お嬢様なんて柄じゃない・番外編 | ナノ
本編の裏話
本編・大人の階段


 シャワーを浴びたいと告げると、一緒に入ろうと言ってきた慎悟。
 とんでもない。なんてはしたないことを言うんだ。

「はしたないもなにも、今からそういう事をするんだ。恥ずかしがらなくてもいいだろう」
「バカ! 乙女の恥じらいってものだよ! 慎悟にこの身を捧げるとは言え、初っ端から一緒にお風呂に入るだなんてハイレベルな事できるわけ無いでしょ!?」

 これからって時に私と慎悟は取っ組み合いをしていた。場所は私の誕生日祝いとして連れてきてくれたレストランのあるホテルの一室。
 この部屋へたどり着くまでの道のりでは緊張してあまり意識していなかったけど、多分いい部屋をサーブしてくれているんだ。大きな窓からは、綺麗な夜景が見える。ここから眺めると色とりどりの宝石が散らばっているように見える。そして程よく広い部屋に鎮座した大きなダブルベッドを見ると、これから何をするのかが容易に想像できて変な汗をかいてしまう。

 1年以上清い交際を続けてからの大人な関係への第一歩なのだ。私かてスマートに初体験を済ませたい。
 だが、私にだって恥じらいがある。私だけが裸になるんじゃない。だけど、お互い全てをさらけ出して…その、一つになっちゃうわけじゃないですか!
 ……つまり恥ずかしいんだ。これからあられもない姿になるとわかっていても……恥ずかしい!

 バスルームに入ってこようとする慎悟を押し出そうとしたが、悲しき男女の力の差。押し合いへし合いを5分くらい続けていたが、業を煮やした慎悟が私の腰に腕を回した。
 ヒョーイと軽々と抱き上げられた私はぴしっと固まった。

 あら、なんてデジャブ。こんなの前にもあったね。
 慎悟は私を抱えたままずんずんと進み、そしてベッドの上に私を下ろした。フカフカのベッドに背中から体をうずめた私の視界に映ったのは、おきれいな慎悟の顔と、部屋の天井に吊るされたおしゃれな電飾。
 逆光となった慎悟の目はマジだ。その視線にさらされた私は息を呑んで固まる。

「…埒が明かないから、もうこのままでいい」
「えぇ!? いやちょ…んむっ」

 上に乗り上がってきた慎悟が強引に唇を奪った。それは優しい口づけでなく、飢えた狼が獲物にありつくが如くの激しい口づけ。
 慎悟の熱い舌が口の中に侵入してきた。私の舌を捕らえると、それと絡めて強弱をつけて吸われる。私も負けじと愛撫し返すが、慎悟はどうにも私に主導権を与えてくれない。

「んんっ…!」
 
 舌のザラザラした感触が上顎をくすぐる。私はくぐもった声を漏らした。飲み込めなかった唾液が口端から溢れ、一旦口を離した慎悟がそれを舌で舐め取った。彼の舌が唇をなぞるとゾクゾクと体が震えた。

 ……私は慎悟とキスをしているといつも変な気分になる。結局の所…キスが性行為に似ているからであろうか? 
 貪るようなキスをしている間も慎悟はせわしなく体を撫で回す。彼の手のひらが首筋をなぞるようにして撫ぜると、くすぐったくて身を捩ってしまう。
 今日はレース付きのブラウスの上に薄手のカーディガンにスカートという服装だったが、シャワーを浴びようとした際にカーディガンだけ自分で脱いだので、上はブラウスのみである。
 慎悟の手によってプツ、プツとボタンを外されていく。中身を暴かれてしまいそうな心境になって落ち着かない。人に脱がされるってこんなに恥ずかしいことだっけ?

