暑い日が続いていく
「ココちゃん、こっちのお肉も食べて」
「いらない」
古道にしか聞こえない声で答えたココは嫌そうに眉をひそめた。
それから一口しか食べていないサラダの皿をぐっと古道の前に差し出す。
「ココちゃん、最近全くご飯食べてないでしょ」
「だって、」
「だって? 暑いから? ココちゃん」
「古道、なんでそんな怒るの」
どうしようもないくらい虚しい気持ちに襲われて、古道はココをじっと見つめた。
きょとんとしたその表情に思わず、笑ってしまう。
そんな表情すら愛おしくて、どうしようもない。
「ココは俺をどうしたいの」
「ずっと一緒にいたい」
「俺もだよ、あーもう、ココちゃん、好きだ」
「うん、ココも」
嬉しそうに笑顔を見せたココに愛おしさが増す。
それからココの頬を撫でてキスをした。
ポケットの中からセイから預かっていた小さな小箱を取り出して、マカロンを出す。
そのマカロンを指先でつまんでココの前に差し出した。
「これだけは食べて」
「ん」
そっと古道の指先からマカロンを食べる。
ほんのりとした甘い味が美味しい。
ココは古道に笑いかけて、指先にキスをした。
それから皿に残ったサラダをじっと眺める。
古道の作ったものじゃないそれは、まるで粘土とかプラスティックで作ったおもちゃみたいだ。
だから、そんなの食べれない。
研修旅行以降、料理が全部、古道が作ったもの以外はおもちゃにしか見えなかった。
「お前、何かしてる?」
不意に聞こえてきた声に体が固まる。
皿の脇に置かれた手が見えてとっさにその手を握る。
ぎゅうっと握ると古道がすぐに握り返してくれた。
「ココが何かしたって?」
そう言って古道は笑いながら会長を見つめた。
会長は古道に全く視線を移さず、ココをじっと見つめる。
「お前、何かしてんの?」
もう一度同じことを聞いてくる会長にココがびくりと身体を震えさせた。
古道の親指がココの手の甲を撫でてから、すぐに離れる。
それから、古道はゆっくりと立ち上がって、会長の胸ぐらを掴んだ。
「…しつけぇんだよ強姦魔」
そう言って唾を吐きかけてから、ココの腕を掴んだ。
ココの細い腕がか弱くてまた眉間にしわを寄せる。
大きく舌打ちをしてからココの腕を掴んだまま食堂を後にした。
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