そのあと
ウトウトと眠りについた心路の頭を撫でてから、病室を出た。
そこには会長がいて、古道はため息をついた。
くいっと談話室を指差して、ふたりで歩いていく。
会長の顔色はあまりにも悪くて、古道はさきほど目を覚ました心路と比べて思わず笑う。

「…犬山は」

「大丈夫。傷が痛むみたいでいたいいたいって言ってたけれど、麻酔が効いていて今はぼやぼやしてる」

「そうか」

「まあ、これからだな、痛みがひどくなるのは」

「知ってるのか」

「俺も同じ場所刺されたことあるから知ってる」

そういえば、ひどく傷ついたような顔をする会長に、古道は苦笑した。
綺麗な世界で過ごしてきたんだな、と思いながら、途中で買ったコーヒーを飲んだ。

「おもったより落ち着いてるんだな」

「…まあな、心路を傷つけた当の本人が死にかけてれば、どうでも良くなるわ」

「花咲もさっき意識戻ったって。傷がひどいから、もう二度と立てないかもしれないってさ」

「どうでもいい、そんなやつのこと、心路はもう忘れたから」

「は?」

傷ついた顔から驚いたような、訝しげな顔に変わった会長をジッと見つめる。
それから、コーヒーを揺らして、テーブルの上に置く。

「ココちゃんさ、クリスマスパーティーのあとのこと、すっかり忘れてるんだわ。多分あれは、当分思い出さない。…思い出さなくていい」

「…忘れたのか、あんなことを」

「忘れてもいいんだよ。警察にもそう伝えとく。あそこの部屋、隠しカメラあるだろ。それ見せればいい」

「…」

あっけにとられて声が出ない会長を軽く笑ってから、ソファーの背もたれに身体を預けた。
それから、ため息をついて、携帯を取り出す。
父からのメッセージに返信を返してから、目をつむった。

「犬山は、それでいいのか」

「いいんだよ。思い出すだけ、あの子が苦しむだけだ」

「それも、そうだな。…桂木は、そのまま警察に連れて行かれたから、学園ではこの事件を公にしないことが決まった」

「それでいい。心路が思い出すような機会が少なければ少ないほどいいから」

「あとは、花咲は退学が決まったし」

「残りは警察が何とかするだろ。あとはうちの父さんが花咲家をどうするかは知らないけれど」

黙っていると、落ち着かないから、古道はぽつぽつと話し続けた。
会長はそれに気づいていたのか、静かに相槌を打ちながら、聞いてくれる。
心路のことがなければ、仲良くなれたのかもしれないな、と古道は思いながら、話を続けた。
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