姫始め
「…ほんとは、年越しも一緒に居たかったな…」

テレビを眺めながらそう呟くと隣に座った直樹が黙り込んだ。
ソファーの上で膝を抱えながら、直樹を見る。
直樹は困ったような顔をしていて、素直ははっとした。


「ご、ごめんなさい…、」

「素直、ごめん。お前が謝ることないよ」

肩を抱かれ、そのまま頭を直樹の肩に預けるように促される。
直樹の肩に頭を預けると、優しい手のひらが髪を撫でた。


「ないものねだりなんて、できない。…素直、俺と一緒に居る時間を大切にしてくれれば、それでいいよ」

「うん、…直樹、ごめんなさい」

「謝るなって〜」

直樹の笑い声に視界が潤んでいく。
ポタリとジーンズの上に零れて、染みを作った。
ポタポタと零れ落ちて何個も染みを作っていく。


「素直、顔上げて」

顔をそっとあげると、直樹が優しく微笑んでいるのが見える。
その笑みがあまりにも甘く優しいから、思わず涙が止まった。
唇に柔らかな感触を感じる。
それは少しかさついていて、ちくりと痛みを伴うキスだった。


ソファーからベッドに移り、キスを続ける。
かさかさとした唇が身体を這うと、小さな痛みが一緒についてきた。
それでも、その小さな痛みが気持ちよくて、愛おしくてたまらない。


「なおき、」

「ん? 大丈夫か…、素直」

「…ん、へいき」

「顔が真っ赤だ」

真っ赤に染まった頬を撫でられると、どうしようもないくらいの気持ちよさを感じる。
その気持ちよさに溺れながら直樹にキスを求めた。
舌先で唇を舐めると、小さく痛い、という声が聞こえる。


「なおき、すき」

そう呟いて、微笑む。
直樹が息を呑むのが聞こえてきて、首を傾げる。
荒い吐息の中で、直樹を見ていると、幸せな気持ちでいっぱいになった。


「素直、俺も、好きだよ」

直樹からの返事を聞いたのと一緒に、目の前がチカチカと白くなった。
その後から快感で身体が満たされて、身体が熱くなる。
大好きな匂いに抱かれ、素直はその気持ちよさに浸った。



「…健全じゃないなぁ」

「でも、幸せ…。その、気持ち…、良かったし」

「そうか。それなら良かった。…素直、今年もよろしくな」

直樹の言葉に返事が詰まった。
また涙で視界が潤んで、直樹が見えない。
頷きながら瞬きをすれば、ぎゅっと直樹に抱きしめられた。

end
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