桜が散って
桜が散って、葉桜に変わり始める頃。
入学してから1ヶ月近く経ち、中等部と変わった教室にも慣れ始めてきた。
持ち上がり組がほとんどのこの学校でもこの時期には、新入生歓迎会を毎年行っている。


「新入生のみなさん、これから高等部新入生歓迎会を開催したいと思います」

生徒会副会長の開会宣言を受け、大きな歓声が上がった。
薄暗い講堂の中、壇上だけが明るく輝いている。
そこに立っている副会長は長めの髪を一つにまとめ空調になびかせていた。
明るいライトに照らされて、副会長は小さく笑う。
一番手前に近い席に、愛おしい思い人がいた。


「副会長が笑っているね、セイ」

「聖委員長も笑っていますよ」

「ふふ、仕方ないでしょ。なんだか楽しみなんだよ」

「ほんと、性格の悪い人ですね」

講堂の壁側の待機席に腰を下ろしている風紀委員会のふたりは、くすくすと笑い声を漏らした。
生徒会役員のきらきらと楽しそうな、まるで青春の真っただ中にいるような瞳。
聖は今後この綺麗な瞳がどんな風に揺らいでいくのか考えると、微笑まずにはいられなかった。



「暇だね、古道」

「そーだね。中でつまんねー立食パーティーに参加すんのも嫌だけど、外の見回りもつまんねーな」

「イヌはイヌなりに、楽しく遊んじゃう?」

タブレットPCを片手に持ちながら歩いているココは、古道に笑いかける。
それからトンと身体を寄せて頭を摺り寄せた。
大きな手のひらがココの頭を撫でる。


「今頃壇上の上でニコニコしている飼い主様に怒られちゃうでしょ」

「そうだね」

笑みを浮かべた古道に、ココもとろけるような表情を見せた。
そんな表情に吸い寄せられるようにキスをする。


「ん…、あぅ、」

「ココちゃんエロいねぇ」

「もー…。ん、もう一回、チュッてして」

「チュッ、ね」

古道はココの髪を梳いてから、軽くキスを送る。
幸せそうに満足そうにえへへ、と声を漏らしたココは、前を向いて軽やかな足取りで歩いた。

不意にタブレットに視線を移したココが足を止める。
古道が隣にやってくると、ココは満面の笑みを浮かべ呟いた。

「かわいそうにね」
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