お揃い
口元を歪め、甲高い声で笑い声を上げた心路に、怯んだように花咲が足を止めた。
そばに控えていた生徒も顔色を悪くして心路を見ている。
その姿があまりにも滑稽で心路は笑う。
「あはは、性欲しかなくて? 他人の言うとおりにレイプしまくるクソみたいな人間以下の人達、帰ったら? この人の言うとおりレイプしたいならすれば」
「っお前らっ、早くやれよ!!!!!」
「ココ、もう初めてじゃないし。どーでもいい。今更他人に抱かれたって、心路は古道だけのものだってわかってるから、どーでもいいの」
「お、おまえ、」
「ただ、あなたたちがこの学園にいられなくなることだけはわかるよ。古道、心路のことになると何するかわからないし。それでもいいならお好きにどうぞ。そのきったないモノ、突っ込んでレイプでもなんでもすれば」
心路の言葉に冷静になったのか、生徒たちが次々に花咲から視線をそらし、部屋を出ていった。
その姿に心路はまた笑い声をあげ、花咲をあざ笑う。
止まらない笑いに、花咲が顔を赤くして、また心路を蹴り上げた。
「ふ、ふふ、痛くなぁい。暴力、レイプ依頼、ふふ、あなた犯罪者とおんなじだって気づかないの、それが許されるあなたの中の神様って、とんだガバガバアバズレ神様なんだね、笑っちゃう、笑いが止まらないよ」
花咲がきらりとひかるなにかを振り上げた。
その時、見知らぬ部屋のドアががらりと空き、左肩にひどく鋭い、熱を持った痛みを感じた。
声にならない悲鳴が上がって、そのあと、花咲がそばに倒れた。
目の前には最近気にもかけていなかった、勇気の横顔がある。
花咲のつんざくように響く悲鳴が聞こえてきて、心路は息を浅く繰り返す。
「っ、は、っは、なに、ゆ、うき、くん、なにし、てる、の」
「…っ、い、いぬやま、君、桜は、もう死んじゃうから、もう大丈夫、だよっ、もう、大神くんと、ふ、ふたりの世界で、い、いていいん、だよっ」
がくがくと震えながら、勇気がなにかを見せてくる。
花咲はとなりで悲鳴を上げながらのたうちまわっていた。
心路の感覚はごちゃまぜになって、勇気の言葉をゆっくりと追った。
勇気が持っているのは、どこにだってある包丁だった。
「ば、か、だね…、君、こころ、きみの、こと、なんともおもってないよ。会計さんも、書記さんも、双子の補佐のひとのことも、もうしらな、いひと…」
「…わかってる、わかってる、よ、いぬ、やまくん、それでも、俺は、きみたちの世界を壊したくなかったから、」
「はは、ばっか、みたい、かみさま、いない、けど、いたら、このおばかさんなんとかして」
そう呟いて、縛られていた手を開放してもらう。
視界が歪んでいる中、古道の声が聞こえてきた。
勇気が切なそうに笑うのが見えたけれど、古道の声しか聞こえてこない。
「心路っ」
「ふふ、こど、おそろ、いに、なっちゃった」
「馬鹿なこと言うんじゃないよ、お前」
古道の声はひどく焦っていて、ばたばたとどこかに連れて行かれることだけは分かった。
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