憂鬱な予定
生徒会も機能するようになり、制裁も減り、風紀委員会の仕事も穏やかになってきた。
心路と古道も学園が荒れる前のように授業に参加して、放課後は風紀委員室でのんびりと仕事していた。
今もセイの淹れてくれたお茶を飲んでいる。

「なんだか雪が降りそうだね」

「やっと秋が終わったと思ったらすぐこれね」

セイと聖がそう話すのを聞いて、古道が笑う。
このふたりは変に大人じみていて、学生らしさがない。

「そろそろ、クリスマスパーティーの準備をしなければいけないね」

「クリスマスパーティーかぁ。嫌だー」

「風紀委員も強制参加だしね」

三人の会話に心路も眉を寄せた。
行事事は好きじゃない。
風紀委員は基本的に見回りに回るため、行事に参加はしない。
そんな風紀委員が唯一参加するのがクリスマスパーティーだ。
その日は教員に警備を任せて、参加をする。

「今年は制服での参加だからね」

「変なコスプレはさせないのね。白井がショック受けそう」

「はは、まあ、いいじゃん」

笑い声を聞いて、心路も小さく笑った。
クリスマスパーティーは、古道と同じで心路もできる限り参加したくない。
美味しい有名店の料理が出たり、有名なジャズシンガーが歌いに来たりするけれど、どれも興味ない。
できれば、古道とふたり、静かに過ごしたかった。

「休もうかな」

「ダメだよ、心路」

にっこりと釘を刺されて、心路はため息をついた。
隣にすわる古道も同じことを考えていたのか、ため息をつく。
きゅっと手を握って見せれば、古道が顔を覗き込んできた。
ふにゃりと笑えば、古道も同じように笑ってくれる。

「かーいいなあ、心路」

ぽんぽんと空いた方の手で頭を撫でられ、心路は満足した。

「クリスマスパーティーさえ終われば、冬休みになるんだから、ふたりともそのまま遊びに行けばいいんじゃないかな」

「それもありだね」

聖の言葉に、ふたりは頷いた。
それだけが楽しみになるな、と思いながら、生徒会から回ってきた予定の紙を眺めた。

去年のクリスマスパーティーの日。
嫌な思い出が胸をよぎった。



「兄さん、ココちゃん具合悪そうだから保健室に行かせていい?」

「ん? 心路、大丈夫かい?」

「…人酔い…」

「ひとりで大丈夫?」

「ん…こどうだけでも、ここにいなきゃなんでしょ…」

「ごめんね、心路、すぐに向かわせるからね。セイ、とりあえず送ってきて」

「はい」

去年のクリスマスパーティーの日、ココは人酔いしていた。
風紀委員会メンバーの顔見世も兼ねていたため、ふたりのうちのどちらかはその場にいなければいけない。
セイがココを連れて行くのを見て、古道はほっとした。
ココを表に立たせるのは避けたかったため、よかった。
しかし、嫌な予感がするのはなぜだろうか。
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