文化祭のおはなし
「古道、心路、さあ座って」

ニコニコとした飼い主様に促されて、ココは古道の手を引きながら腰を下ろした。
今日は楽しそうな話し合いなのかな。
そう思いながら、古道を見上げれば同じように目を合わせてくれた。
変なの、と首をかしげて見せれば、飼い主様は笑う。

「来週の土曜に、父さんが食事に行かないかと言っていた」

「お父さんが?」

ココの弾んだ声に古道も思わず、というように古道が笑った。
きっと古道も嬉しいだろう、そう思いながらぎゅっと手を握る。
それに気づいたのか、飼い主様も同じように笑ってくれる。

「それを伝えたかったんだ。ああ、あと、文化祭当日、風紀委員会と生徒会は各会で統一した仮装をすることになったからね」

「へぇ、うちはどんな格好をするの?」

「それをこれからの会議で話そうと思ってね。それから、見回りの割り振りも決めて、あとは風紀委員会の取締件数とかのポスターの作成の割り振りとかもしないとだね」

「わー、会議長引きそうだね」

「そうだねえ」

飼い主様が眉にしわを寄せてみせたのを見て、ココが笑った。
うんと背伸びをしてから、準備をするかと立ち上がった。
飼い主様が準備してくれた資料を、会議用の大きな楕円形のテーブルに各枚数ずつ載せていく。
情報管理を行う生徒と、制圧などの実力行使を行う生徒では分かれて座るため、違う書類を確実においた。

「そういえば、副委員長様は?」

古道の尋ねる声にココも首をかしげてみせた。
いつも飼い主様と一緒にいるセイお兄様がいない。

「生徒会に書類を届けに行っているよ」

「ふうん」

古道はそう答えてから、配り終わった資料を見て、満足そうにソファーに戻った。
ココもとなりに腰を下ろして見る。
ノックの音が聞こえてきて、ドアが開いた。

「おつかれさまです」

「お疲れ様」

次々と風紀委員達が集まり始めて、飼い主様が立ち上がった。
ココは古道の手を握って、こっそり耳打ちする。

「仮装、ペアのやつにしようね」

そう言って笑えば、古道がくしゃりと笑った。
当たり前と返事が返ってきて、ふたりも会議用の席についた。
セイお兄様も返ってきて、副委員長席に腰を下ろす。

「風紀委員会、文化祭に向けての会議を始めます」

セイの挨拶を聞いて、会議が始まった。

「まずは文化祭の仮装について。今年は生徒会、風紀委員会の各会で仮装をすることになったわ。その仮装の案をまとめるから、各自希望があったら手を挙げて」

セイのいつもの言葉に、場は和やかになる。
風紀委員会は結束力がなければ、仕事を行えない。
ココも古道もほかの委員とは違う立場だが、それなりに信用している。
仮装と聞いて、嬉しそうに手を上げる委員達に、古道は笑った。

「はいっ!! 犬山君に可愛いの着て欲しいですっ」

「同意の意っ」

「激しく同意!」

賛成というように上がっていく手に、ココは目を大きくした。
思った以上に手が上がって、ココは困ったようにまゆを寄せてみる。
古道が笑いながら、俺も同意、と髪をなでてくれた。

「犬山先輩に可愛いの着せて、それに沿うように大神先輩の衣装も考えたいですっ」

「ああ良き〜〜〜っ」

「そうなったら、委員長と副委員長もおんなじようにしたいですっ」

「ああそれも同意〜っ」

「え、僕たちも?」

ニコニコと眺めていた飼い主様とセイが目を見開く。
盛り上がっていく委員たちに仕方ないな、と笑った。

「何にしようか、モチーフがあったほうがいいわね」

「そうだね」

飼い主様とセイの言葉に委員たちが首をかしげる。

「うーん、赤ずきんちゃんとかどうですかね?」

「ほかの委員をどうするの」

「確かに…。ほかの委員もしっかりモチーフに沿うようにしたいですねっ」

「白井、そういうの好きなんだね」

風紀委員会は現在二年生と一年生で構成されている。
声を上げる一年生の白井は、何かと明るく風紀委員会のムードメーカーだ。
白井のとなりで、冷静に発言し、ほかの委員をどうするのかと話すのは同じ一年生の黒瀬。
彼らもとても見た目がよく、仕事もよくできる。
次の委員長はおそらく黒瀬で、副委員長は白井になるだろうと予想させれていた。
ほかの委員もふたりを信用している。
ココはそんなふたりを見て思わず笑った。

「それに警備がしやすいように、動きやすいのがいいと思うけど」

古道の言葉に、白井と黒瀬、ほかの委員が頷いた。

「うーん、あっ」

「白雪姫とかどうかな」

「白雪姫?」

「犬山先輩が白雪姫、大神先輩が王子様、委員長が王様、副委員長様が王妃様で、ほかの委員はこびとっ」

「狩人と鏡は?」

「そこは狩人が黒瀬君で、白井君が鏡でしょ〜っ」

白井と黒瀬やほかの委員の言葉にアリかもしれないね、と飼い主様が頷いた。
古道と心路はいいかいと尋ねられ、ココは頷く。

「オーケー。ただ、白タイツとかは履かないからな」

「もちろんです、大神先輩! ちょっとダークな感じの白雪姫で作ろうかな」

「衣装は白井クンが作るのか」

「俺そういうの好きなんですよー」

楽しみだなと笑いあう様子を見て、ココも口角を上げた。
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