happy birthday
「誕生日おめでとうー

ケーキにキラキラと目を輝かせているむくが嬉しそうに大きな声でおめでとうと伝えてくれた。
すっと差し出された家族からのプレゼントを受け取り、ぎゅっと抱きしめる。
むくからは毎年恒例の似顔絵。
風斗からは新しいエプロン。
風太からは、後でな、と言われて、まだもらっていない。
とても楽しみで、嬉しかった。


「ケーキ食べよっか」

風斗が笑いながら、ケーキを切るのを眺める。
綺麗に切られたケーキを四人分に分け、風太がコーヒーと紅茶、むく用のジュースを入れた。
ケーキはイチゴのショートケーキ。
甘くて酸味のあるイチゴがクリームの甘さがうまく交わっていて美味しい。
このお店のケーキはどれも美味しくて、誕生日とかは時折誰かが買ってきてくれた。


「おいしいねえ、たぁちゃん」

「おいしいねえ、むく」

嬉しそうにケーキを食べるむくに、汰絽も幸せな気持ちでいっぱいになった。



みんなでご飯を食べてから、汰絽は風太に連れられ外に出ていた。
大きな高級ホテルに入り、夜景の見えるへやに入る。
思わず窓に駆け寄って、夜景を見渡した。


「すごい…!! 綺麗ですね…っ」

「だろ、昔、親父とじじいと泊まりに来たんだ」

「…そうなんですね。ふふ、思い出の場所に連れて来てくれたんですね」

小さく笑いながら伝えれば、風太も笑って後ろから抱きしめてくれた。
どちらともなく、口をつぐみ見つめ合う。
あの時の、ふたりを結びつけた時の熱が、お互いを包み込み唇を触れ合わせた。


「ん…」

「汰絽、シャワー浴びて来て」

「うん…」

額にそっとキスをしてもらい、汰絽は思わず頬が赤くなるのを感じた。
離れるのが、惜しい。
それでも早く触れ合いたいと思い、シャワールームへ向かった。

入れ替わりでシャワーを浴びて、一息つく。
風太がシャワーを浴びている時に、心もとなく眺めていたテレビを消して窓の外を眺めた。


「綺麗…」

キラキラと光る街並み。
真っ暗な闇の下にはキラキラとオレンジや、赤、白、黄色、青色…様々ないろが輝いていた。
汰絽の目の前に広がる世界は、風太と出会うまでは知らない場所だ。
窓にそっと手を添え、眺めた。


「何見てんの」

耳元で聞こえて来た声に、汰絽はびくりと肩を震わせた。
振り返ると、シャワーを浴びて来た風太がいる。
窓に背中を預け、風太を見つめた。
髪はまだ乾かしていなくて、雫がポタリと汰絽の頬に落ちる。


「風邪、引いちゃいますよ」

そう囁き、汰絽は風太の肩にかかったタオルをとり、風太の胸を押した。
風太は押されたまま、ベッドに腰を下ろして汰絽を見つめる。
汰絽は小さく笑いながら、風太の足の間にたちワシャワシャと髪を拭き始めた。


「ふふ、風太さんおっきい子どもみたいです」

「なんだと〜っ」

笑いながら風太が汰絽の腰に抱きつき、そのまま引き寄せる。
ゆっくりとベッドに背を預け、汰絽は風太の上に乗った。
胸の鼓動が聞こえて来て、汰絽は風太をみる。
くるんとひっくり返り、風太に見下ろされた。


「風太さ…」

「汰絽、誕生日おめでとう」

額にキスを送られて、汰絽は小さく笑った。
唇に降って来たキスが心地よくて、汰絽はそっと目を瞑る。

Happy Birthday to taro.
2017.03.03
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