 怖い気持ちはある。
 だけど好奇心もあって。
 
 私の中の本能は早く早くと急かしているのに、理性はちょっと待ってと阻止しようとする、矛盾した感情でいっぱいである。

 あっという間にボタンを外され、下着の上から胸を揉まれた。
 慎悟は慎悟なりに予習はしてきたそうだが、お互い初めて同士だ。その動きはぎこちない。まるで壊れ物を扱うような触り方で……私はなんだか物足りないと感じてしまった。

「…もっと強くても大丈夫だよ…?」

 そんなおっかなびっくり触らなくてもいいよって意味で言ったんだけど、慎悟は無表情になってしまった。
 私の背中に手を差し込むと、ブラのホックを外し、ブラウスとともにブラを取り払った。その動きは性急である。
 ちょっと余裕なくない? ブラ外す時ホックの金具がブチッと嫌な音を立てた気がするんですけど。そういう意味の『強くてもいい』じゃない…
  
 ……そしてさすがに電気は消さないか?

「ねぇ慎悟、電気……」

 一旦体を起こした慎悟は自分の服を脱いで、上半身裸になっていた。傷やシミひとつ無いその肌は白雪のように白い。それも相まってなよっちく見えるはずなのだが、そんなことはない。慎悟の生ストリップを見せつけられた私はクラっとしていた。
 …やだ、何その色気。
 何の変哲もない男の裸なのにフェロモンすごくない!? 婚約者の色気に私が魅了されかかっているとは知らない彼は、電気を消すことなく再び覆いかぶさってきた。

 慎悟は胸元に顔を近づけると、胸の谷間に顔を埋めてきた。肌に吸い付くとしっかり痕を残す。
 ……電気は!?

「ひゃっ!?」

 電気のことを突っ込もうとしたら、慎悟の熱い手のひらが両胸を覆い、先程よりも強く揉みしだかれた。
 直接触られることで触覚が鋭敏となり、私は変な声を漏らしてしまった。刺激でツンと尖った胸の飾りをいたぶられると、鼻にかかった声が口から漏れ出す。

「んん、ぁ…んぅ……!」

 未知の快感に驚いてただ声を漏らすだけの私の反応に気を良くしたのか、触れ方がだんだん大胆に変わっていく。グニグニと押しつぶすように触ったり、指で摘んで小刻みに動かしたり。
 慎悟が与える愛撫の全てに私は敏感に反応した。触れている手のひらから微弱の電流を流されているかのようにビクビクと体を震えさせて、言葉にならない喘ぎ声を漏らす。
 快感についていけないからちょっと待って欲しいのに止めないで欲しい。
 
 チュウ、と音を立てて胸の尖りを吸われると、急激に恥ずかしさが増した。赤ちゃんがお母さんのおっぱいを吸うような吸い方じゃない。口に含んだそれを舌で潰したり、弾いたり。まさしくネットリした愛撫だ。

「んんぅ…しんご、あっ……」

 胸に吸い付く慎悟の頭を抱えて、私はのけぞった。慎悟が口での愛撫を強めたので、私は喘ぐことしか出来なかった。こういう時私は年上としてリードしないといけないと思うんだが、年下の彼にリードされてる始末ではないか。
 情けないし、ダサい。
 慎悟は頑張ってくれているのに、私はただ気持ちよくされて、淫らに鳴いているだけ。
 快感でぼんやりしながらも、私も愛撫し返そうと慎悟の体をまさぐったけど、その手が邪魔だったのか、ベッドに縫い付けられてしまった。ひどい。

「ひっ…!」
  
 足の付け根に膝を差し込まれ、グッと擦り付けられると、体の中央がジンと熱くなった。キスをしている最中からずっとそこが落ち着かなくてムズムズしていた。熱くて、しびれて、触って欲しくて切なかったんだ。
 そうされて初めて、自分が下着を濡らしていたことに気付かされた。私はそれがバレるのが恥ずかしくてそれを止めさせようとしたが、慎悟は止めてくれない。乱れたスカートの中に手を突っ込んで、太ももを撫でながら足の付け根にたどり着いた。足を閉じようにも慎悟の膝が割り込んでいるのでそれはかなわない。

「…待って…! そこはっ」

 私が止める声など気に留めずに、慎悟はショーツの上から秘部を指でそっとなぞってきた。ヌルヌルしたショーツの布地に擦られ、ブワッと今まで感じたことのない快感が襲ってくる。

「あっ……!」
「……濡れてる…?」

 それは疑問を含んだ声だった。
 多分純粋に思ったことを口にしただけなのだろうが、私は急激な羞恥に襲われて、カッと顔が熱くなった。
 私の反応に何を思ったのか、慎悟は私のおでこや頬にキスを落としてきた。

「…脱がすぞ」
「……ぅん…」

 私は手のひらで顔を隠した。 
 年上の矜持はどこに行った。私は先程からあられもない姿ばかり晒しているではないか。つらい。
 スカートやショーツを黙々と脱がす慎悟が沈黙しているのがますますいたたまれない。なんか言ってくれないか。
 
 生まれたままの姿にされた私の上に布団が掛けられた。私が指の隙間から様子をうかがうと、慎悟も残された衣服を脱いでいる。
 あ、見ちゃった。
 いや、親兄弟のモノは見たことありますけど、あんな凶暴になったモノは初めて見ました。お腹にペットリくっついているじゃないですか。え、アレを体内に入れるんですか? 入る? 入るの?

 慎悟の分身を見てしまった私は固まっていた。男性陣みんなそうなるというのはわかっているが……そこだけ別の生き物みたいだね。

 一旦掛けられた布団を取り払われると、慎悟が覆いかぶさってきた。
 はぁぁ! とうとう…!
 私が緊張でぎくりと固まったのがわかったのだろう。

「いきなりはしないよ。ちゃんと慣らさないと」
「だってだって…! 怖いんだよぉぉ」

 そこが受け入れる場所だってわかっているが、やっぱり怖いんだ。私はここに来て泣き言を漏らす。
 慎悟はそんな私に口づけを落としながら、お腹を撫でてそのままゆっくり秘部に手を滑らせた。

 ぬるっとした感触とともに、慎悟の指がそこに触れると、再び電気が全身を走った。

「やっ…!」
「ここ気持ちいいか?」
「めっ! 見ちゃやだ!」

 私が強い反応を示した場所を見ようと、足の間に入った慎悟がまじまじと観察してきたではないか。
 ちょっやめろよ! レディの股ぐらを観察するものではないぞ!

「赤くなってる。ここは男性器の名残らしいが、大多数の女性が感じる性感帯だそうだ」
「ここでうんちくはいらないよ! み、見ちゃダメだって!」

 豆知識的な事を口にしながらも、いたぶる手は止めない。こんなシーンで性教育しなくてよろしい!
 慎悟、私が今どれだけ羞恥に襲われているかわかっているのか!? さっきから変な汗かきまくってるんですけどねぇ!?

「あ…うぅ、くぅ…ん」

 ヌルヌルとそこを愛撫する手は止めない。完全に私の反応を楽しんでやがる…でも気持ちいい…悔しい!
 息がどんどん荒くなっていく。体はこの先の高みへ上り詰めたいと訴えているが、それがどうにももどかしくて苦しい。 
 私の緊張が快感に押されてほぐれたと判断した彼は、彼を受け入れる場所に浅く指を入れた。
 
 ──私は今までそこに指を入れただけでアンアンと感じるものだと思っていた。だって漫画とかってそうじゃん。
 だが正直に言おう。なにかが入ってるという感覚しか無い。

「痛いか?」
「大丈夫」

 私の返事を聞いた慎悟はゆっくりと指を奥へ差し込んだ。
 慣らすために動かされたが、今のところは痛くない。私の反応を見ながら、更に指を増やしていく。
 いつもより余裕がなさそうな彼の分身はパンパンに張り詰めており、先端から透明な液体が溢れていた。
 辛くないのかな。それとも私の体を気遣ってギリギリのところで押し留めているのだろうか……

 指が3本になるといよいよ窮屈感を憶えた。痛くはない。が、お腹が苦しい。しかし、できれば早く慎悟を楽にしてあげたい。
 多分大丈夫。なぁに、初めては痛いものだと聞いている。それにサバイバルナイフで刺された時に比べたら大した痛みじゃないはずだ。

