ひっかき傷
「うぇっ、…げほっ、げほっ」
部屋に入ると、嫌な臭いがしてくる。
シャワー室から聞こえてくるせき込む声に、古道はああ、と声をあげた。
窓を開けて部屋の中のにおいを消すようにしてから、シャワー室に入る。
透明ガラスの奥で、座ってウォッシュタオルで身体を強く擦るココの姿が目に入った。
「ココちゃん」
小さく名前を呼んで、古道はしゃがむ。
そっとココを抱きしめて、冷たい水に濡れた髪に口付けた。
「こど…、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ココの初めて、ごめんなさいっ、ココ、もう、初めてじゃない、ココの初めて、約束って、ゆったのに」
きれいに切りそろえられている爪が、それでもココの腕を傷つける。
ひっかき傷が二の腕に増えていくのを見て、古道はココを抱きしめる腕に力を入れた。
「ココちゃん、昔のこと思い出しちゃったんだね」
小さくそう呟いて、謝り続けるココの唇をそっと自分の唇で塞ぐ。
苦しそうに息をするココの口内にもっと、と舌を差し込んだ。
「ココちゃん、心路、好きだよ」
古道の囁きとキスに、ココはゆっくりと瞼を閉じた。
くたりと身体から力が抜けたココに、温かなシャワーをかけて汚れを落とす。
それからふかふかのタオルで小さく細い身体を包み、ベッドに寝かせてからシャワー室を綺麗に整えた。
部屋の中から小さな泣き声が聞こえてくる。
部屋の鍵を閉めてから、ココのもとに戻った。
「ココちゃん、起きた?」
うつろに天井を見つめるココの頬に、涙が伝う。
そっとココの唇を指先で撫でてから、キスをした。
「好きだよ」
甘く低い声で何度も囁きながら、ココの身体にキスを落とす。
柔らかな肌に指を這わせていけば、爪先がビクリと揺れた。
「あ、っ、ん…」
「ココちゃん、何してほしいの」
「…ん、キス、して」
答えるよりも先に口付け、ココの髪を撫でる。
柔らかい太ももを指でくすぐり、濡れた先端を撫でた。
小さな声で喘ぐココの白い首筋にキスをして、指先をぬかるんだそこに差し込む。
「あ…っ、こどう、こどう」
何度も名前を呼ぶココに答えながら、中をかき回す。
ココの中はドロドロに蕩けていて、指先に感じる心地よさに古道は吐息を零した。
「ココちゃん、キスして」
「ん…、は、あ…、ん」
ココの柔らかな唇が優しく触れてきて、それにこたえるように舌を差し込み、ココを抱いた。
「あいしてる」
かすれた声で聞こえた言葉が悲しく響いた。
prev |
next
back