こたつに入りながらダラダラと新年を過ごして、一月も半ば。
チャイムの音で目を覚ました。
隣の千陽はもう目を覚ましていて、俺を見て笑っている。
ふわふわと幸せそうなその笑みに、千陽の頬を撫でた。

「俺、出てくるから。ゆっくり寝てて」

チュッと可愛らしい音を立てて額にキスをくれた。
パタパタと玄関へ向かっていく千陽に思わず声を漏らして笑ってしまう。
可愛い仕草に千陽が口付けてくれた額に触れた。
眠る気にもならない。
今日は仕事も休みだし、千陽をベッドに連れ込んでしまおう。
そう思いながら、身体を起こした。
サイドテーブルに置いてあるミネラルウォーターを飲んで、身体を預ける。
ぼんやりとテレビをつけ眺めた。

「…遅いな」

家に誰かが来客する予定もない。
宅配便か何かだろうと思っていたが、宅配便にしては遅い。
様子を見に行こうとゆっくりとベッドから降りる。
上着は千陽に取られているため、着替えてから部屋をでた。
廊下は寝室よりも寒い。
寝室の暖房を切ってから、リビングの暖房を入れた。
薄着で出て行った千陽は冷えていないだろうか。
玄関へつながる廊下のドアを開けた。
そこには千陽とスーツ姿の見覚えのない男が立っていた。

「あ…、駿さん」

どこか緊張した表情をしている千陽が振り返った。
目の前の男は頭をさげる。

「おはようございます。朝早くにすみません」

礼儀正しく挨拶をくれた男は千陽と同じ灰色の瞳をしていた。
同じαの雰囲気を感じる。
千陽の隣に立てば、ホッと一息着くのが聞こえた。

「どうも」

「あ、駿さん。こちら俺の兄さん。千奈津兄さん、あの嶺緒から聞いてると思うけど…、こちら俺の旦那さんの駒門駿さん」

「初めまして、鹿瀬千奈津です。千陽がお世話になっております」

「いえ、駒門駿です。…ご挨拶にもいかずすみません」

隣の千陽はまだどこか緊張している様子で、ポンポンと背中を撫でた。
コクリと頷いた千陽に小さく笑う。
スーツ姿の千陽の兄は、そんな千陽に苦笑した。

「兄さん、忙しいのに」

「いや、嶺緒からお前のことを聞いて、会いに行こうと思っていたんだけど。なかなか休みが取れないからね…、突然になってすまない。嶺緒には伝えたんだが…」

「聞いてないよ。…嶺緒のやつ」

そう言った千陽に思わず笑った。
千陽の携帯がどうなっているか知っている。
充電が切れたまま、リビングに放置されていた。

「千陽、携帯ずっと充電してなかっただろ」

「あっ」

思い出したような千陽に兄が小さく笑う。
千陽の頭を優しく撫でた。

「お前のうっかりさんはまだ治っていないんだな。ご迷惑おかけしてませんか」

「いえ、よくしていただいてますよ。料理も上手くなったし、家事も何でもできる」

「そうですか。…お前も大人になったな。安心したよ」

どこか寂しそうな兄に千陽も同じような顔をした。
兄弟とは仲良くしていたのかと思うと少しだけ安心する。

「…うん。何も相談しなくて、ごめんなさい」

「いいよ。可愛い弟が決めたことだ。俺も千明も嬉しいことだから。家の都合で会いには来れないだろうけれど…、元気でな」

「うん。…寄っていかないの」

「挨拶に来ただけだから。千陽を宜しくお願いします」

頭を下げた千陽の兄に、同じように頭を下げる。
いい兄弟を持ったなと思った。
千陽の頭をもう一度撫でてから、ぺこりと会釈をして帰っていく。
少しだけ余韻に浸りながら玄関に立っていると、千陽が息を吐き出した。

「…緊張していたのか」

「少しだけ。兄さんってαの中でも力が強い方だから…、昔から少しだけ苦手だったんだ」

「そうか」

「それに、兄さんはいつでも母さんの味方だったから。今日も俺を怒りに来たかと思ってた」

千陽は小さな声で話す。
その言葉をゆっくり聴きながら、部屋へ入るように促した。
廊下は寒いから、リビングに行く。
ソファーに腰をかけると続きを話してくれた。

「兄さん、ずっと俺のこと心配してたって。だから、幸せそうにしてて嬉しかったって言ってくれた」

「そうか、良かったな」

「うん…」

こくりと頷いた千陽の頬を撫でた。
なんども頬を撫でると、千陽がそっと唇に口付けてくる。

「ん…、ね、安心したら、なんかエッチしたくなって来た」

「元からその予定だ」

「駿さんのすけべ」

「うるさい」

千陽の憎まれ口を叩く唇を塞いで、ソファーの上に押し倒した。
prev | next

back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -