見せる熱
「大神さぁ、桜に近寄るのやめてくれない」

「俺から近寄ってないけど」

「でも桜が寄ってくでしょ」

入口に寄りかかっているココを眺めながら、古道は大げさに両手を広げて首を傾げた。
ココはそんな古道に視線を寄せてから、同じようなジェスチャーを取る。
話というのは、花咲が関していたことで、古道が想像していた通りだった。
どうしたものか、とココを眺めていると、村松に声をかけられる。


「話聞いてんの? 桜に近寄んなって」

「はいはい。わかってないね、俺が風紀のイヌだって知ってんだろ」

「…知ってるけど?」

「じゃあ、会長様から聞いてねえんだな」

ため息をついてから、ベッドメイキングを施されたベッドに腰を掛けた。
綺麗なベッドに皺が寄って、古道が座った形を作る。
訝しげな顔をしている村松は、振り返ってココを見た。
ココは俯いて自分の爪先をパタパタさせている。
子どもが退屈をしているような仕草に古道は小さく笑った。


「…知らないなら教えてやるしかないな。心路、こっちにおいで」

頷いたココはゆっくりと近づいてくる。
ちらりと村松を一瞥してから、古道の元に来た。
ココは古道の隣に腰を下ろして、寄り添う。


「…ふざけないでよ、大神」

「先輩にその口はないんじゃないかなっと、ねえ、ココちゃん」

ココをベッドの上に押し倒しながら、微笑みかけた。
目を見開いたココは古道の考えに思いついたのか、一瞬眉を寄せてから瞳を閉じる。
くっと顎をのけぞらしたのを見て、古道はココの首筋に唇を寄せた。
白い首筋に痕をつけ、Tシャツの中に手のひらを忍ばせる。
柔らかな腹部を撫でて、指先で擽った。


「な…、にして…」

村松の言葉にこたえずに、古道はココの身体を弄る。
びくびくと身体を震わせる様子に微笑み、ココの耳元で愛をささやく。
シーツを握るココは、静かに唇を震わせていた。


「ココ、綺麗だよ」

古道の声に、ココは頬を上気させ震える。
歪むシーツさえもココを魅せる道具のようだ。
村松が座り込む音が聞こえた。
ちらりと視線を寄せると、荒い息を吐いてココの痴態をじっと眺めている。


「ほら、ココちゃん。会計クンが見てる」

ふるふると首を振ったココは、ポタリと頬に涙を伝わせた。
恥ずかしさを感じているのか、ココは顔を隠そうと枕を抱きしめる。
その枕をどけて、口付けた。


「会計クン、分かった? 風紀のイヌのこと。だからさ、君の大好きな花咲クンには興味がないんだよね」

ココに引き寄せられ、古道はココを抱きしめる。
背中を撫でて口付けするとココがゆるゆると微笑んだ。
その笑みが可愛らしくて、古道も笑う。


「わかったなら出ていってもいいよ?」

そう言って笑うと、村松は焦ったように走って出ていった。
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