眠る
えっちしたいなあと呟いていたココは、ベッドに下ろしたらぐっすり眠ってしまった。
その眠り顔はまるで子どものようにあどけない。
ココの髪を梳きながら、額に口付けた。

「愛してるよ」

古道は口元を緩めて、隣に横たわる。
小さな身体を抱きしめ目を瞑った。
ココの寝息が心地よくて、眠りを誘われた。

目を醒ますと、古道に抱きしめられ眠っていた。
いつのまにか日付は変わっていて、朝の7時。
ココはゆっくりと身体を起こして、窓の外に視線を移す。
綺麗な空の色に目を細めた。

「寒い…」

のそのそと大きな腕の中に戻り、スンと匂いを嗅ぐ。
古道の体温と自分の体温が混ざっていくのが心地よい。
このままひとつになれたら、どんなに幸せなのだろうか。
そんな風に思いながら、ココは瞬きをした。

「古道、起きて」

「…ん、」

「おはよ…」

「ああ、おはよう。…昨日帰ってから一緒に寝ちゃったみたいだ」

「うん…、久しぶりにぐっすり眠れた気がするよ」

「それは良かった」

小さく笑う古道に、ココは頷いた。
それからぎゅっとしがみついて、もう一度息を吸う。
土曜日だけれども、今日は風紀委員会の会議がある。
ふたりは名残惜しそうに笑いながら、身体を起こした。
今日の会議は来月に行われる文化祭の警備についての話し合いを行うため、必ず参加しなければいけない。
その前に、飼い主様と話し合うことがあるから早めに出る。
ゆっくりと着替えをして、朝食を食べた。

「ココちゃん、俺以外が作ったものもたべれるようにならないとだね」

「どうして?」

「どうしてって、俺がいない時、どうするの」

「何もたべない。古道が作ったのしか食べない」

「それはダメだよ」

古道の言葉にむすっとしたココに、古道は苦笑した。
最近のココは、依存度が増しているような気がする。
それを心地よいけれど、このままではいけないとも感じていた。

「…古道、どこか行っちゃうの? ココのこと、嫌いになった? おいていくの? 初めてじゃないから? どうして、どうしてそんなこと言うの…?」

ココの綺麗な瞳に薄い水の膜が張り始める。
それはボタリと大きな粒になって、テーブルの上に落ちた。
純粋に、その光景が綺麗だと感じる。
ぼたぼたとこぼれ落ち初めて泣き声が聞こえてから、古道は慌てて立ち上がってココを抱きしめた。

「ごめん、ココちゃん。怖がらせちゃったね。大丈夫、どこにもいかない。俺はずっとそばにいるよ。ココも俺のそばにいてくれるでしょ。愛してるよ、俺のココ」

「…も、そんなこと、言わないで、絶対。…ココには、古道しかいないんだから…っ」

ヒクヒクとしゃっくりをあげながら、ココは古道にしがみついた。
ココの甘いバニラの香りに、目を瞑る。
自分しかいないと言う小さな身体をきつく抱きしめ、陶器のような肌に口付けた。

「ごめんね」

「…ん、ん」

泣き止んで落ち着くまで抱きしめていよう、そう決めた古道はココを抱き上げた。
ぎゅっとしがみついてきたココに笑いながら、食器は帰ってきたら片付けることを心の中で決める。
ココのカバンと自分のカバンを手に取り、部屋をでた。

「ココちゃん、帰ってきたら美味しいココア入れてあげるよ」

濡れ羽色の髪が揺れ頷くのを感じて、小さく笑う。
日が昇るのが遅くなってきて、廊下はまだ薄暗かった。

その先は雨模様 end
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