古道
古道の瞳からぽたぽたと涙が流れるのを見て、ココはぎゅうっと胸が締め付けられるのを感じた。
だけど、いつもと違って苦しくて死んじゃいそうじゃなかった。
ぎゅうっと締め付けられて、それでもどこかその締めつけが心地よい。
いつもゆらゆらとおおきな波になっていたもやもやが、今日はなんだか穏やかだ。

「心路はどう? 俺のことを思ってくれている?」

古道の優しい声が、ココの胸にストンと落ちてきた。

「…こ、こころね、古道のことが、大好き。それだけが良かったの」

そうだ、昔はそうだったんだ。
古道のことが大好き。
お母さんもお父さんもいなくなったって構わない。
だけど、古道がいなくなったら、心路は寂しかった。
たったそのひとつの思いだけで、できていた。
ぎゅうっとまた苦しくなって、心路の頬を温かいものが何度も伝う。

「こころもちゃんと、古道のこと、おもいたい。ほかのこと、かんがえたくない」

ぐちゃぐちゃになった顔、見せたくないな。
そう思っていても、涙は止まらないし、心路もたくさん伝えなければいけないんだって気づいた。
古道が泣いている姿なんて、心路はあんまり見たことがなかった。

「ほかの人に、抱かれたくないし、こどうだけでいたい。でも、どうすればいいか、わからなかったの」

「うん」

「で、でもね、こころがこうすれば、みんなこころのことを思って、あの子なんてどうでもよくなる、どうでも良くなってあの子が嫌な思いをする。そうわかってたの、わかってたから…、そうするしかないって、思ったの」

つっかえつっかえでも、伝わって欲しかった。
古道の涙は、とっても綺麗で、見ていたいけれど、見ていると苦しかった。

「で、も、やだったの、ほんとは、やで、いやで、しんじゃいたかったの。自分が、いやしくて、みにくくて、しんじゃいたかった」

「うん」

「どうしたらいいか、わからなくなったの」

「うん」

優しい相槌が、ゆっくりでいいから話してと促してくれるようで、ぽろぽろと言葉が落ちていく。
どれも無視していた気持ちだって気づいたら、苦しくて仕方がなくなった。

「も、う、こどうだけ、古道をすきだって、きもちだけで、いても、いいのかな」

心路の言葉に、古道の目が大きく開いた。
ぽたりと落ちた涙はとても大きな粒で、心路は握っていた手をそっと離して古道の頬に触れる。
涙で濡れた頬をなでて、両手で挟む。
あたたかい頬が許してくれるようで、思わず頬が緩んだ。

「心路、俺のことだけ思って。お前が辛いなら、俺はいくらでもそばにいるから、何度だって抱いて、抱きしめて、キスして、わかってくれるまで愛すから。俺を心路のものにして」

初めて、古道の本当の気持ちがわかったような気がして、心路は嬉しくなった。
ふたりしてバカみたいに泣いて、だけど、心が軽くなったような気がする。
不安がほころんだような気がした。
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