おむかえ
チャイムの音がなって、凛花さんが玄関へ行く。ウトウトと眠たくなってきて、思わずあくびをしてしまった。

「涼太君、お迎えだよ」

戻ってきた凛花さんの言葉に涼太の目が嬉しそうに開いた。
涼太と一緒に玄関に行くと、スーツを着た嶺緒が立っている。
なんでスーツ、と首をかしげると、涼太が笑った。

「今日、会社の用事でお父さんについて行ったんだって」

「へえー」

「嶺緒君、お迎えありがと」

「うん。涼太、冷えると悪いから」

涼太の首にマフラーが巻かれ、コートを着せられる。
いつのまにか、こんなに仲良くなったんだろう。
少しだけ嬉しくなって思わず笑った。

「千陽も風邪に気をつけてね」

「ん。じゃーな、涼太、嶺緒」

嬉しそうに嶺緒と手を繋いで手を振っていく涼太に笑った。

「涼太君幸せそうだったねえー」

帰って行くふたりの幸せそうな姿に、トロンとこれまた幸せそうな顔をする凛花に驚く。
ドアの外から冷たい風が入ってきて、凛花さんの背中を押して室内に入った。

「こう、他の人の幸せそうな姿みてるとこっちも幸せになるよね」

「んー、わからなくもない」

「チョコ成功するといいね」

「そうだな。…凛花さんも明日何か作るの?」

「うん。ザッハトルテ作って、あと夜は軽くご馳走にしようかなって」

「バレンタインでそれくらいするの?」

首を傾げて凛花さんを見れば、優しい笑みを浮かべた。
ソファーに座ってから、凛花さんが指輪を見せてくれる。

「結婚記念日なんだ」

「そうなんだ!」

「うん。だからちょっとご馳走食べて、それからちょっとだけ旅行行くの」

「へえ、いいねえ」

幸せそうに笑う凛花さんにつられて小さく笑う。
そんな姿を見てると、早く駿さんに会いたくなった。
指輪を指先で撫でる。

「会いたくなっちゃった?」

「んー」

恥ずかしくて凛花さんから視線を外す。
凛花さんにからかわれながら笑っているとまたチャイムが鳴った。

「駿さんかな」

「一緒に行こうか」

こくりと頷いて、凛花さんともう一度玄関に行く。
玄関のドアを開ければ、コートを着て鼻先を少し赤くした駿さんがいた。
きゅうっと胸が締め付けられて、目を細める。
凛花さんがいるから抱きついたりはしないけれど、これがうちだったら抱きついていた。

「千陽」

駿さんの息は白くて、急いで来てくれたと思うと嬉しくなる。
隣の凛花さんへ視線を移すと、ニヤニヤと笑っていた。

「早くお家に帰ってイチャイチャしなきゃだね」

その言葉にぼっと顔が赤くなる。
駿さんがそんな俺に微かに笑ってから、頭を撫でてくれた。

「凛花、ありがとう。構ってやってくれて」

「いいえ、楽しかったですよ」

「また遊んでやってくれ」

「ええ、もちろんです」

「凛花さん、ありがと。金内先生にも伝えといて」

「うん、またね、千陽君」

挨拶を交わしてから、駿さんと手を繋いだ。
一緒に手を振って、駿さんの車に乗り込む。

「駿さん、なんで鼻真っ赤なの。車あっためなかったの」

「急いで来たからな」

「んー。…会いたかった?」

「…あんまり、お前が外に出ることないからな」

「ん、そうね。…早くお家帰ろ」

「千陽」

優しく名前を呼ばれて、駿さんの方を向く。
目を細めた駿さんにつられて、そっと目をつむれば少しだけカサついた唇が重なった。

「ん…」

「千陽」

「駿さん、唇カサカサ」

「悪い」

「んーん」

もう一度、チュッと軽く唇を重ねてから、温まった車を走らせた。
チョコレートの味がしたらどうしようと少し不安になったが駿さんは何も言わなかった。
ホッとして温まった車の中、マフラーを外す。

「お家帰ったら、一緒にお風呂はいろ」

「ああ」

間髪入れず返事をくれた駿さんに笑った。
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