「慎悟、もういいよ。少し位痛くても私我慢できるから……」

 腕を伸ばして、秘部をほぐす慎悟の手を撫でる。ビクリとその手が震えたのは気のせいだろうか。

「あぅっ…」

 ズルリと指が抜ける感触に私は切ない声を漏らしてしまった。気持ちいいとかそういうのではなくて、寂しくて切なく感じたのだ。
 背中を向けてもぞもぞしていた慎悟は私の足の間に体を入れて覆いかぶさってきた。触れるようなキスをされ、私は慎悟の首に抱きついた。その熱い舌に私が吸い付くと、ピタリと秘部に熱く硬い何かが押し付けられた。
 …とうとう、私は慎悟のものになるのだと覚悟していると、逆に舌を吸われた。口内を犯され、そのキスに必死に返していると、ぐぐっと圧迫感が増した。
 ピリッと張り裂けそうな小さな痛みが走ったが、耐えられそうだ。

 押し込むように挿入されるので、息苦しく感じるが、私は求めていた半身をようやく手に入れたような充実感でいっぱいだった。
 好きな人に抱かれるというのはこんなにも切なくて幸せなことなのかと、苦しくなった。幸せに溺れて死にそうだった。

「…痛いか?」
「…ん、大丈夫。…慎悟、好きだよ、愛してる……もっと奥まで入ってきて」

 慎悟は眉を寄せて「俺も好きだよ、笑さん」と呟くと切なそうに顔を歪めていた。
 凄惨な事件で非業の死を遂げた17歳の初夏の日。私は死にたくないと、だけどエリカちゃんの体を貰っても仕方がないと、元に戻りたいと長いこと葛藤してきた。
 だけど、こんな風に幸せに溺れて死ねたら、きっと私は後悔せずに逝けるだろうなぁ。

「笑さん……奥まで入った」
 
 慎悟が奥まで入ってくると、やっぱり思っていたとおりお腹がパンパンになっているかのように苦しい。
 生理的な涙を流していたら、それを彼がキスして舐め取ってくれる。落ち着くまで動かないでいてくれるのだ。

 なんで慎悟は私を見つけてくれたんだろう。
 こんなにも私を愛してくれるんだろう。
 私は幸せで幸せで怖くなってしまうよ。

 ゆっくりと慎悟が腰を動かし始めた。
 初めは出し入れされると、内臓を圧迫されるようで苦しかったが、体を揺さぶられている内にだんだんそれに慣れ始めた。

「あっ、アッ…うぅっ」

 快感ではなく、圧迫感を少しでも和らげようと体が反応して声が漏れ出る。熱く火傷しそうな慎悟の分身がせわしなく腟内を擦っている。
 まだ私にはそれが気持ちいいと感じる余裕はないけど、慎悟が気持ちよさそうで良かった。

 余裕がなさそうなその顔。ときおり漏れる吐息。他の肉食系女子たちは知らないんだろうな。
 私だけのものだ。
 彼は私のもの、誰にも渡してやらない。
 慎悟、もっと私を求めて。私を欲しがって。
 もっと抱いて。与えられる痛みも快感も同じように嬉しくて、私は幸せでたまらないんだ。

 ブルッと震えて達した慎悟は荒い息を繰り返した後にそっと私の中から出ていこうとした。
 だけど私はそれが寂しくて彼の腰に足を絡めた。

「やだ……離れないで」

 顔を手のひらで撫でられ、宥めるようにキスを落とされた。だけど私は慎悟の胸にぎゅうとしがみついてやった。
 ワガママなんて言わないで。折角一緒にいられるんだ。くっついていたいんだ。
 私のナカで再び硬度を持った彼の分身が再度動き始める。腰を掴まれると最奥を突かれ、自分が慎悟の中の獣を目覚めさせてしまったことに気がついた。

 気づいた時にはもう遅い。私の為を思って理性を抑えてくれていた慎悟の本能を目覚めさせたからには、彼が満足するまで付き合うしか無いのだ。
 だんだん擦られるとじんじん痺れるようになり、痛みや圧迫感から出る声ではない、私は色を含んだ嬌声を上げるようになった。

 こうして私は、一晩中彼の熱を感じていたのだ。


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