オーダーメイド
結婚式場の見学に行って数日。
今日は式の日取りや内容をプランナーと話に来ていた。
千陽は頬を赤らめながらも嬉しそうに、せっせとスケジュール帳にメモを取りながら話している。
それを嬉しいと思いながら、紅茶を飲んだ。

「駿さん、このグレーのスーツ着て」

「ん?」

「絶対似合うから」

「じゃあ、千陽はこれだな」

「白? 似合うかな」

「試着してみますか?」

こくりと頷いた千陽にプランナーが嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て、この式場を選んでよかったと思う。
試着室に入り、プランナーとウキウキ話している千陽の声を聞いて笑った。

「駿さん終わった?」

「ああ」

シャッと音を立ててカーテンを開ければ、千陽が頬を真っ赤に染めて口元を隠す。
それから、とても幸せそうな顔で笑みをこぼした。

「駿さん、かっこいいね…」

「ああ、喜んでくれてよかった。千陽が気に入ったようなら、これにしようか」

「ん!」

「嬉しそうで何より。ほら、千陽も着替えて見せて」

「うん」

試着室に入った千陽に笑いかけてから、ソファーに腰を下ろした。
隣で立って千陽を待つプランナーが嬉しそうに笑っている。
それがどこか嬉しかった。

「千陽さん、肌が白く綺麗なので、白いスーツが似合いそうですね」

「そうですね、あの子は細いから、タイトなものも似合うと思う」

「お綺麗ですからね。そんなお二人の結婚式を担当させていただいて、嬉しいです」

「それは、ありがとうございます。私も本原さんに担当していただけて、よかったと思います」

「ありがたいお言葉です。素敵なお式にしましょうね」

「はい。そろそろかな。千陽、終わったか」

「はーい」

千陽の返事が聞こえてきて、立ち上がる。
白くほっそりとした手がカーテンを開けると、純白のスーツを纏った千陽が現れた。
伸びたグリーンアッシュの髪を軽く纏めた千陽は、どこか大人びて見える。
纏めきれない前髪がさらりと灰色の瞳を隠した。

少し恥ずかしそうな千陽が、俺を見つけて笑う。

「どう?」

「綺麗だよ」

「…っ」

真っ赤に頬を染めながら微笑む千陽の側による。
そっと髪を撫でて、頬を撫でた。

「…とても綺麗だ」

「駿さんも、とても素敵だよ」

小さく笑った千陽の額にキスをすれば、恥ずかしそうな笑い声が聞こえた。
千陽の照れた顔が愛らしくて、もう一度頬を撫でる。

「駿さん、これにしようか」

「ああ、そうだな」

「本原さん、スーツ、これにしたいと思います」

「ええ、お二人ともとても素敵です。こちらの方レンタルにしましょうか」

「ああ、購入もできるのですか?」

「購入になりますと、スーツの細部までオーダーメイドにすることもできますよ」

「では、オーダーメイドで」

考える暇もなく答えれば、隣の千陽が大きな目を更に大きくさせた。
それから面白そうに目を細める。
猫のようなその目が輝いていた。

「決めるの、楽しそうだね」

声もキラキラ輝くように弾んでいて、本原さんと顔を見合わせて笑った。
千陽の喜ぶ顔はいつ見ても嬉しい。

「こんなに楽しみなの初めて」

小さく笑った千陽の背中を優しく撫でてから、もう一度笑った。

打ち合わせを終えてから、ドライブしながら帰る。
隣の千陽はパンフレットを眺め、鼻歌を歌っていた。
時々音の外れるその歌声が心地よくて、口元が緩む。

「どうしたの? 駿さん、笑ってる」

「いや、何にもないよ」

「変なの」

千陽も口元を緩めて小さく笑った。
信号で止まり、千陽の頭をポンポンと撫でる。
バニラの甘いかおりと温かな感覚が身体を包み込んだ。
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