見回りの話
「さあ、仮装のテーマは決まったから本題の会議をしよう」
飼い主様の言葉で全員背を伸ばす。
それから配られていた資料を開いてみた。
「では、今回の掲示物作成、やりたい人はいるかい? 今回は今年一年の取締件数と取締内容、それから誰にでもできる護衛術の方法で行こうと思う。掲示場所は一年生の階の多目的ホールに掲示する予定だけど」
「それなら1Aの伊馬が適任だと思います」
「伊馬? 叶井から進められているがどうかな」
「そういうの得意なので、任せてもらえたらがんばります」
「叶井は2Aか、去年も担当してくれていたな。引き継ぐ意味も兼ねて、そうだな、ふたりに任せようか。異議のあるものは?」
反対するものはいなかったため、ふたりに決定する。
当日も掲示物の案内をしてもらうため、見回りからは外されることが決定した。
伊馬は古道と同じように制圧などの実施を行う生徒で、叶井は情報管理や書類整理を主に行っている。
風紀委員会は基本的にふたりひと組で情報整理を行う生徒と、制圧などの実施を行う生徒と組んで行う。
情報管理を行う生徒が情報共有用のタブレットとインカムを持ち、指示を出す形で警備を行っていた。
「それでは掲示して欲しい内容はこの書類にあるので頼むわよ、伊馬君、叶井君」
「はい」
ふたりは委員長や古道たちの席から一番離れたところに移動して座る。
残りの生徒は見回りのペアを決め、どこを見回るかを決めないといけない。
大まかなペアはだいたい決まっているが、今回叶井と伊馬が抜けるため、ペアの変更をしなければいけない。
それも含めて話し合いを再開させた。
「文化祭は大きなイベントだからね、ハメを外してしまう生徒も多い。それから、心路は保護対象にもなっているからいつもどおり古道と頼むよ」
「了解。そうなると一番リスクの高い外の見回りを行ったほうがいいか」
「いいや、寒くなってきたし、心路の体も心配だし。それから空き教室など、空いてる階の見回りをしてもらう。何か異議のある人はいるかな?」
「ないです。犬山先輩には中であったかくしていて欲しいです」
ココはそう言ってくれた白井に笑いかけてみた。
白井が嬉しそうにブンブン手を振るのを見て、古道が笑う。
「じゃあ、去年と同じように、ココちゃんと俺は校内ね」
「では、ほかの生徒だが、黒瀬は僕と一緒に風紀対策室に残ってもらう。そこで来賓への注意喚起を行う。セイは白井と組んでもらい、一年生の階を回ってもらう。一年生の階では、慣れていない子達が多いし、保護者などが来られることが多い。何かと起こりやすいだろうからね。外部からの来校のある午前は特に注意するように」
「はい。よろしくお願いします。桜庭委員長」
「星野副委員長お願いします」
挨拶を交わしてから、次々と飼い主様がペアを決めていく。
性格なども加味して考える姿にココはすごいね、と古道に耳打ちした。
ココも決められていく内容を、目の前のパソコンに入力していき同時に見回りリストの作成も行っていた。
ココちゃんもすごいよ、と褒められて、小さく笑う。
「外の見回りは、体育委員会と柔道部と空手部の数名も含め、1グループ3人づつで見回ること。いいかな」
風紀委員会のいいお返事が聞こえ、会議は終わった。
思ったよりも早めに終わり、ココの資料作成も直ぐに終わる。
コピー機で印刷し、委員に配り、あとは体育委員会と柔道部・空手部への資料と分ける。
生徒会への書類を印刷し終えたところで、うんと背伸びをした。
ほかの委員は解散させて、飼い主様とセイ、ココ、古道は残った。
セイの入れてくれたお茶を飲んで、うんと背伸びをする。
「文化祭前の見回りはいつもより人数増やして見回ることもできているし、今年も何事もなく終わらせないといけないね」
「そうね。古道、ココも気を引き締めてね。私たちも仮装をするから、ココ、特にあなたは気を付けないとね」
セイの手がココの頭を撫でた。
ココはへらりと笑って、うん、と返事をする。
配った資料に抜けが無いか確認している飼い主様もココの返事にいい子、と返してくれた。
「今年は花咲くんという厄介な子もいるから、制裁とかも見逃さないようにしないと。そういえば、勇気くんは最近どうなのかな」
「彼に相変わらず連れ回されているけど、取り巻きが減ったからか制裁は受けていないわね」
「心路はもうそばにいなくていいのかい?」
「うん、もーいい。大丈夫みたいだから、もーいいの」
ココの言葉にそう、と返事をしながらセイは嫌な予感が胸をよぎった。
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