのか。
 式の感想でも言うか、明日の朝食どうするか確認するか…。考えすぎて何がなんだかわからなくなってきた。俯いて膝の上でギュッと手を握りしめていると、その上から大きな手が重なってきた。
 私が顔を上げて隣のテオを見上げると、テオは真剣な、しかしいつもとは違った表情で私を熱く見つめていた。熱い視線に捕らえられた私はゆっくり近づいてくるテオの顔を見つめ、静かに目を閉ざす。
 ろうそく灯りでぼんやりと照らされた私達の影はひとつになり、寝台へと倒れ込んでいった。



 結婚前の睦み合いとは違う。私達は着ていた寝間着を脱ぎ去ってお互い生まれたままの姿になると、何度も何度も口づけを交わした。
 テオは首筋に舌をなぞらせながら、私の乳房を両手で揉みしだいた。触り心地を確かめるかのような、パン生地でも捏ねられているみたいな触り方だけど、触られているとなぜだか頭がぼんやりして、私の息も荒くなっていく。

「あ…っ! んんぅ…」

 ツンと主張している尖りをぐにっと摘まれて声を漏らすと、その声を聞くがために何度も何度もいたぶってくる。私はその度にはしたない女みたいな甘えた声を漏らしている。それが恥ずかしいのに、声が抑えられない。
 テオの舌がぬるりと鎖骨から胸の膨らみへと向かい、頂きに到達するとためらいなく固く尖ったそれに吸い付いてきた。

「ぁ、いや」
「いやじゃねーだろ」

 テオはちゅうちゅうとわざと音を立てて吸ってくる。私が恥ずかしがっていると気づいているくせに、更に愛撫を続けて私の痴態を見て楽しんでいる。
 私が嫌だって本気で言えば、きっとテオは中断するだろう。
 ──困ったことに、恥ずかしいくせに行為自体は嫌じゃない。それをテオも気づいている。天の邪鬼な私は与えられる刺激にはしたなく喜んでしまっていた。

 集中的な愛撫を受けているのは胸だけなのに、私の身体の中心がムズムズと疼いてきているのがわかった。触れられていないのに痺れて熱くなっている。
 多分、鼻のいいテオには丸わかりなんじゃなかろうか。私が発情しているってことくらい。

「んー……いい匂い」
「…っ!」

 吸われすぎてふやけた私の胸の尖りはテオの唾液でテカテカ濡れていた。しかし私はそれに恥ずかしがるどころではなかった。
 なぜなら、テオが私の股ぐらに顔を近づけていたからだ。

「ちょ…! やめて!? 直接匂い嗅ぐのはホントやめて!?」
「だってこれからほぐさねーと。最初は口使って馴染ませないときついぞ」
「いや、待って、弛緩剤が」
「だぁめ。俺らどれだけ体格差あると思ってんだよ」

 こういうときのために昔ながらの秘伝の薬があったりするんだが、それだけじゃ駄目だとテオは言う。
 私が止めるのも聞かずに、テオは私の秘部に口をつけると、その舌でねっとり舐め上げた。

「あぁ…」

 ぞくぞくと駆け上がったのは抗えない快感である。私の腰が引けているのに気がついたテオは私の腰を抑え込むと、むしゃぶりつくように喰らいついてきた。

「ヒッ!? あぁぁぁ! 駄目、待って、あ、いやっ」

 恥ずかしいのと、今まで感じたことのない快感と、少しばかりの恐怖で私は悲鳴みたいな喘ぎ声を上げた。無論、テオは中断しない。
 そういう行為もあると本で読んだことはある。だが、それは必須というわけじゃなく。まさか初っ端からされるとは思わなかった。

「すげー次から次に溢れてくる。舐めても終わりがねぇ」
「そういうこと言わないでよ! んっ」
「…痛いか?」

 ヌッと膣内にゆっくり侵入してきたテオの指に私は軽く震えたが、痛くない。私が首を横にふると。テオはホッとした様子だった。
 そのままにゅちにゅちと音を立てながら動かされ…痛くないけど、音が恥ずかしくていたたまれない。なのにテオは私が痛がってないか観察するように顔をじっと見てくるから私はどんな顔をしていいかわからなかった。
 その後2本、3本と指は増やされると、圧迫感が出てきたが私は軽く吐息を漏らすだけ。恥ずかしがっても仕方ない。嫌がっていたらいつまでも私はテオと一つになれないのだ。反抗するのをやめた。
 多分テオもギリギリのところを我慢して、私の身体の準備をしてくれているのだろうし。
 ……それに見た感じ、大丈夫そうな気がする。

 テオの下半身を見て、そう思い込んでいた私はその後、それがとんだ思い違いだと気づかされたのである。

 
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