その結果
「はぁ、どうして、またこう、…こうなるって想像できないかな」
風紀委員会の高級な椅子に腰をかけている聖が、疲れた、というようにぐったり背中を背もたれに預けた。
珍しく言葉尻が強くなっていて、古道とココは顔を合わせて笑う。
新しく紅茶を入れて聖に運んできたセイもため息をついた。
「しかも文化祭前って言うところがまた浅はかよね」
「親衛隊を解散させちゃえば、その親衛隊達が縛りなく自由に制裁でもなんでもできるようになるのにねえ」
ココが小さな声で囁いたのを聞いて、聖が大きく頷いた。
今は幹部だけで集まっている。
「今日だって土曜日なのになあ、それに父さんと飯行く予定だってあるのに」
古道の囁きに、ココも頷いた。
セイからもらった紅茶を一口飲む。
暖かいそれに身体があったかくなった。
ノックの音が聞こえてきて、笑っていたココが静かになる。
ドアが開き光が入ってきた。
生徒会も今日は仕事のようだ。
「ひーくんだ」
ココが安心したように声を上げる。
立ち上がって出迎えたココは光を引っ張り、ソファーに腰を座らせた。
嬉しそうなココに他の3人も思わず笑う。
「俺は書類持ってきただけだぞ」
そう言って笑う光がココの頭を撫でる。
あたたかい光の手に嬉しそうにココが笑った。
「俺にもしてくんないの、ひーくん」
「して欲しいのか」
「いや?」
「からかいやがって。桜庭委員長、生徒会からの書類です」
そう言いながら、立ち上がった光が書類を聖に渡す。
もう行くの、とさみしそうなココに、光は笑った。
「また今度遊ぼう。生徒会も文化祭の準備で忙しいから、俺は行くよ」
「ひーくん、今度お茶しようなー」
「ひーくん、お仕事頑張ってねー」
「ああ、ふたりもな」
そう言って手のひらをひらひらと振って光が出ていくのを見る。
風紀委員会も束の間の休息は終わりだ。
聖が背を正したのをみて、ふたりも腰を上げる。
ココ用のタブレットをセイから手渡されて、古道と頷いた。
「ふたりとも見回りいってらっしゃい」
「はーい」
鼓動の間延びした返事に聖が笑う声が聞こえてきた。
古道が開けたドアをとおり、タブレットを斜めがけのカバンに入れる。
差し出された手を握り返して、ココはよしっと声を上げた。
古道とココは今日は校舎内の見回りを任されていた。
土曜日の今日も文化祭の準備をしている生徒がいるため、見回りをしないといけない。
しかも、副会長が親衛隊を解散させたせいで、制裁行為が多発していて見回りを強化させている。
本当はココと古道、聖は予定があるため、休みをもらっていたが増えた仕事のせいで、見回りや書類整理に参加しないといけなかった。
今日は2.3年生のクラスの見回りを行う。
各クラスに顔を出して歩いていた。
「みんな頑張ってるね」
誰にも聞こえないように古道に話しかける。
あたりを見渡しながら歩いている古道は、ココを見て笑った。
「そうだねえ、今年は風紀も仮装で参加できるから楽しみだね」
「文化祭はすき。古道と一緒にいれるもん」
「俺もココちゃんと一緒にいれるのは嬉しいな」
ぎゅっと握った手を少しだけ振って遊んでみる。
古道の笑い声が聞こえてきて、ココの心臓がきゅっと締め付けられた。
「古道、だいすきだよ」
小さく囁いて古道を見上げる。
古道は、いつもよりもうんと優しくて甘ったるい顔をしていた。
「俺も大好きだよ」
甘くてとろけるような声に、ココは切なくなった。
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