準備、思惑
桜はまた新しい友達を作った。
二や翔太、静、灯。
仲良くしていたみんなは桜を裏切ったから、もういらない。
でももし、謝ってくれたら許してあげるつもりだった。
だって、みんなは悪くないから。
桜の大切な友達に悪いことを囁いて、桜から取ったのは、桜の嫌いなあの子だから。
名前が変わっていたから気づかなかったけれど、翔太や静の瞳を見て気づいた。
桜が大嫌いな色をしていた。
あの子しか見ていない、恋心のような瞳。
だから嫌いだった。
あの子が、犬山、心路が。
だから、もう一度、あの時と同じように、彼に嫌な思いをさせたかった。
彼のことをそういう目で見ている人はすぐにわかる。
彼のそばにいなくても、彼を見ている目がほかとは違うのだ。
ちょっとひとりになった時を見つけさえすれば、桜はもう一度彼を懲らしめることができる。
だって、桜からみんなを取るあの子が悪いから。
「せ、せんぱいっ、ちょっといいはなしがあるんだ…ですけどっ」
そうして桜はいろんな人に声をかけて、またひとり、と友達を作っていった。
桜が正しいから、あの子を正しくするために、桜が一番であるために、桜はたくさん考えた。
だから、静かに、そのときを待っていた。
勇気はそれを影から見ていた。
桜から離れることができて、制裁に合わなくなった。
それからは、桜の動きを見ていることをはとても簡単だった。
いつも綺麗だったり、かっこよかったりしている人をそばにつけているから、見つけやすい。
その上、桜は周りを見ることができないから、勇気がそばで桜の動きを見ていることなんて気づく素振りすら見せなかった。
そんな桜がひとりになったとき、何をしているのか勇気はずっと見ていた。
それが、勇気が大好きな彼、いや、崇拝にも近い形の思いを持っている彼のためになると確信していたから。
桜が、彼にしようとしていることが手に取るように分かって、勇気はひとつ、決心をした。
「…村松君、川口君、榎本灯君、話があるんだ。彼、と彼のそばにいるあの人には、迷惑をかけたくない。だから、力をかしてほしい、君たちも、彼に救われたんでしょ」
その言葉に、三人がうなづいてくれることを、勇気は知っていた。
そばで、彼の優しさに触れたら、彼のために何かをしたくなるのだ。
彼を思って、彼を守りたくなる。
だから、この三人に声をかけた。
どうせ、もう、この三人には何もないのだから。
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