happy brithday
「日が延びたな」

「そうですね」

さんさんと降り注ぐ日差しを、窓の外から浴びながら汰絽は風太に答えた。
今日は創立記念日で、むくも幼稚園を休んで図書館に来ている。
図書館のキッズスペースで、三人は日差しを浴びながら絵本をたくさん広げていた。


「あ、」

こてんと汰絽の膝に転がったむくに、汰絽は思わず口元を緩めた。
むくは眠たいのか、口をむぐむぐしながら汰絽の手をぎゅっと握る。


「日差しがあったかいからね」

目を瞑って柔らかな蜂蜜色の髪を梳かして、むくの胸をポンポンと優しく叩く。
隣に座った風太が汰絽の鞄の中からタオルケットを取り出してむくにかけた。


「たろ」

「ん、なんですか?」

「誕生日おめでとう」

風太の言葉に、汰絽は瞑っていた目を開いた。
まっすぐに見つめてくる空色の瞳に、心臓からとくんと優しく血液が流れ出す。
ふんわりと笑みが零れだして、汰絽は小さく笑った。


「ふふ、…忘れてました。お誕生日」

「そんなことだろうと思った」

「そっか。…僕、16歳になるのか」

風太の大きな手のひらが伸びてきて、頬を撫でられる。
そのぬくもりに汰絽はまた笑った。


「どうした?」

「んー…、幸せだなぁって思って。こんな風に大好きな家族と一緒にのんびりと過ごせて、とっても幸せだなって、噛みしめてました」

「そうか。存分に噛みしめてくれ」

目を細めて笑う風太の声につられて汰絽は何度も小さな声で笑う。
穏やかな日差しの中、むくの寝息も聞こえてきて、ふたりは静かになった。


「…汰絽、目、瞑って」

こくりと頷いた汰絽はゆっくりと目を瞑った。
窓から入ってくる日差しに瞼が透き通るような明るさを感じる。
不意にむくの胸を優しく叩いていた手が大きな手に掴まれて、手のひらを上に向かされた。


「ふうたさん、なに…?」

「もうちょっと待って」

「うん…」

そわそわとしながら待っていると、手のひらの上に軽いものが乗せられた。
大きな手で手を握るよう促してくるのを感じながら、軽く手を握る。


「目、開けてもいいですか…?」

「もう少し」

風太の囁く声が聞こえたのと同時に、唇に柔らかな感覚を感じた。
チュッと愛らしい音を立てて、柔らかな感覚は離れていく。


「…目、開けちゃった」

「そうだな。もう一度、誕生日おめでとう」

「これ、…開けていいですか」

風太が頷いたのを見て、汰絽は四角い小さな小箱のリボンを解いた。
箱を開くと、きらきらと光る指輪が収まっている。


「…っ、わ、」

「キザっぽくなるかもしれないし、ほんとは汰絽が欲しがるのがいいかと思ってたんだけどさ…」

「…っ」

「やっぱ、付き合って最初の誕生日だから、形にしたいって思ったから、これにした」

風太の緊張したような声を聞きながら、汰絽は目頭が熱くなるのを感じた。
ポタリとむくの頬に涙が零れていくのが見える。
その刺激にむくが目を覚まして、小さなもみじの手が伸びてきて蹲るようにした汰絽の頬に触れた。


「たぁちゃ…、しくしくなの…?」

「ちが…、うれし、くて、泣いてるの」

小箱をぎゅっと指が赤くなるくらい強く握って、汰絽は涙をこぼした。
その手の上から、大きな手のひらと起き上がったむくの小さなもみじの手が一緒に重なる。


「えへへ、…うれし…、ありがとう、ございま…、」

笑いながらぽたぽたと涙をこぼしながらそう言うと、風太にむくごと抱きしめられた。


「誕生日おめでとう」

「おめれとー!」

「…ふ、う…、あり、がとぉ…っだいすき、だいすきです…っ」

Happy Brithday to taro
2015.03.03
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