悪夢
「ひっ、あっ、はっ、はぁっ、ん、あ…、」

バッと身体を起こしたココは頬を伝う冷たい涙に気づいた。
息苦しさが胸を襲いうなだれる。
ぎゅっと胸元を押さえて、呼吸を整えようと深呼吸をした。
深呼吸をしていくうちに余計呼吸が乱れ始め、苦しさに襲われる。


「こど…」

小さな声をあげながら、古道の腕に触れる。
すぐに目を覚ました古道は、ココの様子にハッとしすぐに起き上がった。
背中を撫でながら、ココにキスをして、呼吸を奪う。
ある程度落ち着いてから、古道はココの額にキスした。


「どうしたの、ココちゃん」

「いやな、夢見たの」

「そう、思い出さないようにもう一度キスしようか」

「うん…、うん、キス、」

すっと目をつむったココにキスをして、抱きしめる。
落ち着けるように、何度も背中を撫でた。
伸びてきた手が古道の首筋に触れ、その指先が肩口へ進む。
それから細長い傷跡に触れて、ココは静かに泣き始めた。


「ひっく、う、う、古道、古道、古道」

古道のTシャツを着たココは真っ白な足をさらけ出しながら、古道に抱きつく。
肩口にキスをして泣きながら、何度も自分を呼ぶココの声に古道は静かに答えるように抱きしめた。


「ココちゃん、俺は大丈夫だから」

耳元でそう囁けばココはこくこくと頷きながら、古道にしがみつく。
静かな泣き声は空が明るくなるまで聞こえ続けていた。


ここを抱きしめたまま眠ってしまい、昼頃目が覚めればココも寝息を立てていた。
柔らかく静かなリズムに古道はホッとする。
赤くなった目元にそっとキスをして、ココを横たえた。
洗面所にタオルを取りに行くためベッドから降りる。


「…あの日の夢を見たのか」

自分の肩口を見つめる。
引き攣れた傷跡に手のひらを当てると、聡明に思い出された。
キラリと光った先ほどまで自分が握りしめていた希望が、肩に痛みを伴って突き刺さる。
泣き叫ぶココの声が耳から離れず時々聞こえることがあった。
思い出されたかのように聞こえ出した声が、古道の胸を締め付ける。


寝室の方から悲鳴が聞こえてきて、古道は戻る。
ココが頭を抱え泣いてるのを見て、もう一度抱きしめた。

「もうあの日は終わったんだよ、心路」

悪夢から抜け出せないでいる片割れをきつく抱きしめ、古道も一緒に悪夢へと足を踏み入れた。

暑い日が続いていく end
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