初詣
うったん様 風太×汰絽、壱琉×むく


「むく、汰絽、準備できたか?」

「いいよ〜!」

汰絽の返事を聞いてから風太は汰絽の鞄を持った。
むくはもう玄関で靴を履いている。
風太もそのあとを続くと、汰絽もすぐにやってきた。
赤いマフラーをつけた汰絽は風太を見て微笑む。


「ごめんなさい、遅くなって」

「いいよ、珍しく支度が遅かったな」

「ちょっとお財布を置く場所を変えたら分からなくなって」

「はは、汰絽らしいな。よし行くか」

風太の言葉に汰絽とむくは大きく頷いて家を出た。
今日は壱琉が車を出すと約束をしているため、もう駐車場で待っている。
むくからそれを聞いた汰絽は少しだけ申し訳なさそうに目を伏せた。
車に乗り込むと汰絽はすぐに壱琉に謝る。
汰絽の謝罪に壱琉は気にすんな、と笑った。

家を出て汰絽たちが住んでいる県で一番格式の高い神社に着いた。
車を止めて四人は暖かい格好をしてからお参りに向かう。
むくは壱琉の隣、汰絽は風太の隣を歩いた。


「キラキラしてて綺麗だね、壱琉」

「むくはキラキラしてるものならなんでも綺麗だっていうよな」

「む、無差別に言ってるんじゃないしー…」

「お、初喧嘩か?」

後ろから風太の茶化す声が聞こえてきてむくが押し黙る。
壱琉はそんなむくに苦笑して頭を撫でた。
神社は混んでいて、満員列車のようになっている。
その中で、壱琉はむくの手をそっと握った。


「いち、見られちゃう」

「携帯とか見てる人ばっかだから見られない。嫌か?」

「い、嫌じゃ、ないし…」

かっと頬を染めたむくに壱琉は小さく笑った。
前を向いてだいぶ進んできたのを見ると、あと少しでお参りができそうだ。
後ろの風太と汰絽が楽しそうに笑っているのを聞きながら、むくはドキドキと胸を高鳴らせた。


「あら、ようやくですね、風太さん」

「お、っと、五円玉五円玉」

「僕も」

ポケットの中から五円玉を出して、四人は賽銭箱の中に投げ入れた。
パンパンと手を叩いて目を瞑る。


「よし、行くか」

「はい、おみくじ引いてきませんか?」

汰絽の言葉にむくと壱琉も振り向いた。
大きく頷いたむくに、汰絽と風太は笑う。
人ごみから抜けて、おみくじを引きに行く。
箱に百円を入れてから、四人は次々に引いていった。


「お、大吉」

「僕もです」

「むく、中吉」

「俺は小吉だわ」

パッと見せ合って静かに内容を読む。
読み終わってから、みくじ掛けに結んだ。
汰絽は隣で結んでいる風太を見上げて微笑む。


「何を願ったんですか?」

「んー。今年も家族で仲良く過ごせますようにって」

「僕もですよ」

嬉しそうな汰絽に、風太も小さく笑う。
清廉とした空気を大きく吸い込むと、新しい年が来た、という自覚がやってきた。


「壱琉は何を祈ったの」

「んー。商売繁盛」

「うわー下世話だねえ」

「それと」

そう言って黙った壱琉を、むくはそっと見上げた。
壱琉は長く男らしい指先でおみくじを結んでいる。
むくはもう結び終わりみくじ掛けを揺らし何、と尋ねた。


「むくが今年も俺のことを好きでいてくれますようにって願ったけど?」

「…っ、」

壱琉の言葉にむくは頬がカッと赤くなるのを感じた。
まっすぐに見つめてくる瞳が、まるでむくの心のなかを見透かすようだ。


「そ、…それは、むくにお願いすること、じゃない…」

それもそうだな、と苦笑した壱琉に胸がどきどきと高鳴った。


「今年もよろしくな」

風太たちが挨拶を交わしあってるのを聞いて、どうしようもなく幸せな気持ちを感じた。

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